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掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2008-02-06

[] 親友だった男 13:34  親友だった男 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  親友だった男 - pour away

高校一年の最初の頃に同じクラスの仲の良い友達に紹介された

飄々として誘っても滅多に乗ってこない感じの悪いヤツだった

たまたま帰りが一緒になり駅まで10分の道をゆっくり歩いた

二人とも原付の免許の勉強をしているという共通点があった

二人で朝早くに待ち合わせて免許を取りにいった

彼は受かって僕は落ちた

学校のテストとは絶望感が違った

2回目に僕は受かった

原付を買った

彼はよく1人で色んなところへ行っていた

僕は自転車の延長線ただの足程度にしか考えてなかった

彼は原付を自分で整備していた

簡単にできるよと言われサービスマニュアルを買って真似をした

僕の原付はエンジンが掛からなくなった

二人で工場までバイクを押していった

バイクを改造する事が楽しいと思った

二人でたまに遠出をする事があった

海辺のコンビニで飲んだ缶コーヒーはとても美味しかった

同じ学年の数人も免許を取り始め自然に仲間が増えた

彼の家には漫画が壁一面に並んでいた

参考書もたくさんあって成績も良いようだった

頭良いんだねって言ったらちょっと怪訝そうな顔をされた

「俺この科目お前に勝てなくて悔しいよ?」

「それはまぐれだよ先生が面白いだけ」

他の科目は全部彼の方が上なのにとか思った

体育はほぼ同じだった瞬発力も体力も同じような数値

彼はテニス部で僕はバスケ部だった

彼は2輪を取ったそれからは後ろに乗るようになった

体育がバスケの時は学校が終わった後にバイクでコートへ行った

日が暮れるまでバスケをした

逆にテニスの時はテニスをした

互いにそれぞれ上手くなって行った

シャワーを浴びて飲むコーラが美味しかった

たまに正反対そうな二人なのに仲良いよねと言われる事があった

正反対?よくわからない

多分憧れだったのだろう

誰かに二人の事を言われるのは嫌じゃなかったむしろ誇らしかった

彼は漫画や本が好きだった

彼の一番好きな漫画といって渡された漫画を夢中で読んだ

彼の部屋で一晩で全て読みきった

漫画の中の主人公は彼に似ていた今考えると彼が似ていた

小鳥の囀りと朝の光が清清しかった

新しい朝が来たそんな気がした

他にも小説やエロゲを貸してくれた

どれも面白かった

二人で何かについて話し合うのが面白かった彼の哲学が好きだった

憧れはますます強くなった

学校からも遊び場からも近い彼の家にはよく出入りするようになった

高校を出て彼は大学に僕は専門学校へ行った

彼に出会えてよかった

一ヶ月に一回程度遊ぶようになった

2年後に僕は就職をした

半年に一度程度は会って酒を呑んだ

彼は日本酒が好きだった

しかしお酒にはあまり強くなかった

今なら酔拳できる気がすると叫び階段から落ちていった事もあった

更に2年後に彼も就職した

その半年後に彼は通販をやり始めた

もしかしたらもっと前からやっていたのかもしれない

彼に連れられセミナーへ行った

ねずみ講だと思った

セミナーの後に彼は何かに焦るように商品やそのねずみ講のシステムの良さについて話し始めた

そこに以前の彼の言葉はなかった

さっきのセミナーで聞いたことの繰り返しを聞きながらあの頃が懐かしいなと思った

また更に半年後

彼が引っ越すという事なので手伝った

そこで彼女を紹介された一緒に暮らすという事だった

夜はお酒を買い込んで呑んだ

程よく彼は酔い始め彼女をネタに笑い話をするようになった

僕は笑ったりそれは言いすぎだよとか言っていた

そうこうするうちに彼は言った

「お前の事やっぱり嫌いだ」

「え?そうだったの?」

「俺が勉強してる間にお前は色んな事を身に付けてくそんな風にはできない」

「僕は頭良くないから仕方ないよあんまり考えると眠くなるし」

「お前が好きだろうと思ってそういう話をしたあんまり面白くはなかった」

「そっかぁごめんよ」

「お前はあの漫画の主人公みたいなヤツだ好きになれない」

「なんだよそれw」

そんな事を言い合ってるうちに喧嘩になった

外で何回か殴りあったどうして殴り合ってるのかわからなかった

彼女は泣いていた

その夜はそのまま自宅に帰った

彼から電話で決別するような決定的な何かを言われた

僕はそれに怒りを覚えながらケータイを切った

口の中が痛かった鉄の味がした

次の日に彼女から電話が掛かってきた

あの人は本当はあなたの事を尊敬してるんですとか言ってたがよく聞こえなかった

彼はまだあの通販やっているの?と聞いたら沈んだ声で止めて貰いたいとは思っていますと返ってきたのを覚えている

僕は彼の自由奔放に色んなところへ行く彼の性質が好きだった

彼の言葉と彼の哲学が好きだった

彼のなんでも自分でやろうという方針と行動力が好きだった

彼とはそれから会っていない

僕の憧れていた人の背中はまだ遠くに見える

自分だけが友達だと思っていたんだろうか

最初から嫌われていたんだろうか

お酒の席だったから仕方ないのだろうか

今の僕は彼のコピーなのだろうか

それともあの漫画の主人公のコピーなのだろうか

僕が目指した彼は何だったのだろうか

彼は僕を目指したのだろうか

彼は僕が憧れていた事に気付いていただろうか

僕は彼が僕の事をどう思っていたか考えた事があっただろうか

積み重ねた十年なんてなんて脆いんだろうか

それぞれが倒錯してよくわからない気持ちになった

ああ絡まった

と思った

絡まった?なんだそりゃちょっと笑えた

あの漫画を買ってもう一度読み直してみた

涙が出た