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掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2008-02-29

[] 忙しいとは心を亡くすと書く 13:54  忙しいとは心を亡くすと書く - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  忙しいとは心を亡くすと書く - pour away

誰かの台詞かこんな時に思い出す言葉。

何かの小説の人物の台詞だったか。何処で知ったかは思い出せない。思い出そうとはしない。言葉は道具に過ぎない。私を守る薄汚い私の言葉。自分を慰める。

多分私は今忙しい、そう忙しいのだ多分。そう、言い聞かせる。

それは言葉遊びかネガティブスパイラルか。先に何があるのか。向かうは底なのか空なのか。

昨日はきみの事を考えなかった…と言うよりは忘れていた。事に驚いている。愕然と。

今は朝だ、目覚めは良い。昨日眠りについたのは3時過ぎだったと思う。

ケータイのメールを見て、きみからメールが着ていた事に気が付く。

あ、と思って返信しようとするがメールには返信済みのマークが付いている。

返信した?……記憶はない。メールを見ると確かに私の言葉遣いで。

返信された時間を見て思い返す。記憶を辿ると言うよりは、一定のポイントを選んで記憶を再生するイメージ。

ポイントごとの何も書かれてないラベルにはほんのりと色が付いている。たとえようのない。私の中だけの色。

自動販売機でジュースを買った瞬間。人混みを歩いていて人と肩がぶつかった瞬間。など。

その時間を表す四つの数字を思う。検索されたラベルから記憶が再生される。

腕時計が見える。11時45分。左腕の時計から私の視線が少しずつ離れる。

どうやら電車に乗っていたようだ。そういえば仕事場から自宅まで移動した記憶がなかった。いや記憶はされているのだから忘れていた。と言うべきか。

そう忘れていたのだ。私の体に緊張と恐怖がずるると降りてくる。瞬きする間に。気が付くと恐怖で染まっている。今、私の肌の色は何色に光を返しているのだろうか。と思う。私の瞳の色は何色にまどろんでいるだろう。と思う。

自分の中の悲壮が瞳や肌から外に漏れているんじゃないかという錯覚に囚われる。

体は反応し周囲に警戒を配り、辺りを見回す。誰も見ていないのに。誰も見ていなかった。私に誰かに見られるほどの価値は要らない。もとい無い。

メールは素っ気無い文面だった。満員電車に揺られて吊革に疲れた体を預ける人の表情に似ている。まるで何もかもに興味を持たない。違う。私はきみの事が好きで好きで仕方ない。そうはっきりと私の中にある。暖かく、今や体の深い部分に根付いた情動。

そういえば夢でもきみを暫く見ていない。私はよく夢を見る。大抵はその人の夢だ。その人の夢というよりは夢の中でその人と会う。

いや今朝、昨夜もきみを見た……そうだ。夢の中で。

夢の記憶を再生する。ぼやける。眠っているときの記憶を再生しようとすると、光が混ざって視界が滲む。これだけは慣れない。緩やかに訪れる既視感。スローなフラッシュバック。引き戻される自身。脳のどこかへ。

記憶の中のきみの表情が陰っている。暗みの掛かった部分はのっぺりとしている。

それは金属のようなそうでないような。ざらりとしたプラスチックみたいな手触り。

暖かみのない質感。きみはいつもの笑顔と瞳。その全ての風景に私は身震いする。恐ろしい…と。

もしかしたらきみは居ないんじゃないだろうか。現実のきみは。夢のきみと逢瀬を続けていた私。もうずっと前から頭がおかしくなっていたのではないのか?

何処かで見かけた夢のきみに似た人。その人に重ねていただけ。そうだ。

そもそも。私は今眠っている。夢の中では私は音を感知できない。聴こえない。何も。私は何も見えない暗闇よりも何も聴こえない暗闇の方が恐ろしい。何も見えないという事には親近感を覚える。暖かみさえもそこにはある。何も見えなければ夢を見ればいい。瞳ははっきり言って邪魔なのだ。目を瞑っても瞼を透かして入ってくる光。刺すような痛みと一緒に。瞼の裏に映る幾何学微生物

私は耳が聴こえない。小さい頃に事故にあったそうだ。それだけ。

私は自分の瞳を潰した事がある。もう夢だけでよかったから。今の私は暖かい液体を拭っている。瞳だったその液体。私は自分の瞳が嫌いだ。嫌いだった。これで永遠に眠る事ができるだろうか。醒めない夢は夢じゃないなんて。笑っちゃうほど素敵な台詞を夢のきみは言ってくれるだろうか。

この体の全てを潰してきみに持って行くから。全て捧げるから。どうか受け取って。心、を。