2007-08-20
「『断片部』の話をしようか」
「だんぺんぶ?」
「そう、断片部だ。寒風吹き荒ぶはてなグループの荒野に現れた一筋の光明、それが断片部。聞きたいかい?」
「うん、聞かせてっ!」
「始まりはいつも一人の人物。はてなグループはいつだってそうだ、断片部も例外じゃない。その一人の人物は断片部、グループIDはfragments、そういう名のはてなグループを立ち上げたのさ」
「だんぺんぶ…… ふらぐめんつ……」
「そう、まさにフラグメントを集める場所だったのさ。思考の断片をね。で、後に活発になるはてなグループはえてしてそういうもんなんだが、周りから見ると立ち上げ人が何をやりたいのかいまいちわからなかったりするんだな、それでも彼は断片部の活動を粛々と行った」
「なんか、さみしいね」
「そうだな、さみしいな。でもその段階が人を共鳴させるのさ。始めは分からなかった周りの連中のうち、『こういうことじゃね?』って思ってしまうやつが現れるわけだ。それが立ち上げ人の意思と完全に一致してるかはあまり関係ない。でも共鳴して心に響いた、そしてグループに参加するという行動を起こさせたところにこそ意味があるんだな」
「ひびく……」
「そしてメンバーが増えれば、他の連中に響く可能性も高くなるんだ。スピーカー1つよりも2つの方が迫力あるだろ?」
「今の流行りは5.1chだけどね」
「はは、そうだな、多い方が伝わるんだ。でな、そういう初期のメンバーってのは他の人に響く前に響いたわけだから感度が高いというか、位相が近かったわけだ。各人ちょっとずつずれてはいたんだろうけどな」
「ずれててもいいの?」
「ああ、大丈夫だ、むしろ大いに結構。そんなメンバーがそれぞれ断片部にふさわしいと思う破片を集めたり、作り出したりするようになった。するってえとな、うまい具合に、こう、バラけるんだよな、種類が。」
「断片の?」
「その通り。大小軽重長短濃薄白黒ってな感じでいろんな断片が集まった。でもなそりゃあくまで断片だ。見る人によって解釈が変わる。『こりゃでっけぇ角だなあ』って言うやつがありゃ『いやいやそりゃ肋骨だ』って言うやつもいる。面白いだろ」
「うん、僕もやってみたい、難しそうだけど」
「皆がそうおもってたよ。面白い破片が日々集まるわけだ。そしてそれに比例して外から響いて入ってくるやつも増える。断片部を覆う外幕は日に日に大きくなっていった」
「うーんなんかわけが分からなくなってきたよ」
「そうだろうさ。みんなそうだった。断片部はもはやfragmentsじゃなくて『ダンペンブ』っていうモンスターみたいな扱いをされるようになったのさ。だれがどんな断片を提出しようが、外のやつは吟味しようとしねえ。『ああ、ダンペンブらしいね』『さすがはダンペンブだな』『またダンペンブか』ってな具合よ。しまいにゃ断片でも何でもねえ物を見つけて『こりゃダンペンブ送りだな』なんて言うやつすらでる始末。でっかく膨らんだ外幕だけしか見れなくなっちまってたのさ、皆がな」
「中のひとたちも?」
「ある程度はそうだったんじゃねえかな。『ダンペンブこそ断片部』って思って入った奴もいるだろうしな。それを否定することはできねえけどな。各自が思う断片を生み出し集めるのが断片部なんだから、それも違うとはいえないのさ」
「じゃあ大きくなるばっかりだね」
「ううん、そうもいかねえんだな、これが。もはやダンペンブと化した断片部を断片部としてふさわしくないと思った奴がいたんだ。そいつらは大概が古めのメンバーで、どでかい断片を生み出す奴らだった。そいつらが一人また一人と断片を集めなくなった。別の場所に移った奴もいれば、中にいるまま沈黙する奴もいる。なんにしろ断片の総重量は増えなくなった。むしろ減少したと見る奴の方が多かっただろうな」
「どうもならないさ、断片部は在り続けた。消えたのはダンペンブっていうモンスターさ。断片部の骨組みを作り上げたがゆえにダンペンブというモンスターを召喚しちまった主要メンバー達なんだが、そいつ等がいなくなることで断片部は本来の姿を取り戻したのさ」
「切ない話だね」
「ああ、そうさ。でも、それでも断片部は強い。一時は立ち上げ人すら活動を停止していたのに、その仕組みは止まることなく動いてた。俺ははてなグループというシステムの一つの到達点だと思っているよ。そしてそのシステムは他のはてなグループにも受け継がれた。断片の種が芽吹いたとでもいおうか」
「どういうこと?」
「つまりな、断片部のシステム的に優れていた点、立ち上げ人が一見理解しにくい概念を立てて、それに響いた者たちが集まってそれぞれの解釈でその理念を推し進めるっていう仕組みのことだけどな、それを意識的にか無意識的にか組み立てたグループがあるんだよ。そういうグループは、強い。例えば理論とか、偽装とか、ファ文とかな」
「でも、モンスター化しちゃうんじゃないの」
「ところがそうはならなかったんだな。断片部的な仕組みを持ったグループがいくつかできて、初期断片部の勢いを持つグループが複数ある状況だ。しかも断片部そのものもまだ生きてはいたからな。ダンペンブの頃とは景色がだいぶ変わったんだよ。はてなグループって荒野もな」
「なんかいい感じだね」
「ふふん、でもつまんねえだろ?」
「んー、まあね」
「同じことを思った男が一人いた。そいつはこう言った『断片部は馬鹿と屑の夢工場に成り果てた。手を出す価値すら無くなったね』」
「なにそれ?! かっこいい! そんでどうなったの?」
「ふふふ、『それはまた別の物語』ってやつだ、さあ寝ろ」
「えー……」