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掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2008-03-11

[] お祈りするカマキリ(2) 16:16  お祈りするカマキリ(2) - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  お祈りするカマキリ(2) - pour away

無重力感。孤独。無力。落下。

体中の細胞が目を覚ます。重厚な安心感の上から急に何も無い水の中に。

目を開いて上を見ると、大きな手が私の頭を押さえつけている。お風呂の中。水。冷たい。

息ができない、できないできないできないできないできないできないできないできないできないくるしい。もがく。足掻く。

「なんで外で寝てるんだ?起きてなきゃダメだろう?」

くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい。………。



気が付くと布団で寝ていた。もう夕方なのか赤い光が窓から入ってきている。

ようちえん休んじゃった…

その夜私はある事を実行した。標的が私から母親になった。

ある日、いつものように一方的な暴力を振るっている父親の腹部に包丁が刺さった。

気持ちの悪い呻き声を上げて倒れる。母親は私達を連れて実家へ逃げ帰った。

父親が居なくなった。新しい生活が始まった。

今度は母親が私を殴るようになった。今までと余り変わらないなと思った。

痛みはそんなに感じなかった。慣れたからなのかはわからない。私は演技する事を覚えた。彼らは苦しむ様を見ないと満足しないのだ。

しかし、高が知れていた。演技だとばれてしまった。それからは私の首を絞めるようになった。気を失うまで。



14歳になった。

私は、学校から帰ると押入れに入るようになった。母親を殴る私を見る為に。ドキドキしていた。もう家の中に怖いものは何にも無かった。

母親を殴っていた。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、殴った。私は笑っていた。それを私は押入れから見ていた。私が母親を殴る様を。ただひたすら。見ていた。

母親は蹲り、ごめんなさいと泣きながら何度も謝っていた。かっこ悪いと思った。ごめんなさいと言う度に拳を振り下ろした。手の皮がずるずる剥けた。

恐怖を克服する為には恐怖そのものになればいい。頭の中で誰かが言った。

次の日、学校からの帰り道。弟が私に殴りかかってきた。私は驚いた。

弟は喚きながらがむしゃらに殴りかかってきた。母親がどうとか言っていた。

正直つまらなかった。なんだその殴り方は?その受け方は?まるでなってない。弟か?本当に。

暫くすると弟は動かなくなっていた。私は家へ帰った。私は笑っていた。

家に帰っていつものように母の居る部屋を開けると母親が動かなくなっていた。

私は怖くなった。付き合っている彼女の部屋へ逃げた。

彼女はすぐに私の異変に気が付いた。

私は洗いざらい喋ってしまった。今までどういう生活だったのかを。私の体の傷の秘密を。

私が母親を殴っているのを見ている子事は言わなかった。頭がおかしいと思われるのが嫌だった。

私が話し終えて、泣き止むまで彼女は私を抱いてくれた。



「もっと早く話してくれればよかったのに。あたし我慢しなくてよかったんだね」

「…え?」



彼女は私の腹部をナイフで突き刺し、私の上に圧し掛かった。あやす様に私の首を絞めた。



………。