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pour away このページをアンテナに追加 RSSフィード

掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2007-09-22

[] 揺れる蛍の幻 - the chemical light 03:04  揺れる蛍の幻 - the chemical light - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  揺れる蛍の幻 - the chemical light - pour away

なんで今日という仕来りがあるのだろう
悲しいことは忘れたいはずなのに
楽しかったあなたとのあの日を想う

                揺れる蛍の幻

眠気覚ましに酸味のあるガムを噛みながらようやく辿り付いた



ボクは罪悪感に襲われる

あなたが怒るんじゃないかとそわそわする

あなたにあいにきてしまった

弱ったときにまた死んでしまったあなたを頼りにきてしまう



見晴らしの良い緑の丘の上



「死んだらそこで寝かせて」



そう言ってた



「そのときはなんでまたこんなところに?不便だよここは」



と半分冗談で返して



「それがいいのよ」



となんだかそんな返し方があなたらしくてボクは妙に納得してしまった

それが正しいような気になった

今ではそれが結局は正しかったんだろうなとも思う

あなただったあなたのいれものが静かに埋められたこの丘に一人

いや二人

ここに来ればいつだって二人っきりになれるのだから

まさかそんな事まで考えていたのかな

いやまさか・・・ね

でもボクには見えてしまうんだ

枯れ果て朽ちた光景が

まるであなたが全ての養分を吸い取っているのか様に

やっぱりここに来ると落ち込んでしまう

わかってはいた

ただ

どうしても



心が沈みきってしまい動けなくなる前に水筒の中身を飲み干す



昔ながらのコーラ



懐かしい味

そもそもそんな昔の味なんて知らないけど



一呼吸してボクはあなたが埋められている真上に寝転んだ

空が深くてボクは空に沈みこんでいった

いや空が落ちて来たのだった

粘度の高いその空はぼたぼたとボクの周りに落ちて

ああ空にヒビが入ったんだついにと思った

ばしゃばしゃと流れ落ちてくる空を浴びながら

あなたの血液の温度を感じた

口を開けると空は喜んで尻尾を振ってボクの中に飛び込んできた

無理やり咥えさせられ喉の奥を突付かれる女優のように

咳き込み涙を流しながら

ボクはひたすらにただひたすらにその喜んで流れ込んでくる空を飲み続けた

もう口を閉じる事もできないし喉が渇いて仕方なかったどこか生臭い味がした

さっきまで真っ青だった空はいつの間にか鮮やかな血の色になっていた

ボクの中一杯に入り込んだ空がボクの中で弾けた血の夕焼けだった空は昼と夜とが一緒になっていた

昼の月と夜の星が蛍みたいにぽわんぽわんと明滅しながらボクの中に飲み込まれて行ったそれらがぱちんぱちんとボクの中で炭酸のように弾けた



ぱしゃっ



小さい小さいとても小さい音がした

それはひとつの灯りもない田舎町の夜に離れた場所の川で魚が飛び跳ねる様な音で聞き逃しても差し支えの無いどこにも響くことのない音

どこにでもあるようでここにしか無い音

だけど何かが引っ掛かる音

虫の知らせ



空が溢れ出してボクとひとつになろうとしているのがわかった

ボクの中で弾けた空がボクの中から溢れ出していた皮膚が熱くて皮膚の下の肉が熱くてボクは全身を掻き毟って風に晒したいと思った

きっとアートみたいに綺麗に秋の風に晒されてきっとあなたはうっとりとそれを眺めながら言うんだありがとうとかって

そんな事を考えていたらボクはいつの間にか空にいた空になっていたボクが寝ていたあなたが埋まっている場所を空から見つめていた

狙いを定めるしなやかな筋肉を持つネコ科の肉食動物のような気分だった



どくんっ・・・



どくんっ・・・



どくんっ・・・



運動会の徒競走ではいつも緊張したけれどわくわくしたあの先生の握る銃が走れの合図を出すのを

その日のそれだけの為に犬のように訓練され犬のように走り犬のように喜ぶ為だけに



ぱあん!



合図がなったボクは力を込めた左手の指が溶けて空になっていたが感覚はあった同じように右足は感覚がなかったが右足があることだけは見えた空であり母なる大地である青を蹴ったハードにカクテルされた世界を蹴りつけたボクの中のそれが力を導いて引き摺りだしてくれていた一斉にボクはあなたが埋まっている丘を目指して飛び込んだ丘は口を大きく開けて涙を流し嗚咽するボクの喉だったそして夏の授業の学校のプールだった消毒液の匂いのする水しぶきをあげて丘が飛び散った赤く緋く紅くあなたまでもう少しもう少しもう少しもうすこしもうすこしもうすこしもうすこしもうすこしだボクの音が高く早く鳴っていくあなたに会えると思うと更に早くなった世界が加速していく鼓動が音楽を奏でるアフリカの灰色の月の下で踊る音だ緑の波が寄せては返す浜辺に魔法みたいにいつまでも燃えて人を誘う炎は強く強く響く太鼓の音だ加速されると共にその音はさらに激しくあなたへあなたへあなたへ届くかもしれないこの音ならぶつっと管が切れるどんっと音が響くぱんっと弾けるぶつっと管が切れるあなたが見えたぶつっと管が切れるどんっと音が響くぱんっと弾けるぶつっと管が切れるぶつっと管が切れるどんっと音が響くぱんっと弾けるぶつっと管が切れる激しく激しくはげしくあなたにあなたへあなたあなたあなたとあなたに響けあなたが見えた見えてみえて見えたぶつっと真っ暗になった




ボクは罪悪感に襲われる

あなたが怒るんじゃないかとそわそわする

あなたにあいにきてしまった

もう戻れないんだと



あらまだ起きてたの

もう眠りなさい眠ったままでいいのよ

何もしなくても時間があなたを変えてくれる

まっしろいせかいにおはよう

朽ちていくせかいにさようなら