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pour away このページをアンテナに追加 RSSフィード

掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2008-03-07

[] 月桃の花 11:34  月桃の花 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  月桃の花 - pour away

川面には青白い円月が揺らいでいる。時折、小魚か、水の跳ねる音が聞こえる。川の流れは極めて穏やかだ。

梟が規則正しく鳴いている。合いの手を入れるように、風が吹く。森が歌う。

男と水浴びをしにきていた。男は桃太郎と言った。おかしな名前だと思った。

同時に、名前なんてどうでもいいと思った。夜を一緒に過ごしてくれるのならば。

誰だって構わなかった。肌の感触と体温さえあれば良い。

もう何年もこうやって夜を過ごしている。他の過ごし方なんて忘れてしまった。

偶に男は朝になると消える。そういうものなのだ。また違う男を探す。

男は蜜蜂のようなものだ。亡き母が教えてくれた。だから花になりなさいと言った。

夜に咲く、月に照らされる為の花。男が裂く華。

男が肌を寄せて口を吸う。合わせて体の力を抜き、預ける。硬い舌が歯の裏を舐める。甘く柔らかい果実のような赤。

男の腕が体を弄る。腕を男の背中に回す。月と同じ、蒼白の肌が絡まる。

夜を払うように、儀式のように、毎夜繰り返す事の空しさ。それにより際立つ、何ものにも代えがたい今。

頭の中も、心の中も、私の中も、全て白く染めて。溶けて。

押し倒されて、足を開かされる。ざあっと風を呼んで。森が、梟が、水が鳴き止む。音が消える。瞳は月。草がちくりと肌を刺す。男が私を貫く。中が押し出され、口から妖しく漏れる呻き。昂ぶらせる。

男の肌に熱が篭り、男が香る。ぞくぞくする。自分が女で良かったと思う。瞬間、達する。弾ける。吸い込まれる。

口で受ける。甘い桃のような白。唾液に混ぜて飲み込む。脳が痺れる。こんなにも甘い。

この男は不思議だ。惹かれたのもそれのせいかもしれない。甘い誘うような匂い。果汁のような精液。薄皮のような白い肌。まるで果実そのもの。

男に跨る。男の耳を、首を胸を舐め上げる。やはり、甘い。

その甘さを体中が欲しがる。鼻腔から、舌から、欲が上ってくる。痙攣。

男の首に歯を立てる。驚くほど柔らかい。ずぶずぶと歯が食い込む。男の首が受け入れる。

ぷつんと破れた皮から、熱く甘いシロップが溢れ出す。夢中で啜る。歓喜

気が付くと、男の二の腕に私の爪が刺さっている。少し力を込めると指が減り込んだ。土の感触。男の腕は千切れた。土に男が染み込む。

勿体無いと思った。千切れた腕を潰しながら喉に流し込む。もう片方の手を男の胸元に当てる。にゅぶ。手が吸い込まれていく。喚起。あらゆる感情が混ざる。堪らなくなって笑う。吼える。咀嚼。繰り返す。足りるまで、終わるまで。



雀の鳴き声で目が覚める。

川で体を洗う。ついでに余った男の下半身を川へ流す。

尻が浮いて桃のようだった。