2007-01-10
■ [疑小説][先輩とあたしシリーズ] 「隠れたさんについてのもろもろろ」 
先輩は今日も唐突だった。
「『隠れた名作』っていう響きって腹がたたない? 俺の怒りが有頂天にならない? おいぃ? とか思わない?」
私が部室に入るなり、窓際で窓際族のように愁いを帯びた表情をしていた先輩は途端にいつもの顔になり、そう切り出してきた。
「それは…」
「ウェイト!」
あたしが返答しようとすると、あたしの口を両手でさえぎって、先輩はさらに語りだした。
「いい? 世人はよくよく『隠れた名作』というけれどもさ、そもそも作品さん達って隠れてるわけ? どっかに潜んでたりするわけ? 自分の意識を持って『ちょっと隠れますよ』とかしてるわけ? んなわけねぇだろ? んなわけねぇだろ? んなわけねぇだろっ!?」
「はぁ」
あたしが気の無い返事を返すと、先輩はさも心象侵害と言わんばかりに顔をむくれっつらにして、さらに語りだした。
「いい? 作品さん達は隠れてなんかいないの! いつでもそこにいるの! ちゃんといるのよ! いつでもね! いい? つまりそこにいるのに『隠れた』なんて言う時は、それは己の目の悪さアンテナの低さ探究心の少なさを恥じ入る場面なの場面! なのに上から見下ろすようなあの態度っ!」
先輩は謎のヒートアップをしだした。すると、まるで自分の言葉を追い回すように、部室の中を練り歩き始める。机やらに足や体が当たるけれど、まるで気にしない。先輩の悪い癖だ。
「せ、先輩落ち着いて…」
「いらつくわ……『隠れた』ってのは…。ほんといらつく。いい? そういう言葉はね、私の世界には無いのよ、そんな野蛮で羞恥心の無い野蛮な言葉は! そんな言葉は使う必要がすらないわ。 なぜなら、私は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には! その事について調べに調べて! もうすでに知らない状況が終わってるからっ! だから使った事ないわっ!
よしんば『知らなかった』なら、使ってもいいけどさっ! なんで世人は『隠れた』って言って恥ずかしくないのよぉおおぉーーっ! ぜんぜん納得いかない……。
それに付属する、『名作』って言葉! なんとまぁ、聞こえのいい言葉かしらね! そして全く持って度し難いわねっ! 君にもちょっと覚えが無いかしら? 『隠れた名作』って言う奴の言うセリフよ?
『へー、結構面白いじゃん』?
『なになにに匹敵するね』?
そこにあるのは決定的な、『ボクはいいもの掘り当てた』的優越感! そんな言葉は、自分の方が格上である確信が、選ばれた者の力と叡智があるという確信がなければ……、そう、出てこない! 『オマエらの美点は、私を楽しませる事デース!!』ってはっきり言えばいいのよっ! 取り澄ました理性なんかぶっちゃけて!
それを、オブラートに包んで包んで包んで包んでなおかつ『隠れた名作』認定?
なめてんのかァーーーッ!! 作品を! 恥を知れ! 恥を! チクショオーーームカつく! コケにしやがって! ボケがっ!」
と、先輩はそこで用具保管庫にぶつかるって止まり、かと思うとおもむろにその扉を開き始めた。そしてなにかを取り出すと、やはりおもむろに言った。にこやかに。
「では実験を始めます。今日の実験は、『隠れた名作』という言葉に反応すると、その発言のあった世界が破棄且つ刷新されるというものです。で、君はいろんな世界を渡り歩いて『隠れた名作』という言葉を残していくものを」
「やめて先輩! それ以上いけない!」
説得に丸一日かかったのは、また別の話。
extramegane2007/01/12 17:13どんなブックマークタグつくか楽しみ
hanhans2007/01/12 19:44いまどき、これくらいじゃあお気に入りで処理されますよ。ウェーハッハッハッハ!!
hanhans2007/01/12 19:45というか、このデザインだとコメント一覧でないのかよ!