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2007-11-13

ぼくは工場夫 改訂版

| 22:39 | ぼくは工場夫 改訂版 - 森のキツネは嘘を吐く を含むブックマーク はてなブックマーク - ぼくは工場夫 改訂版 - 森のキツネは嘘を吐く ぼくは工場夫 改訂版 - 森のキツネは嘘を吐く のブックマークコメント

【2ch】ニュー速クオリティ:もう二度とやりたくないバイトは?

まずはリンク先を一通り見てきて欲しい。引越し、工場、エトセトラ。大変そうなバイトというのはたくさんある。このスレの主旨としては、これらのバイトは回避推奨ということなんだけれど、俺はまったく逆のことを考えてしまっている。

俺は自分のしてきたバイトのラインナップを見るにつけ、その平凡極まりなさに嫌気が差してしかたがない。ファストフード店の店員、コンビニの店員、塾の講師、お菓子屋の店員。学生時代はちゃんとしたバイトや給料の良いバイトをしたくてやっていたのだが、今考えるとラインナップがまともすぎて面白味のない人生を送ってしまったような気がしてくる。まぁ、ちゃんとしたバイトの定義ってなんだ?ってなもんだけど、例えば、俺が塾の講師のバイトについて振り返ったとき、それは工場のアルバイトをしていた奴と比べて大変に没個性で、第三者が両者を比較したときには工場のバイトの話のほうが面白いと感じるに違いない。少なくとも俺のしてきたバイトでは人に話して聞かせられるようなおもしろエピソードが発生したことがないので、俺の話よりはやっぱりおもしろいはずなのだ、工場の話のほうが。

だから俺は工場でベルトコンベアの上を流れるラインを眺めたい。ゴウンゴウンとやかましい機械音を聞きながらコーラのビンが倒れているのを直したい。エクレアの方向を正したい。シュウマイにグリーンピースを乗せたい。果てしない流れを流れゆくラインを眺め、ランプが点灯したらボタンを押すという仕事をしたい。

こんなことを書いていると本当に工場でバイトしている人たちに「馬鹿にしているのか」と叱られるかもしれない。くだらない創作なんてしてるからくだらない考えが浮かぶんだ、ちゃんと現実を見ろよと一蹴されるかもしれない。これは、ぬるま湯に肩までつかった俺の差別意識が生み出した妄言なのか?

しかし白状すれば、リンク先を読んでからの俺は工場でラインを眺めるというバイトを特別視し、そこに甘美なものを感じている。俺もそちら側(バイト側のことだ)の人間になって工場を流れるベルトコンベアを眺めてみたい。流れ作業の手触りを感じたい。工場のにおいを嗅いで、工業用機械の音を聴きたい。

工場に降り立って流れゆくラインを見つめるとき、果たしてそこにはどんな風景が広がっているのだろう?俺は夢想する。

薄暗い工場の中で俺は、ただただ流れるベルトコンベアを見つめる。そこで運ばれていくものは俺の平凡なバイト遍歴たちだ。ファストフードのアルバイトはゲイの店長と暴君みたいなオーナーの思い出とともに流れていく。昼寝ばっかりしている店長が仕切っていたコンビニのバイトはなんの未練もなく流れていく。菓子屋のバイトも塾講師のバイトもラインの上を無表情に等間隔に流れていく。

考えるに、俺は何も大変なバイトをしたいというわけではないのだろう。俺は凡庸だと感じている自身の過去を振り返り、言ってみれば、そこに何か新たな息吹を吹き込みたいのだ。エクレアの方向を正して、倒れたコーラのビンを立て直すように、過去の平凡なバイトたちに正しい着地点と特別な意味を与えたいのだ。これはただそれだけのことに過ぎない。

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また1枚、ラインを流れるテキストデータを見つけたぼくは、いつものようにそれをつかみ取って目を通していたのだが、読んで後悔した。工場でバイトをしたいという、ごくありふれた自分語りのエントリでしかない。そしてぼくは、それが流れるべき正しいラインを探す。すばやく判断し、正しく見分ける。ライン作業者における必須スキルだ。この工場で働き始めてから数ヶ月たったが、この特殊な技能がぼくの実生活で役に立ったことはないように思う。

ぼくのことを少し話そう。

ぼくは工場でアルバイトをしている。仕事の主な内容は、流れてくるテキストデータを分別して、それぞれを正しいラインの流れに乗せて見届けてやることだ。

ラインは工場の中を縦横無尽に走り、100Mbps以上の速度で流れて、相当量のテキストデータをこの工場の終着点まで運ぶ。テキストたちが流れる速度はあまりにも早すぎて目にも止まらないので、この仕事を始めた当初は仕分けミスをたくさんした。いろんなラインがあるのだ。人気・注目ニュース、注目のエントリー、注目の動画、注目の商品と呼ばれるラインたち。そこに正しいテキストデータを仕分けしなければならない。そして、それらのラインは細い帯域しかもっていないし、流れるテキストも少ない。いちばん太いのは、どこにも属さないラインで、ここを流れるテキストが世の中でいちばん多い。そこを流れるのは、誰にも顧みられることのないエントリたち。

どこにも属さないラインの終着点は工場の外にあって、そこには山羊という男がいる。彼はそれが自分のライフワークだと信じているような情熱で、そのラインを流れてくるテキストデータを黙々とアーカイヴしていく。山羊は海外でも同じような仕事に就いていたことがあり、その経験を買われて今のポジションを獲得した。そんな彼でも日本での仕事は海外とは比べ物にならないくらい大変だと漏らしていた。

その大変さについて、「それは二つの理由から成り立っている」と彼はあごひげをなでながら神経質そうな声でぼくに語ってくれた。彼の声があまりにもピリピリしていたので、そこには四足歩行動物なりの哲学や深い洞察があるに違いないとぼくは考えたものだったが、返ってきた答えは実にシンプルだった。ひとつめの理由は、海外に比べて国内は流れてくるテキストデータが単純に多いということだった。そして残りの理由は、ダブルバイトで書かれたテキストは、山羊の胃にとってすごくもたれるということだった。この2つの理由から、山羊はどうやら唯物論者だったらしいとぼくは判断した。

この国ではインターネットの発展によって誰もが簡単に個人の意見を発信できるようになったが、それは結果として多くの誰にも顧みられないエントリたちを生むことにもなった。あるテキストが幸運にも誰かの目に留まればいいけれど、ラインは高速で流れていくから人目に付かないまま山羊の胃に収まって二度と省みられないことのほうが多い。

ぼくの働いている工場ははてなブックマークという。この世界には他にもbuzzurlやlivedoorクリップやdel.icio.usと呼ばれる工場がある。ぼくの友人のうちの何人かは、他の工場で働いている。人によっては複数の工場で働いているというのだから驚きだ。思うに、その彼はとても仕事好きなのだろう。

ぼくはさっきから手にとっていたままの、工場でバイトをしたいという男のテキストをそれが流れるべきラインに乗せる。これで山羊の胃袋まで一直線に流れ込んでいく。ラインを流れるテキストデータの9割以上は、こんなふうにたいして顧みられることもなく山羊の胃袋の中に流れこんでインターネットの底に埋もれていく。その光景は、まるで雪が降り積もる様子にすごく似ていて幻想的だと聞いたことがあるが、残念なことにぼくはまだそれを見たことがない。(山羊の胃の中の話だ。それを実行するのがどれだけ難しいことか想像してもらえればと思う)

残りの1割未満の注目されるエントリを生み出しているのは一部の人たちが書くものがほとんどだ。そして、だいたいどこの工場でも同じ人物による同じエントリがピックアップされる傾向がある。つまりはてなブックマークで注目されていればlivedoorクリップでも注目されていて、逆も同じというふうに。そして、ある工場で廃棄処分されたエントリならほぼ間違いなくほかの工場でも廃棄されるということも厳然とした事実だ。これは他の工場で働く友人と話し合った結果として確信したことでもあるし、工場で働いている人間ならすぐに気付くことでもある。この仕事をすれば、嫌でもこの現実を目の当たりにすることになる。誰にも顧みられないエントリというのは、ことのほか多い。

ただ、エントリが多くの人に注目されればされるほど良いかというと、必ずしもそうとは限らないのかもしれない。アウトスタンディングであることはそれだけ誹謗の対象にもなりやすい。それを考えると、山羊の胃袋の中で雪になるテキストのほうがときとして幸せなのかもしれないと思う。これは工場で働くぼくの勝手な意見だけれど。

一般に工場での仕事はソーシャルブックマーキングと呼ばれている。今日もぼくは自分好みのエントリを取捨選択してホットエントリのラインに乗せ、そうじゃないものは山羊に向かうラインに乗せていく。

ブロガーにとって、自分が書いたエントリが叩かれるシーンを見るのよりも世界に無視されるシーンを見ることのほうがつらいだろう。だから、さっきのエントリを書いた彼。きみは工場で働きたいと思うなんてやめておいたほうがいい。たとえ雪のように美しく降り積もるテキストデータたちが幸せだったとしても、テキストを生み出す人たちは山羊の胃袋に流れ込むエントリを見ても幸せになれるとは限らないのだから。

ぼくが手を離すと工場でバイトをしたいという男のエントリはあっという間に見えなくなった。今ごろあのエントリも、山羊の胃袋の中で雪になる幸せをかみ締めているのかもしれない。いや、それはぼくの幻想に過ぎないのか。その真偽は分からないが、いずれにせよくだらない感傷だ。そしてそんなものに浸っている時間はぼくにはない。仕事を再開しよう。

ぼくは慣れた手つきでラインを流れる別のエントリに取りかかる。次のエントリは、雪のように消えてしまわないことを願いながら。

RoseannaRoseanna2012/01/27 00:42Hats off to whoever wrote this up and psoted it.

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