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小説蛾螺倶璃砦

2007-10-04

[] 食人賞非応募作「人喰彼女、爪喰らう」  食人賞非応募作「人喰彼女、爪喰らう」 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

 俺の彼女は人を喰う。俺でも喰う。

 今日も耳をかじられた。

 正確には、甘噛みされた。

「はむはむ」

「おいおい。喰うんじゃねえぞ」

「えー。はむはむ。いいじゃんいいじゃん。耳たぶの一つや二つ。はむはむ」

「バーカ。二つしかねえっつうの。欠けたらセケンテー的に困るんだよ。ほら。爪で我慢しろ」

 爪の伸びた親指を差し出すと、目の色を変えてかじりついてきた。

「がじがじ」

「あー、あんまり深く噛むなよいてぇから。それと指までいくなよ。頼むから」

「がじがじ」

 聞いてない。いつもの事だ。

「で。今日はこれからどうする? オマエ用の食料もいい加減底をついてきたし、そろそろ狩るか?」

「がじがじ。このまま指ももらっていい?」

「人の話し聞いてないだろお前。頼むからまじめに聞け。オマエの事だろうが」

「んちゅー」

「だーっ、指吸うな舐めんな舐め回すな気持ち悪いっ! つっ!」

 油断した。親指の爪一枚だが、齧り取られた。爪元から鮮血が散る。

「ってーな! 何やってんだオマエ喰うなっていったべ!」

「おいしいー! やっぱり食べるなら生きている人に限るわ」

 そういう彼女の目の色は明らかに、いつものから狩るものの目に変わっていた。血のにおいに触発されたのだ。こうなると危ない。俺は恐る恐る頼んだ。

「……俺は勘弁してください」

「うふふ。大丈夫よ。そこまで餓えてないから。でも、もうちょっとでいいから食べさせてよ、爪を」

「……はい」

 結局、今日は爪二枚で済んだ。

 俺は、いつまで喰われずにこの関係を続けられるのだろうか?