2008-03-23
歳月
日常 |
明るいリビング、コタツがひとつ。
窓側で新聞を読む夫。
壁側で手紙を書く妻。
会話はない。
夫がお気に入りの俳句コーナーに目を留めた。目を細めてじっくり読みながら、2度3度小さくうなづく。そしておもむろに紙面から顔を上げる。
妻はペンを置き、傍らにある文具箱を開けた。使い込まれた小さなメモ帳と年季が入った万年筆を取り出し、コタツの真ん中に置く。
妻は手紙を書き終え、手帳を見ながら封筒に住所を書き入れる。新しいマンションに住む若い娘夫婦、カタカナだらけの長い住所。案の定書き間違えて、小さくため息をつく。
「…ふぅ。」
夫は新聞に顔を向けたまま左手だけを伸ばし、窓側にあったゴミ箱をスッと壁側に押しやる。
妻は書き損じの封筒を折り曲げ、ゴミ箱にコトンと落とす。
明るいリビング、コタツがひとつ。
窓側で新聞を読む夫。
壁側で手紙を書く妻。
会話はいらない。
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