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pour away このページをアンテナに追加 RSSフィード

掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2007-05-03

[] 傭兵16:21  傭兵達 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  傭兵達 - pour away

背中が丸くなった自分の影を虚ろに見詰める。

過ぎぬけて行く毎日に色濃くなっていく、疲れ。恐れ。

積もった枯葉を小気味良い音で踏み潰しながら。

とんがり帽子に青いチュニック。

全体的に青みを帯びた衣装。

影に馴染む様に目立たぬように。

青は好きな色だ。

腰に差した二本の短剣。

自分の命を守ってきた二つの命。相棒。二つの青。金と銀の密やかな装飾。

指で撫でる。愛でる。


「久しぶり」


中越しに懐かしい声

甲冑の音。がちゃりと。重厚で威圧感が背中越しに伝わる。

慣れた気配。新しい武具にはない、使い古された金属だけが持つ音。


「うん ちょっとふらふらしてた」


言葉少なく。顔もみせずに。新しい土地。今まで未開だった場所。

一人で、つい。旅に出てしまうのはもう生まれついての癖にようなものだ。


「一人でか」


それを知っている。私が無事かどうかの確認。成長の度合いを測る。私の傷を。剣を。見る。見据える。


「そう」


私はゆっくり振り向く。微笑みながら。同時に響く鐘の音

市街地を隔て聳える門の向こうから。戦いの合図。街に走る緊張。拡がっていく。武器を構え、門のあちら側へ赴く傭兵達。私も彼もその一人。その一人でしかない。


「たまには顔出せよ 骨拾ってくれるヤツ居るだろ」


表情は堅く。彼は身の丈程もある斧を両手で一振り。ずしんっと地面に突き刺さる。太陽を反射する。獲物を求めて笑う斧。悦び。

門を駆け抜ける。私達が駆け込むと同時に閉じられる。戦いが終わるまでは開かない。逃げる事はできない。コロシアム。


「向いてないんだよ 知ってるだろ」


吼え猛る怪物。青い線が交差。空気すら染め、切り裂く。追って鮮やかな赤。彩る。

安心して背中を任せられる穏やかな戦闘。思わず笑いが漏れてしまいそうになる。


「そうは思わんけどな」


斬るなんて言葉じゃ生易しい。斧の使い方が根本的に間違っているんじゃないかと思わせるような。叩き潰す。ミンチ。どこか料理のような戦い方。

彼曰く、こいつが一番壊れにくかったんだよ。


「戦い続けてれば縁は切れないよ」


私たちは操り人形のようなものだ。指揮され、報酬を受け、戦う。自らの糸が切れるまで。自分以外のモノの糸を切り続ける。

そうさ。生き残るしかない。それ以外にないし。それしかできない。ここはそういう場所で、そういうルール。死んでしまえば会えない。

私は仲間というものが嫌いだ。守れない。守ってやるなんて約束できない。自分の弱さ。知っているから。


「そうかもな じゃあまたな」


拡がる戦闘区域を食い止める。それぞれ得意の場所へ。役割。与えられた仕事。言葉を交わす以上に、剣で語り合える。互いの動きでわかる。互いの人生。剣が斬るのは誰の糸か。


「うん 死ぬなよ」


明日なんて、求めたらなくなってしまう。そんな毎日。

最低限の祈り。届かなくとも。果たされなくとも。この言葉がきみの手向けにさえなれば。


「お互いにな」


返り血を浴び、互いに怪物と変わらぬ出で立ち。白い歯。微笑みあう。怪物を倒す為に、自らその怪物となり、超え、倒す。私の笑いはまだ人のそれだろうか。洗い流しても落ちない、血の匂い。血で洗い流す。微笑み。忘れないように。人として生き続ける為。