2008-06-21
君に幸せを
ねぇ、知ってる? この世の中にある“幸せ”の総量って決まってるんだよ。誰かが幸せになるためにはその分、他の誰かが不幸にならなきゃいけないのさ。
だって考えてみてよ。たとえばある人が大金を手に入れて幸せになったとするでしょう。その影には、十分なお金が得られない不幸を押し付けられている人がいるはず。お金なんて無限にあるわけじゃないんだから。
恋愛だってそう。愛する人のそばにいる幸せを獲得できた人がいたら、そのせいで失恋という不幸を味わう人が必ず出てくる。そして、不幸なライバルが多ければ多いほど、恋人が得られる幸せの価値はどんどんと高くなっていく!
実のところ、僕に言い寄ってくる女は後を絶たない。だけどキッパリと拒絶しているよ。君を幸せにしたいから。彼女らに絶望を与えれば与えるほど、君への僕の愛が尊いものになっていくのをひしひしと感じるんだ。
心を病んだ元恋人が助けを求めてきた時だって、僕は君の存在を理由に一切の接触を拒絶した。彼女は泣いてすがってきたけれど、躊躇なくその手を振り払ってやった。それぐらい君が大切なんだ。
……ああ、心配しないで。本当にそれきり、彼女とは連絡をとっていないよ。とりようがないのさ。そのあと彼女は、自ら命を絶ってしまったんだから。
え? それを知ったとき? 恐ろしかった。恐ろしかったよ。そして同時に安堵した。だって彼女は、人生を終わらせたくなるほどの不幸を背負っていたということじゃないか。もし僕が少しでも彼女に手を差し伸べていたら。少しでも幸せを与えてしまっていたら。そのおぞましい不幸は君に! そう、君に! 襲い掛かっていたかもしれないんだ! そんなことはこの僕が許さない! 僕は! 君に幸せを! この世の全ての幸せを! 他の誰が! 不幸になろうとも! 僕は! 君が! 君さえ幸せなら……!!!!!!!!
だから、お願いだよ。君は、君だけは、僕の事を見捨てないでおくれ。
もし君が離れていってしまったら、弱虫な僕は、きっと他の誰かを愛するようになってしまう。
そうしたら、その新しい恋人を幸せにするために。
君に与えてきたたくさんの幸せを、奪い取らなければいけないのだから。