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小説蛾螺倶璃砦

2007-10-02

[] 食人賞応募作「まな板の上の」  食人賞応募作「まな板の上の」 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

「お待たせいたしました。お客様シェフの気まぐれポトフでございます」

 ギャルソンが、私の前に皿を置く。

 目の前に出された深皿の中には、オーソドックスなポトフ。料理時間を軽く逆算すれば、誰だか位簡単にわかる。おそらく、オードブルを食べていた時に連れ出された男だろう。

 まず、スープ。肉や野菜うまみが絶妙に混ざり合った、なかなかの美味だ。

 次に野菜。当然、きちんと火が通っており、スープを潤沢に吸い込んだ、これもまた良い味だ。

 最後に肉を一かけ掬い取り、一口。

 肉に特有の臭みはまったくなく、上等な処理がなされているのが良くわかる。文句なし。

 食べきり、一言。

「美味い」

ありがとうございます」

「君、次を持ってきてくれたまえ」

 そう言うと、ギャルソンは表面上申し訳なさそうに、笑った。

「申し訳ありません、お客様。そろそろお時間になりましたので……」

「そうか……」

 今更あがく事もない。妻子に手を出させないという条件を飲んだ結果、いま私は此処にいるのだから。

「こちらです」

 私は、ギャルソンに導かれるまま厨房へと歩いていった。

 

 今日もまたギャルソンは、次の料理を運ぶ。

「お待たせいたしました、お客様シェフの気まぐれポトフでございます。熱いのでお子様が口を火傷しないように、お気をつけください」