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小説蛾螺倶璃砦

2009-01-18

[][] 『飛翔賞』応募作 『帰っていった』  『飛翔賞』応募作 『帰っていった』 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

「これから天に飛翔しようかと思います」

 飲み会の席で、ある男がそんな事を言い出した。男は身長、体重、身なり、雰囲気。どれをとっても普通の人だ。それに冗談を口にするタイプでもなかった。事実、飲み会に参加している面々も、彼がそういうことを言ったのを聞いた覚えが無い。そもそも、誘っても毎度辞退して、飲み会に来た事がなかったのだ。

 それなのに、今日は飲み会についてきてあまつさえ天に飛翔する、とか言い出す。

「おいおい、もう酔ったのか?」

 隣席の男が問いかけるが、男は既に他人の言葉など耳に入っていないようで、黙々と、ただ「天に、天に、天に」とつぶやきなら椅子から降りて、下においてあった自分のかばんを漁り始めた。

 そうしたら、かばんの中から一本の棒が出てきた。いや、一本ではない、二本、三本、四本と出てくる。

 周りがあっけにとられている中でも、男は黙々とその棒と棒を組み合わせ始めた。どうやら先の方の大きさが異なっていて、小さい方を大きい方に入れているようだ。男がしばらく棒と格闘する中、周りの人達は徐々にまわりくどい一発芸かなにかだと思うようになっていた。囃し立てる声すら出てくる。

 しかし、男の顔を見れば分かるが、なにか芸をしよう、というのにしてはやけに表情が真剣だ。鬼気迫る、と言い表した方が良い位の表情で、棒を組み立てている。それに、誰も気がつかない。

 棒が組み立て終わった。棒の全長は、飲み屋の天井に突き刺さりかねないほどになっている。重さもそうだが、バランスも悪そうだ。中ほどからふらふらと揺れている。しかし、男はどこか満足そうにその棒を立たせている。しばらくそうして男が突っ立っていると、隣の席にいた男が、男を囃し立てた。

「で、それからどうするんだ? まさか、棒高跳びするとかじゃないだろうな?」

「いや、天に飛翔する」

「? 一体どうやって」

 そこに、カウンターにいる店員が割って入ってきた。

「お客さん、困りますよ! そんなものだされちゃあ! 他のお客さんの迷惑ですよ!」

 店員のもっともな言葉。だが男は毅然として言った。

「大丈夫だ。すぐ終わる。いや、もう終わったと言うべきだろうな」

「終わるも何も、今すぐしまってください!」

 わけの分からない事を言われた店員は、困惑の表情を浮かべるが、このまま放っておくわけにも行かないからか、カウンターから男のいる側へ動き始めた。

 しかし、男は動じる気配すらなく言う。

「大丈夫だ。ここでの俺の仕事は終わった。●●●●●の野望も昨日のうちに粉砕しておいた。これでこの地上も安泰だ。だから、することの無くなった俺はこれから帰る」

「ギギルギルの野望? 一体何言ってるんだ? それに帰るじゃなくてだね、お客さん」

 店員が後一歩、というところまで近づいた瞬間。

「さらばだ。地上人。地上の酒もなかなかのものだったぞ」

 男は物干し竿のようになったまたがり、地を蹴った。

 瞬間。

 男は、言葉どおりに天に飛翔した。あっという間に天井にまで到達すると、天井に大衝突し、突き破り、上昇し、星空の彼方へと消えていった。

 天井が開けた飲み屋で、客も店員も呆然とただただ夜空を見上げるばかりだった。

[][] 【乳メイド賞】応募作 『その気』  【乳メイド賞】応募作 『その気』 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

「すいません。おっぱいは、出ないんです……」

 朝食の時、俺の世界が崩壊した。

 メイドの巨乳は朝のミルクの為にあると信じて疑わなかった俺にとって、あるいはメイドの巨乳はリアルおっぱいマウスパッドが出来ると信じて疑わなかった俺にとって、あるいはメイドの巨乳はうずめて眠るための枕だと信じて疑わなかった俺にとって、ミルク生成機にもマウスパッドにも枕にもない巨乳が存在する、いやたとえ自分の言う事を聞くメイドを使ったとしても、この世の全ての巨乳はそういう類のものではないと知った時の絶望は、およそ他人には分かってもらえないであろう。

 それは夢だった。

 母を早くに亡くし、その上、父は飲む・打つ・買うの三拍子揃ったいまどき珍しい位の駄目人間だった。お約束のように俺に暴力まで振るってきた。俺はそこから成り上がり、高い地位について羽振りのよい生活を送る時、側には巨乳メイドを、と決めていたのだ。ご主人様に付き従う巨乳メイド(しかもミルクまで出る)、というものを漫画で擦り切れるぐらい見て、それ以来憧れていた。巨乳メイドを雇い、その巨乳を、ミルクを好き勝手に扱うことに。それが、俺の長年の夢だったのだ。

 それなのに、それなのに現実は巨乳からミルクを無条件に出せないらしい。あの巨乳は基本的にはただの脂肪だというのだ。ミルクが貯蔵されているわけではないと言うのだ!

 なんということだ。俺は途方にくれた。おっぱいミルクの為に、長い間艱難辛苦を耐えに耐え、その辺の女などには目もくれずにやってきて、とうとう今の地位についた。家もメイドの為に洋館にした。だのに、世界はこんな仕打ちを俺に与えてくる。今までは、そんなもの遭遇しても、立ち上がることは出来た。

 おっぱい。

 全てはメイドの癒しの巨乳を道の先に妄想し、それに向かって行く事で、立ち上がっていた。しかし、今目の前には闇しかない。そこには巨乳は無い。ミルクも無い。全ては、終わった。

 愕然とし、力なくベッドに倒れこむ。もう、このまま寝よう。きっとこれは夢だったんだ。いや、今までが夢だったんだ。起きたら、きっと巨乳からミルクがあふれんばかりにほとばしる世界になっているんだ。

 分かっている。

 そんなことはないなんて分かっている。だが、もういい。いいんだ。いいんだ……。

 俺は絶望の眠りに落ちていく。このまま眠り続けても良いか。どうせ巨乳メイドの乳が夢なら、いっそ夢の住人になってしまえば……。

 そこで、体がゆすられた。

「ちょ、ちょっとご主人様、お気を確かに!」

 ああ、この声は俺の雇った巨乳メイドだ。ミルクはでないと言ったメイドでもある。だが、彼女に非は無い。巨乳ならミルクがでると思って調べていなかった俺が悪い。だから。

 ああ、もうやめてくれ。もう、いいんだ。この世なんて、全て、どうでも。

 ぴちゃ。頬が何かで濡れるのを感じる。それが、口に入ってくる。

 これは。ミル、ク?

 俺は目を覚ました。起き上がって見ると、巨乳メイドが胸をはだけ、そこに朝食用に持ってきたのであろう牛乳を、胸につけ、それを俺の口に流しこもうとしていたのだ。

「……お前、何をやっている」

「ご主人様のご要望に答えたいと思ったんです。ちょっと変態っぽい行為ですけど……、駄目ですか?」

 途端に俺の頭は冷えた。そうか、その手があったか。なにも生乳にこだわる必要は無い。確かに、生物学的にはミルクは出ないかもしれない。だが、こうやって工夫すれば、近い事は出来るじゃないか。

 生きる道が見えた気がした。俺はベッドから立ち上がると巨乳メイドの手をとり、言った

「ありがとう。君のおかげで、また生きていける」

「そ、そうですか」

「それともう一つ」

「はい」

「おはよう」

2009-01-12

[][]降臨賞(http://q.hatena.ne.jp/1231366704)非応募作品「きよしのように」 降臨賞(http://q.hatena.ne.jp/1231366704)非応募作品「きよしのように」 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

 女の子が上から降ってくる、というのは俺にとっては死のイメージしか湧かない。確かに、振ってくる向こうも危ないが、それ以上に降られる俺の身が危ないと思ってしまう。俺の知っている範囲では、誰か人が振ってくると言う事態はそのまま降られる側の危機に直結しているものだ。たとえば、三味線屋勇次が空から降ってくれば、降られた側が宙に吊り下げられる。それがこの世の理だ。

 だから今、目の前に降ってきた少女を見て、当然俺は恐怖した。すぐに首に手をかける。手遅れだとは思うが、それでも、もしかしたらまだ糸か何かが首に閉まるのをブロックすることができるかもしれない。そんなかすかな期待をもっての行動だ。

 しかし、その行動は空振りに終わった。首に何も巻きついてはこなかったからだ。

「?」

 俺が頭に?マークを点灯させていると、降ってきた少女が着地の勢いを上手く消せなかったのか、顔から前のめりに倒れた。「ぎゃっ」とあまり少女らしからぬ声を上げる。あまりに綺麗に顔から突っ込んだものだから、俺は少し不憫になってよせばいいのにその少女に近づいて、あまつさえ話しかけてしまった。

「大丈夫か?」

「は、はい……って、どええええ!?」

 少女は物凄い勢いでバックダッシュして、しかしすぐすぐ近くの壁に衝突して「ぎゃっ」と言って止まった。俺は毒を食らわば皿までの精神で、もう一度近づいてみた。少女は俺をまるで幽霊か何かのように恐れ、固まっている。

 とりあえず、もう一度。

「大丈夫か?」

 俺の問いに、答えはこうだ。

「幽霊?」

 ああ、本当に幽霊だと思われてたのか俺。とりあえず訂正。

「生きてる」

「え? そんな、……なんで生きてるんだよお!?」

「んなこと言われても。生きてるモンは生きてるとしか」

「そんな、そんな。確かにあたしは、あんたの首に縄をくくりつけて、くーっと吊り上げて」

「じゃあ、今ここにいる俺はなんだ?」

「幽霊!」

「生きてる」

「なんで生きてるんだよお!」

 なんだか堂々巡りになってきた。このままでは面倒なだけなので、俺は目の前の少女の持つ縄を掴み取り、えいと引いた。

 手応えあり。

 途端にぽーんという擬音が適切な感じに、縄で出来た輪っかと、それにくくりつけられた猫が降って来た。俺は妙に冷静にそれを回避する。と、「ぎゃっ」の声と共に少女に少女がぶつかった。

 俺は溜息を一息ついてから、少女に言った。

「俺じゃなくて、猫を引っ掛けてたみたいだな」

「え、ええーっ!?」

 まったく。ドジな殺し屋もいたもんだ。俺は冷笑しながらその場を離れる事にした。

 俺の笑いにとさかにきたのか、少女が怒りのこもった声で叫んだ。

「つ、次は絶対に殺してやるからなあー!!」

 そんなことを大声で叫ぶ殺し屋があるか。俺はこんなのを恐れた自分を笑いながら、少女に言ってやった。

「そんときは、また降って来るが良いさ」

2006-10-08

[] 文学フリマ用完成まじかなれど。  文学フリマ用完成まじかなれど。 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

 どんどん物騒になっていく。魔法少女、どこにいった?

 なんでリアルに頭のおかしい人が出てきますか?

 バット振り回してますか?

 殴り殺そうとしてますか?

 自分、基本がおかしいのか? 書いてて楽しいもん。

 おかしいのか?

2006-09-26

[] 失敗報告  失敗報告 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

 駄目! 限界

 というわけで、ガガガ文庫へ送るのは見送りの方向。

 なんていうんでしょうか。げっそりする感覚が強すぎて、精神が持ちません。

 か、髪の毛が勝手に…うわあぁああああぁぁあ!!(抜け毛)

2006-09-23

[] 第四回萌理賞第一稿作品題「幕間」  第四回萌理賞第一稿作品題「幕間」 - 小説蛾螺倶璃砦 を含むブックマーク

 

カーテン舞台の幕と見立てれば、外の光景は当然、舞台である。

不用意に開けば、準備前舞台同様、そこには常には見られないモノが見えてしまう。

俺が秋の夜長に見たのは、マンションの狭間にゆれるメイド服と、あの子と、長い長い髪と、電動チェーンソーだった。

あの子は、チェーンソーを虚空に向かって振り回していた。

まるで、なにかそこにあるかのように。

そこに、何も無いのに。

彼女は舞う。長い長い髪も、エプロンも、チェーンソーも、独立した生き物のように多様に、華麗に舞う。どんなに激しく動いても、髪も、エプロンも、チェーンソーも、絡まりあうことなく、遅滞なく、動いて動いて動いて舞う。

その動きに、魅入られる。

美しいと思った。

ふと気がつくと、彼女は舞を終えて、こちらを見ていた。

唇が動くのが見えた。読む。

「見ててくれたんだ。ありがとう。じゃあ次はあなたね」

あの子はそう言って微笑み、3階にある俺の部屋に飛び込んできた。

髪が、エプロンが、チェーンソーが、

こっちに。

<終>

チェーンソーって男の子武器だよな。

すべてチェーンソーが悪い、一言でそう云い切ったら、当代の猟奇映画監督は眉を逆立てて怒るだろうか。まあそんなに怒らないか。メーカーの方が怒るよな。芝刈り機とか、そんな風に使うなって。

さておき。

メイドさんと大きな剣」と見せかけて「妖刀事件」と見せかけて砂原潤でした。砂原潤になにが足りないか、といえば長髪なんだという大悟の元、完成しました。

パルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル

と、ここまで書いてやっぱりやめ。萌えじゃねえ。