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掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2008-06-25

[] 25人の白雪姫 17:34  25人の白雪姫 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  25人の白雪姫 - pour away

「ねぇ、鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」」

白雪姫です」



今日も何処かで彼女が生きている事を確認する。

もう何年も続く毎朝の事。

私が生きていく為の希望の光。

私の娘。

世界一美しい娘。

世界一愛しい娘。

10年前の大戦が終わる少し前に彼女はさらわれてしまった。

当時の敵国であった国は今は跡形もない。

虱潰しに探した。何も残らないほどに。けれど遂に見つからなかった。



定刻の報告。

彼女がさらわれてから組織された。24人からなる部隊白雪。

部隊の女性たちは一様に、雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀のように黒い髪。

それが部隊の証であり、入隊できる資格だった。

幼い頃から、自分の娘のように育てた。暗殺術、謀略術、帝王学。あらゆるものを学ばせた。

大いなる名誉である白雪の名。それに恥じぬように母なる愛に答えた者達。



いつも通り退屈なものになると思っていた報告。

しかしカタリーナ、ソフィア、マルガレーテが帰ってこない。

3人が向かったのは淫蟲の森。

城から最も遠い場所。

今から向かえば月が一番高くなる頃には辿り着ける。

私は無言で頷いた。

音もなく、雪のように白い肌を髪と同じ色の装束で隠した21人は夜に溶けて行った。



報告を待った。

黒檀の枠のはまった窓のところに座って、森の方向を見つめる。

梟が鳴いている。



突如上がる閃光。

瞬時に事態を察して窓から離れ伏せる。

訪れる衝撃波。

空気の拡がりが窓を割り、鏡を割った。

破片がキラキラと降りかかり、刺さった。

「まさか…毒リンゴを…!」



吹き飛んだ窓からマリアが飛び込んできた。

左腕がなく、背中は焼け爛れていた。一目見て助からない事がわかる。

「…しっかりして!何があったの!」

「お、お母様…み、見つけました…彼女…姫…を」



突如感じる殺気。

背中に刺さる冷たい感触。

夜と同じ色の髪が揺れる。



振り返ると血より赤い唇が笑っていた。

「…あ………は…」

ごぼごぼと口から血が溢れる。



赤く染まる。鏡の欠片。

王子と二人並んだ花嫁姿の白雪姫が映っていた。