復活の呪文の切れ端

2008-07-15

盗まれたインターネット

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突然インタネットにつながらなくなった。契約先が夜逃げしたらしい。俺にとってインタネットは生活に欠かせない物であったので少々困っている。話は違うが、そういう意味ではインタネットを便所の落書きとはよく言ったものであるなあと今更ながらに感心する。

さて、そんな状況にありながらも俺は悲観してはいない。なぜならば、街を歩けば、たちまち「インターネット安いよ!お買い得だよ!」などとお声がかかり、折りたたみ机に座らされ黒のボールペンを持たされ、契約書にサインを書かされ晴れてインタネットを購入させられるのはほぼ間違いないであろうからである。

善は急げ、家電量販店に着いた。すぐに「6000万人突破」と書かれた垂れ幕と笑顔のままに大声を張り上げて客引きをしている若者を発見した。まったく仕事熱心ではあるけれども、残念ながら彼の声は大きすぎ、音割れを起こしており何を言っているのかさっぱり分からない。一体何が彼に意地を張らせているのか分からないが、さっさと別の仕事をすればいいのに、と思った。

「すいません、インタネットを買いに来たのですけど」「ガガガガガガ」
「ああ、そうですか、ではこちらにお座り下さい」「ギギギギ」
「突然ね、インタネットがね、つながらなくなったのですよ」「ヴヴヴヴヴ」
「はいはい、最近ね、よく聞くんですよ」「ギュギュギュ」
後ろで叫んでいた若者が酸欠で倒れた。辺りが急に静かになった。
「どうも最近インタネットだめみたいですねえ」
「そのようです。夜逃げ同然で倒産しているらしいですね」
「まあ、ご多分に漏れず僕もそれに引っかかりまして。そういうわけでインタネットが欲しいのですが」
「はいはいはい、では早速契約に入りましょう。」

手早く書類の空欄を埋め手続きを進めた。
あとサイン一つで契約完了というときに、一人の老人が店員に連れてこられ横に座らされた。この老人はインタネットが初めてらしく、店員がインタネットの解説を始めた。店員がインタネットの何をすすめ、老人にはどのような楽しみ方があると紹介するのか興味があったので、俺は何かを考える振りをしながら隣の話しに聞き耳を立てる。

インターネットとはなんじゃろうかの」「インターネットはすごいんですよおじいちゃん」「なにがすごいんじゃろうか」「なーんでもできちゃうんですよー」「なんでも…できるのかね」「夢のような世界なのですよ。。」「あんた老人を馬鹿にしちゃおらんかね」後ろから男がでてきた。「そんなことないですよ。一度体験してみたらいいですよー」「経験ですよー」また一人増えた。「そうですよチャレンジですよ」「ちょっと奥で体験してみましょう」

老人を囲んだ店員達の態度に不信感を抱いた俺は、組んでいた足をほどき、身を乗り出して喚いた。
「すいません!どうしてもサインする前に確認したいことがあるのですが」「なんでございますでしょうか」「ちょっとお試しとしてここでこのインタネットを見せてもらえませんか?」「ああいいですよ」てっきり断られるかと思っていたが、すんなりOKが出た。奥に連れて行かれ、インタネットが始まった。
荘厳な音楽と共に浮かび上がる文字。
「明るいインターネット」「正しく使おうインターネット」「すべでは始祖様のために」




悪い予感がしないわけではなかった。前触れ無くインタネットベンダーがつぶれてしまうこと。市場はほぼ飽和しているはずなのに街でインタネットが売られ続けていること。必要ない人間にもインタネット。安い値段で売られているのにも関わらず素晴らしい特典が山ほど付いてくる。そりゃあ裏があるはずだ。思えば、あの若者の笑顔もコントロールされていたのかもしれない。

ああ、早く俺のインタネットを取り戻さなければ。