2009-01-13
■ [other] 空から降ってくる女の子

「食らえー!」
ごちん☆
「痛ったあい…」
頭を抱えた女の子が覆い被さっている。
シャワーを浴びてバスタオルを巻いて出てきた僕には予想だにしない事態だった。
「愛くるしい彼女を優しく包もうという気持ちはないの!?」
頭がズキズキする。
どうやら彼女の奇襲は半分成功したようだ。
「…今オマエ食らえって」
うつ伏せに倒された僕は仰向けになった。近い。
「!なんでこっち向く」
酒臭い。何顔赤くしてるんだよ。こっちが照れるわ。
「酔ってんの?」
重たい。アルコールとシャンプーの匂いがする。
「酒には酔ってないが自分のこの行動には酔ってる」
何 を 言 っ て い る ん だ。
「頭悪い」
彼女の頬が紅くなる。女に押し倒されるって絵的に情けない。少し苛めてやるか。
「な…」
彼女が顔を寄せてくる。
「ちょ…タイミングおかしいし、酒臭いからしたくない」
瞳孔が僅かに開いた。その隙に腰に手を掛けて横に転がす。
スカートが捲れて横たわった彼女はレイプされた後のようだ。唾を飲み込む。
「スカート捲れてるよ」
転がされた体勢のまま、スカートを直す。
「色っぽい?」
そっぽを向いたまま聞いて来る。
「ううんトドみたい」
一瞬怒りが沸いたのかびくっと肩を震わせた後、動かなくなった死んだか。
静かになった所で、僕はいつものようにブログを巡回する。
「ふーん降臨賞ねぇ…」
「なんだこれあほ過ぎて面白いなエクストリームセックスとか」
…?芳しい匂い。華やか過ぎず、落ち着いた匂い。そうまるで…
僕は嫌な予感がして振り返る。
加湿器の前にちょこんと座り込んでいる。
「なんかした?」
首だけぶんぶん振って答える。
僕は加湿器に刺さったペットボトルを見る。やりやがったな…
ペットボトルを取り、中に入っている液体を一口舐める。複雑な味が舌を天国へ連れて行く。至福。呆れ。アルマニャック・ド・モンタル。少なくとも僕や彼女よりも年上。
「この味は嘘をついている味だぜ」
振り向いた僕は驚愕の事実を知る。
大粒の涙が流れている。しまった。言い過ぎたか。冗談が効かない。明日はスイートフォレストか…うぇ。
「な、泣くなって」
泣きながら首をぶんぶん振る。涙が飛び散る。鼻水も出てる。
あーでも泣いてる顔って良いよな。もっと泣かせたい。
ああ、いけないダメだダメだ。ここは慰めなくては。優しさ優しさ男の甲斐性包容力。
「そんな顔ぐしゃぐしゃにしてたら美人が台無しだよ?」
頭を撫でると俯いてしまった。
「だ、だって……ヒック…部屋…中この匂い、グス……キス…」
「美味しいお酒。…グスグス…好きだし、ヒッ…好きなお酒の匂い…だったらってうえーん」
うえーんとかびえーんって泣くのって漫画だけだと思ってた。
彼女の言い分は概ね正しいし、彼女の行動も理解できるのだが、抜本的な見直しをしてもらいたい。もちろん僕も。
僕は彼女の口に軽く口をつけた。アルコールの匂いは気にならなかった。
「足りない、泣くぞ」
強気に出だしたな…このやろう。
もう泣き止んでるし嘘泣きだったのか?なんか悔しい。
僕は無視してさっきの空からセックスのエントリーを読む。
「何読んでるの?」
「んー?なんか空から女の子が降ってきて男とセックスする話ー」
「えっち」
「…何してんの」
僕の左手の指を咥えて舌で指と指の間を舐めている。
「おふまみ」
上目遣いとのコンボ。不覚にもドキッとしてしまう。
「おいしいの?」
怪訝な表情を作る。
「ん」
目を瞑って頷く。
指先から腕、肩、背中。あー気持ち良い。けど負けは認めません。男の子だから。
「空から女の子が降ってくるとしたら」
「ん」
「どんな話にする?」
「ラピュタ?」
「ですよね」
「あのオープニング好きだなぁ私」
「んーなんで?」
「空からゆっくり降ってきて男の子に抱きとめられるでしょ?」
「そんな感じだったかな」
「あれさぁ多分えっちした後なんだよね」
「はあ?そんな発情したオマエじゃあるまいし」
「あーあこれだから男は鈍感ねー体は敏感なのにねー」
「男にそれは言っちゃいけない」
「お返しです」
「ごめんなさい」
「まーどっちでもいいんだけどさーあれが恋に落ちる時みたいな」
「ロマンチックですねー…え、って事は?」
「や、だからどっちって訳じゃないんだけどってゆってんじゃん、人の話聞けちゃんと」
「…はい」
「えっちしてーふわふわ漂ってるときに抱きとめられるとね、恋に落ちるというか想いが深くなるというか…空から降ってくるのは恋する女の子なのさっ」
「誘い方巧いね」
「その気になった?」
「うん」
「へっへーいっぱい愛して?」
