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“ぼ”うそうする“そ”うぞう このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-03-23

歳月

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明るいリビング、コタツがひとつ。

窓側で新聞を読む夫。

壁側で手紙を書く妻。

会話はない。


夫がお気に入りの俳句コーナーに目を留めた。目を細めてじっくり読みながら、2度3度小さくうなづく。そしておもむろに紙面から顔を上げる。

妻はペンを置き、傍らにある文具箱を開けた。使い込まれた小さなメモ帳と年季が入った万年筆を取り出し、コタツの真ん中に置く。

夫はメモ帳万年筆を手にとり、気に入った俳句を書き留める。


妻は手紙を書き終え、手帳を見ながら封筒に住所を書き入れる。新しいマンションに住む若い娘夫婦、カタカナだらけの長い住所。案の定書き間違えて、小さくため息をつく。

「…ふぅ。」

夫は新聞に顔を向けたまま左手だけを伸ばし、窓側にあったゴミ箱をスッと壁側に押しやる。

妻は書き損じの封筒を折り曲げ、ゴミ箱にコトンと落とす。


明るいリビング、コタツがひとつ。

窓側で新聞を読む夫。

壁側で手紙を書く妻。

会話はいらない。

2008-03-17

好きという言葉

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雨の降り始めの匂いがちょっと好き、と微笑むあなたが好き。

ベーコンエッグの端っこのカリカリが好き、とムキになるあなたが好き。

太陽が沈む直前の空のグラデーションが好き、と見上げるあなたが好き。

まん丸の毛玉のようになって眠る子猫が好き、と溶ろけるあなたが好き。

私が奏でるフルートの音色が好き、と目を閉じるあなたが好き。


華奢な指を鍵盤に躍らせるあの子が好き、と照れるあなたが好き。


<Inspired by LOVE HACKS ラブハック - 今すぐ使える好きという言葉

BossoBosso2008/03/17 16:35最後の一行で落とすパターンが連続するなと思ったけどまあいいよね。

2008-03-02

今宵、どこかのバーで。

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「……だからさ、何でもかんでも横文字で言うのはどうかと思うんだよね、僕は。」

「ふぅん、それが日本語の乱れを引き起こしている、と。」

「そう。大体、大抵のものは日本語でちゃんと表現できるんだから。」

「あらそう? じゃ、これは?『カクテル』。」

「えと、『合わせ酒』。」

「なんかいきなりオヤジくさいわね。」

「いやいや、職人技が必要そうなあたり、的確な表現だと思うね。」

「はいはい。じゃ、『レモン』は?」

「『檸檬』は『檸檬』だよ。」

「英語じゃない!」

「違う、漢字で書けるから日本語だ。」

「へぇ。じゃ、『ライム』は?」

「もちろん、『緑色檸檬』。」

「強引ねぇ!」

「そんなことないってば。」

「それじゃ、『マスター』は? ……あ、スプモーニください。」

「『ご主人』。……僕は『しょっぱい犬』で。」

「ちょっと!!」

(かしこまりました。)

「マスターも普通に注文受けないでよ! ていうかあなた、日本語にしやすいカクテル選んだでしょ。」

「わかった?」

「だって、付き合いだしてから一回もソルティドックなんて呑んだことないじゃない。」

「そうだっけ?」

「そうよ。この3年間、一度も。」

「もう3年か……早いもんだね。」

「ほんと。でも、あなたといると飽きないわ。」

「それは僕もだけど。」

「ふふ、ありがと。じゃあさ、『合コン』は?」

「『合同懇親会』。」

「うわ、一気にマジメっぽい。でも、合コンで出会いました、っていうより聞こえがいいわね。」

「そうそう、君のご両親にも安心して言える。」

「調子がいいんだから。じゃあそうね、『プロポーズ』は?」

「……『結婚しよう』。」

「それはプロポーズの言葉じゃない! 普通は『求婚』でしょう?」

「いや、そうだけど、だから。」


彼の手が私の手に重なる。真っ直ぐに覗き込んでくる瞳。マスターが静かに一歩下がって、視界の端から消えた。


「結婚、しよう。」