とある理系男子の書斎には、どうしても小説が少ない。っていうか無い。

        いろいろやっていければと思います.
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2011-08-21

その解説の解説 00:32 その解説の解説 - とある理系男子の書斎には、どうしても小説が少ない。っていうか無い。 を含むブックマーク はてなブックマーク - その解説の解説 - とある理系男子の書斎には、どうしても小説が少ない。っていうか無い。 その解説の解説 - とある理系男子の書斎には、どうしても小説が少ない。っていうか無い。 のブックマークコメント

 「その解説の解説 解説」を最初に読んで感じたのは、「その解説」の言わんとすることがわからない、という不安感であった。「その解説」は、巧みなレトリックに富んでいるわけでもなければ、構成の妙で読ませる文章でもない。深く染み入る叙情の乱舞というわけでもなければ、荘厳にそびえる叙述の壁というわけでもない。どこか、あまり人が読むことを考えていない、または、是が非でも人を振り向かせなければならないという欲が削ぎ落とされた文章である。それでも、むしろ、それがゆえに、「その解説」には、どれだけ悪く見積もっても一人の、そして、まず間違いなく、多数の文芸が好きな学生を惹きつけるものがある。
 あるいはこの私が感じている不安感は、「その解説」を書いた者の産みの苦しみが伝わってきているのかもしれない。どのような文章であれども、よっぽど適当に書き散らしたものでない限り、それは産みの苦しみとともにある。小説家が妻に言った、君はただ腹の中にあるものを産むだけだからいいが、私のほうがよっぽど大変だ、何も無いところから産むのだから。とは質の悪いジョークであるが、何も無いところがスタートであれば、最悪の場合何も産まなくてもそんなには困らない。無くてもともと、と言われるものである。その点、何かが既にある、そしてそれは必ず産まなければならない、となれば、これは行動が著しく制限されるぶん大変である。排泄の苦しみに近いかもしれない。「その解説」の書き手にもまた文章を産み、書かなければならない理由があり、そして、厳しい制約の中、産んだ。私はそのことに、最大の敬意を表したい。
 「その解説の解説 解説」は、「その解説の解説」を読み進めていく解説者の心情の変化、ならびに理解の変化をたどる形で書かれている。この解説者は最初、「その解説の解説」という題の意味があまりわからなかったようだ。しかし、解説者は、他の人の助けも借りながら、「その解説」、とは、自らが今から産み、書くことになる解説の事を指していることに気付く。その気付くまでの戸惑いや驚きを丁寧に掬い取った細かい心情描写は、人間が文章を読んで理解することが、とても純粋な喜び、また喜びの根源であることを、非常にみずみずしく、学生らしく書き表している。よって「その解説」は、成長小説ならぬ成長解説の側面も持っている。解説の対象としている解説が難解であるため、「その解説」もまた難解であり、読みやすさでいえば、今回「その解説」が収録されている冊子中の他の解説のほうが読みやすいのも事実である。そのため、「その解説」は読む人を選んでしまうかもしれない。しかし、この解説者が、解説対象に真っ向からぶつかり合い、解説を紡ぎ出そうとしている姿勢は、「その解説」を読ませるに十分な力を持っている。特に、「その解説」が「その解説の解説」によって解説されるのに対して「その解説の解説 解説」と解説するされるの関係のリセットを図るも、「その解説の解説」は「その「リセットのための「その解説の解説」の」解説」すらも「その解説」としてくくり、「その解説」は結局また「その解説の解説」に解説されることに気付くくだりは、非常に心地よい。容易に移入できればできるほどよい、容易に想像できればできるほどよい、という安易な大衆小説の消費に対する揺さぶりを含む、名解説である。

"この解説者は「その解説の解説」の前述の文に強く感銘を受けたようだ。"
この解説者は「その解説の解説」の前述の文に強く感銘を受けたようだ。この文自体は、なんら特別なレトリックを施されていない、ただの叙述文である。にも関わらず、この文に強く感銘を受けたならば、「その解説」は「その解説の解説 解説」にふさわしく、「その解説の解説」が「その解説」に解説された甲斐があるというものである。こういった何気ない文に、心動かされることは、様々な小説を濫読している本好きには、逆に難しい芸当であり、その点でも、学生らしさが現れている。また、そういった感動とは距離を置いている者の文章(これらの文章はとかく複雑な概念を並べ立て、過去の作品や作家の名前を出して慰みにしようとする、そんな文章)を「その解説」が収録されている冊子に並置することで、先に挙げた感銘をいっそう強調するという手法には、その手があったか、と感心する次第である。
また、この解説者は
 ""この解説者は「その解説の解説」の前述の文に強く感銘を受けたようだ。"
この解説者は「その解説の解説」の前述の文に強く感銘を受けたようだ。"
という部分について、多くを述べてはいないが、同じく感銘を受けたことが文章からは読み取れる。厳密には、私には読み取れたが、実際そう思っているかどうかは、その解説からは少々わかりづらい。そのわかりづらさも、逆にドライブ感になってはいる。


 集合Aと集合Bがあったとき、A⊂BかつB⊂Aは、通常は成り立たない。実数xと実数yについても同様に、x < yとy < xは同時には成り立たない。順序関係であり、かつ非反射的である。解説と解説対象についてもまた同様である。かつて、同様であった。今となっては、その非反射性は言えない。
 ∵あなたが今読んでいる文章 Q.E.D

 ここまで可能性としてあえて取り上げなかったが、この「その解説の解説」は「その解説」の存在を暗黙のうちに仮定している。言い換えれば、存在しない可能性を暗黙のうちに否定している。仮に、その可能性が真となれば、ここまで積み上げてきた全ての論説は無に帰する。同時に、この論説に対する解釈も、情報量を何ら持たない乱数と変わらなくなり、解釈行為によって定義された解釈者自身も、無に帰する。無に帰することが嫌ならば、この解説は解説として存在して、その解説もその解説として存在させることが、必要条件であり十分条件でもある。これは、容易に満たすことができる。満たす方法については、読者への宿題とする。

 存在しないものを持ち込むと、時にとんでもない結論が出ることは、数学の世界ではよくある話であり、数学以外の世界でもよくある話である。例えば、最大の自然数Nというものを仮定する。このとき、N+1も自然数だが、Nのほうが、なにせ最大なのだから任意の自然数より大きい。よってN+1 < Nが成り立つ。両辺からNを引けば1は0より小さい(1 < 0)ことになる。また、N+1の代わりにNの自乗を考えれば、Nの自乗 < Nから、N < 1となり、N < 1 < 0が言える。同時に、グラフを書けば、己より己の自乗の方が小さいNは 0 < N < 1に限られるので、0 < N < 1 < 0が言える。最大の自然数としてNを定めたはずが、今や無限に小さくなるループの中に、取り込まれている。存在しないものを存在すると仮定するとは、こういうことである。一方、そういった非存在を熱狂的に、あるいは盲目的に、崇拝し、狂信する者も多く、殉教という形で命を落とすことも、よくある話である。

 集合の包含の話に戻る。包含関係といえば、二つ円を書いて交わりを見るベン図が有名なところであるが、本来包含関係とは二つの円が交わらずに一つが完全にもうひとつの中にある状態、つまり◎なのであって、ベン図の範囲外である。また、平面上に円がひとつあったとき、その円は必ず領域を内と外に分ける、というのは、数学の世界では割と自明ではなく、証明を必要とし、証明可能な定理である。詳しくは、ジョルダンの閉曲線定理を参照してほしい。また、もし、あなたが、三次元空間上の球体を想像して包含関係を考えているなら、私はそれをおすすめしない。もとより、三次元空間上の球は、自己交差(自分が自分と交わること。例えば、ゴムのような柔軟性を持ったシャボン玉のように薄い膜を想像してほしい。自己交差が可能であれば、例えばこの球の腹を思い切り殴ると、この球の背中から、この球の腹の裏面が出てくる。そういった交差)を許せば、滑らかな変形によって簡単に裏返せることが、スメイルによって理論的に証明され、その後具体的な変換が多数の数学者によって示されている。現在、こういった写像ではモランというやはり盲目的な、失礼、盲目の、数学者の名前が付けられているものが有名である。内と外は、容易にひっくり返る。もとより、内と外というのは恣意的な解釈でしかなく、例えば、檻に一匹の罪人を入れたとする。我々は罪人が檻の中に入っていると思うが、罪人から見れば、世界全てが檻の内にあり、自分だけ、その外にいると、考えられなくはない。領域を囲うとは、そういうことである。この檻と罪人を箱と猫に置き換え、あまつさえ毒ガス発生装置などという物騒なものまで持ち込むのは、私の仕事ではない。

 私の仕事は、あくまでも、「その解説」を解説し、「その解説」の面白さを最大限に引き出し、お膳立てを行う、いわば前座である(掲載順から考えても、私はやはり前座である)。その仕事も、もう終わろうとしている。それでは、「その解説」、どうぞお楽しみください。お後がよろしいようで。

このその解説の解説の付加情報

(この作品は、第三回筑波学生文芸賞ベリーショート部門に2010年6月29日応募、第一選考で落選となったものです。)

http://tbaward.com/keisai.html

JasmineJasmine2012/05/23 08:04I was struck by the honesty of your psontig

rlccwhrijlrlccwhrijl2012/05/26 20:54m5ymyA , [url=http://mgzesycehkfy.com/]mgzesycehkfy[/url], [link=http://voonbufzsegi.com/]voonbufzsegi[/link], http://lxzycbehmjjr.com/

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