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掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2008-06-09

[] 姉ログ 14:30  姉ログ - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  姉ログ - pour away

B型の姉。

Twitterサルベージと追記。



友人の結婚式の為に上京してきた姉と待ち合わせもののけ姫のこだまみたいに口あけてぼかんとしているところを捕獲。

第一声は

「東京の人って足速いのね」



姉はフリーキップで都内を移動するらしく、

suica ばかりの改札に大層ご立腹でした。

「でれねえ!しかも前の人がぴこーんってなって蓋閉ってるのに!足速いから通れるの!私が引っ掛かるの!」

「…蓋?…ああなるほど」



駅で昼飯色鮮やかな夏野菜カレーののぼりを見て「ここ!」

「…あれ?いいけど?」

「私ナスとにんじんとブロッコリー嫌いだったよね?」

「カレー運ばれてきてから気づくなよ…っておいwしかも乗せるな!人の皿に!」



「あんた好き嫌いなくてえらいわねー」

「好き嫌いがある人の気持ちがわからんめんどくさいじゃん」

「まーそなんだけど食べれないのよお昼これだけで足りるかなー」

「…そりゃメインの具をほとんどこっちに移したらな…」



サンリオショップ行くかジブリショップ行くかで口論になりキティちゃんのぬいぐるみをぶん投げられた。

結局別々にそれぞれのお店に行くことになり一時間後に待ち合わせ姉は大量の手荷物を抱えて戻ってきた。

「いくらつかったの?」

「…2まん6せんえん」

「…えー…」



「なんでついてくるの」

「泊めてくれるんでしょ?」

「ちょww宿は?」

「おまえんとこ」

「金取るからね」

「5円で十分だろ」



「ベッド貸さないよ」

「お前はどっか女のとこでもいけよ」

「そっちこそ男のとこにいけよ」

「はーこんな狭い男に育てた覚えは…」

「育てられた覚えもありません」



「パジャマ貸して~」

「ねーよそんなん」

「探せば女物の服出てくるんじゃねーの」

「ありません」

「 T シャツと Y シャツどっち派?」

「 Y シャツ」

「変態」

「ほんとに帰れよ」



口に何かを押し込められる違和感で起きる。

「…んなにこれ」

「トロピカーナパイナップルグレープフルーツだよ!おはよう!」

「…何時」

「7時半!」

「寝る…」

「起きろ!朝食を作って!」

「お願いだから空気読んで…」

「お前が読め!」

さらにトロピカーナを口に突っ込まれ降参。



「冷蔵庫に何もないのねー」

「あー家じゃ食べないから」

「モテるためには料理しなさいって教えたでしょ!」

「近所においしいパスタ屋さんあるよ」

「行く!一時間…いや三十分待って!」

「…その間寝てるね」



「パスター♪パスター♪おいしいパスター具はなんだろねー♪」

「またおかしな歌を…」

「どれくらい美味しいの!?」

「ど、どれくらい!?うーん…好きな人が作ってくれた料理くらい美味しい」

「まーじーでーそれは楽しみー」

「不味いパスタ屋なんて見つける方が大変だよ…」

「あたしが不味いなんて言ったら相当よ!」



結婚式に行ってそのまま帰ると言っていた姉。

深夜12時頃に自宅に戻ると例の如く口を開けてぽかんとしている。

「…あれ何してんの?」

「待ってるの」

「何を…」

「あんたが帰ってくるのを」

「なんで?近所の人が誤解するだろつーかちょっと怖いよ?」

「いまここで叫んでやろうか」

「やめい」



「シャンプーの匂い?お風呂行ってたの?」

「そうそう近くに銭湯あったからそこで~」

かしゅ。

「何勝手に冷蔵庫開けてるんだよww」

「はー風呂上がりのビールは格別だわ」



「んで?」

「なに?」

「なんでまだ居るの」

「席がなかった」

「帰りの?」

姉ビールをくわえたまま頷く。

「…お姉さま今年おいくつでしたっけ」

「女性に年齢を聞くとは男子の風上にもおけん」

「お姉さま?」

「えへへー?にじゅうとむっつー」

「それは僕の年齢だろ!」



「よし明日の電車を調べておくれ」

「ほい」

カタカタカタ…

「朝五時半にあるよ席も空いてる」

「今ここでPCに酔拳をしない私はよくできた姉だと思う」

「夜の八時半が最終です」

「さすがパソコンオタク!ありがとう!」

2008-05-29

[] 煙草の味 00:37  煙草の味 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  煙草の味 - pour away

足元から伝わる地を這っている振動。硬いシート。

遠くから聴こえるロック。白いイヤホン。

自分の体という殻に潜り込む。音が近くなる。実感。

ゆっくりと目を開ける。あと二駅。夢を見ていた。…気がする。わからない。

眠っていたのか。思い出に耽ってたのか。

目を閉じると、小さな小さな粒。燈る。

天道虫のような赤。消えそうに煌々と。

触れたら消えてしまいそうで、けれど火傷してしまいそうに熱い。

甘い声を絞られて上下する肩。二人の空気を飲み込む喉。真っ暗な部屋。目を開ける必要すらない。

カチンと金属の音。聞き慣れた澄んだ音。

目を閉じていても、どこにいるかわかる。その合図にどこかへ浮いていた体の感覚が戻ってくる。背中と首が痛む。

カチン。シュッ。カチン。口に出さないように唱える。反芻する。

ゆっくりと体に感覚が馴染んでいく。息をつく。

香ばしく焦げる匂い。焼きたてフォンダンショコラ。

とろりとした甘いもの。期待して口を啜る。



苦っ。



煙草の味。

…匂いは好きなのに。







…苦い。

2008-04-18

[]「洗濯機から女の子」展 15:51 「洗濯機から女の子」展 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク - 「洗濯機から女の子」展 - pour away

を見に行った。

創作された緻密な文章が人々を唸らせている…という訳ではなく、ただの洗濯機の展示販売会だ。多少大掛かりではあるが。

昔から、私達は昔からなんでも擬人化してきた。古くは長く使った物に宿る付喪神とか。

紙に、絵でも文章でも良い、誰が描くかも問題ではない。何らかの形で二次元に形を取る。次は三次元だ。

擬人化されたそれらは、現実に形を成す為にシステムにされ、生活の中に組み込まれていった。

今じゃ車のナビゲートシステムは助手席にふんぞり返っている。

洗濯機も同様だった。

クラインの壷のようなものからシンプルなものまで様々な形がならんでいる。

どれも共通している事といえば中が透けて見えるという事位か。

いつか誰かが書いた。「洗濯機から女の子」。

いつかそれが現実のシステムになった。

当然のように女性には不人気だが。主に購買層は一人暮らしの男性。

そりゃそうだ。システムが全て女の子だなんて。私が女だったらまず見に来ない。

彼女たちは水で構成されていた。ウンディーネと呼ばれている。

最初は水で作った立体映像みたいなもんだとばかり思っていた。

今は少し驚いている。多少の性格もプログラムされているらしい。

彼女たちの振る舞いは実にユニークだ。

自らで好みの男性に売り込みをかけている。商品自体が売り込むのか。これは良い案だ。

相性の良いシステムと出会うという事は稀だからだ。

彼女たちにも直感のようなものがあるのだろうか?

私の目の前のウンディーネは優しい微笑みを浮かべながら、私の手を握っている。

洗濯する時の水流を試せるのだ。

彼女の手に包まれた私の手にはぬるい水流が優しく流れている。ウンディーネの体温。被膜が七色に色を変えている。


ーーーー


今は朝刊を読んでいる。

どうやらあの洗濯機の購入者が洗濯機に体を突っ込んで死亡する事故が多発したようだ。何してるんだか…死因は溺死?

原因究明を急ぐ…か。ふーん。リコールとか手間掛かりそうだな。

ケータイの着信音が鳴る。紀子からだ。今夜の食事の約束の事だろう。

ん…?洗濯機の起動音が…?


via 洗濯機から女の子 - washer-in-the-rye.com

[] 預言者の予定表 11:39  預言者の予定表 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  預言者の予定表 - pour away

「ねぇねぇ預言者ってさ」

「…ん?」

「予定表とかタスクリストとか書いたりするのかな?」

「今日の何時までに何とかの預言する!とか?」

「そうそう」

「預言者っていうのはデータベースに対するアクセサでしかないからなぁ」

「キッカケから事象やら引っ張ってくる事しかできない?」

「じゃないかなぁ…?預言者のアーキテクトじゃないから何とも言えないケド」

「そんなもんかぁどんな感じなんだろうね」

「トリガー自体が実行可能な場合はどうなるかわからないケド」

「ふみゅう…」

「…?なんか知りたい事でもあんの?」

「きみの気持ち」

「きみが何考えてるか考えてたよ今は」

「それだけじゃや」

「あは…好きだよ?」

「…疑問系……ん」



「最初から聞けばいいのに」

「聞かなくても言ってくれればいいのに」

2008-03-07

[] 月桃の花 11:34  月桃の花 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  月桃の花 - pour away

川面には青白い円月が揺らいでいる。時折、小魚か、水の跳ねる音が聞こえる。川の流れは極めて穏やかだ。

梟が規則正しく鳴いている。合いの手を入れるように、風が吹く。森が歌う。

男と水浴びをしにきていた。男は桃太郎と言った。おかしな名前だと思った。

同時に、名前なんてどうでもいいと思った。夜を一緒に過ごしてくれるのならば。

誰だって構わなかった。肌の感触と体温さえあれば良い。

もう何年もこうやって夜を過ごしている。他の過ごし方なんて忘れてしまった。

偶に男は朝になると消える。そういうものなのだ。また違う男を探す。

男は蜜蜂のようなものだ。亡き母が教えてくれた。だから花になりなさいと言った。

夜に咲く、月に照らされる為の花。男が裂く華。

男が肌を寄せて口を吸う。合わせて体の力を抜き、預ける。硬い舌が歯の裏を舐める。甘く柔らかい果実のような赤。

男の腕が体を弄る。腕を男の背中に回す。月と同じ、蒼白の肌が絡まる。

夜を払うように、儀式のように、毎夜繰り返す事の空しさ。それにより際立つ、何ものにも代えがたい今。

頭の中も、心の中も、私の中も、全て白く染めて。溶けて。

押し倒されて、足を開かされる。ざあっと風を呼んで。森が、梟が、水が鳴き止む。音が消える。瞳は月。草がちくりと肌を刺す。男が私を貫く。中が押し出され、口から妖しく漏れる呻き。昂ぶらせる。

男の肌に熱が篭り、男が香る。ぞくぞくする。自分が女で良かったと思う。瞬間、達する。弾ける。吸い込まれる。

口で受ける。甘い桃のような白。唾液に混ぜて飲み込む。脳が痺れる。こんなにも甘い。

この男は不思議だ。惹かれたのもそれのせいかもしれない。甘い誘うような匂い。果汁のような精液。薄皮のような白い肌。まるで果実そのもの。

男に跨る。男の耳を、首を胸を舐め上げる。やはり、甘い。

その甘さを体中が欲しがる。鼻腔から、舌から、欲が上ってくる。痙攣。

男の首に歯を立てる。驚くほど柔らかい。ずぶずぶと歯が食い込む。男の首が受け入れる。

ぷつんと破れた皮から、熱く甘いシロップが溢れ出す。夢中で啜る。歓喜

気が付くと、男の二の腕に私の爪が刺さっている。少し力を込めると指が減り込んだ。土の感触。男の腕は千切れた。土に男が染み込む。

勿体無いと思った。千切れた腕を潰しながら喉に流し込む。もう片方の手を男の胸元に当てる。にゅぶ。手が吸い込まれていく。喚起。あらゆる感情が混ざる。堪らなくなって笑う。吼える。咀嚼。繰り返す。足りるまで、終わるまで。



雀の鳴き声で目が覚める。

川で体を洗う。ついでに余った男の下半身を川へ流す。

尻が浮いて桃のようだった。

2008-01-25

[] こぽこぽ 15:19  こぽこぽ - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  こぽこぽ - pour away

まるで息を殺して身を潜めているよう

浅瀬を横目に涙に沈む深海魚

言葉の濁流こぽこぽ

この埋もれて行く安心感は何だろう

とても心地良くてこのまま崩れても構わない

もうシンカしすぎちゃったんだ戻れない

太陽の光こぽこぽ

水泡を絡ませながら泳いだらきっと中から破裂しちゃう

2008-01-06

[] 深夜に一人 13:52  深夜に一人 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  深夜に一人 - pour away

窓の外を見ていた

間接視野に入る窓の向こうの冬樹がやけに輪郭がくっきり

リアルって自分に近いって事なのかなぁとぼんやり思う

窓に映る店内はどこかみんなぼやけていて

今年一年の積るものとか

今までの事とか

年が明けたら綺麗に見える訳でもないんだろうけど

外に出ると吐いた息が白く

窓に映ったぼやけた景色みたいに立ち上って

春を待つ枯れたように見える木にまとわりついていった

2007-11-05

[] アンパンマンの餡における調査報告 for ファック文芸部杯 13:50  アンパンマンの餡における調査報告 for ファック文芸部杯 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  アンパンマンの餡における調査報告 for ファック文芸部杯 - pour away

申告ってこんな感じで良いのかな・・・?

追記:終了したのでログまとめ用に転載

[] アンパンマンの餡における調査報告 15:33  アンパンマンの餡における調査報告 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  アンパンマンの餡における調査報告 - pour away

アンパンマンは伝染性(伝達性)餡子状脳症(Transmissible Beanjamform Encephalopathy, TBE)に侵されており、アンパンマンの餡は異常プリオン蛋白(プリオン - Wikipedia)により脳が餡のようなものに変質しているという事をここに報告する。



調査の結果、

アンパンマンの脳に感染していると思われる異常プリオン蛋白は経口感染によってしか感染しない事が確認されており、

頭を食べさせるという行為は感染を拡げるという行為に他ならないと判明。

その手口は近年の人間社会において極めて有用で、まずは相手を信用させる所から始まっていると思われる。

身近な人が「あたしを食べて」、「ボクのをお食べ」などの台詞を用いた場合は病院での検査を強くお勧めする。


餡子のような状態の脳(脳のような餡子)についてだが、

頭を分け与えても生存が可能であり、「考える筋肉」のようなものとされる。

またアンパンマンの必殺技が一向にアンパンチだけな事、一話毎に話の流れが変わらない事から、

通常の脳にはあるはずのシナプスの伝達による思考、創発などは行われていないと思われる。

これらから餡子のような状態の脳(脳のような餡子)は脳のある程度の機能は保持するが、同等のものではないと判断される。

また同時に調査した宿敵のバイキンマンについて、

バイキンマンはアンパンマンに感染している異常プリオン蛋白に対して非常に危機感を抱いており、

「人を信用させて感染させるなど卑怯極まりない。

 これからも明るい菌社会の未来の為、粉骨砕身の思いでアンパンマンの餡と戦って行く」

とコメント。


最後に、「愛と勇気だけが友達さ」というフレーズは、

もはや彼の脳にはそれ以外の新たな友達、又は概念、知識が生まれる事はないという無慈悲な事実だったのだ。

異常プリオン蛋白に侵される前の彼への祈りを込めて、ここに報告を終了する。



また調査員はこれを書き終えた後「つぶあんだった」という謎のメッセージを残し行方不明である。

2007-10-13

[] 無題 for 食人賞 11:58  無題 for 食人賞 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  無題 for 食人賞 - pour away

「・・・なんで学生がこんなに乗ってるんだよ」

「お あそこ空いてるな」

「すいませんここいいですか?」

「どうぞ」

「お久しぶりですね先輩(微笑)」

「あれ?もしかして〇〇ちゃん?」

「そうですよっ(微笑)」

「本当に久しぶりだね」

「感じ変わってるからわからなかったよ(苦笑)」

「あ私お弁当持ってきたんですけど食べます?」

「いや、弁当にカレーって(笑)」

「あ うまいねこれ」

「ですよね~美味しいですよね(微笑)」

「ねえ これ作ったのさ 俺だよね?」

「そうですよ、美味しいですよね(微笑)」

「俺さ このカレーに、君入れたよね?」

「ええ、美味しいですか?私(微笑)」

2007-09-12

[] 遅れてきた彼女 16:49  遅れてきた彼女 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  遅れてきた彼女 - pour away

夏が終わるな

深夜の高速を自宅へ向かい走っている最中

脳の端々から泡のように浮き出て来た思案

少しウィンドウを開ける

なんとなく今感じた言葉を確かな現実にしたくて

金属の塊に切り裂かれる空気が悲鳴を上げている

車内に勢いよく雪崩れ込む夏の終わり

鼻腔一杯に吸い込んで私は満足する



誘うような優しい緑に光るSAの看板を見てハンドルをきる

余計なことを考え始めるのは集中力が切れてきた証拠だからだ

熱くなったエンジンを冷ますように宥めるようにキーを回し止める



用を足して深夜の運転手達で賑わっている露店に流れる

そこで軽くパクつきながら何処にでもある自販機で眠気覚ましのコーヒーを買う

また冷め切っていないうちにエンジンを掛ける

調子のいいうちに高速を抜けてしまいたい

食べ物の匂いが車内に溜まってしまった為に大きくウィンドウを開ける

ゆっくりとSAの駐車場を車体に空気を含ませるように横切る

助手席のウィンドウの向こうに水色のワンピースが見えた

スカートが夜の風で揺らいでいる

胸元から上は見えない

なぜかこちらに視線を向けて微笑んでいる気がした

誰に向けるでもなく自分も少し微笑む

ウィンドウを閉める

静かに上がっていくウィンドウに気が引き締まっていく



カウントダウン



また深夜の高速をふさわしいスピードで行く為の秒読み

まるでこれから打ち上げられるロケットのように

助手席のサイドミラーではさっきの女性がこちらに手を振っている

今度は首から上がサイドミラーからは見ることができない

顔が見えたらがっかりするのかもしれない

両腕と頭を失い代わりに美を手に入れた石像を思い出す

そんな事を思わせてくれた彼女に手を振る膝の上で小さく

目の前に迫る合流地点

ほとんど他の車がいないので悠々とハンドルを滑らせる

バックミラーに水色のワンピースが見えた



!?



すぐに後部座席を見るが誰もいない



おかしなものを乗せてしまったかな

長く車を乗っていればこんなこともある

特に気にもしなかった

それよりも怖いのは恐怖に囚われた時の人的ミスだ

するとシフトレバーに置いた手に冷たい感触

明らかに人の手のそれ



それでも私は横は見ない

山道の合間であるこの道路はカーブと上がり下がりが頻繁にある為に予断を極力排除しなければならないからだ

するとありえない位置から女がするりと私の前に

女は水色のワンピースさながらの肌の色をしている

長く漆黒の髪

目を瞑ったまま唇を重ねてくる

冷たい爬虫類を思わせる舌

恋人同士のキスが終わったようにゆっくりと目を開ける女






「あ ごめん違った 君じゃないや」






あの時私は多分こうなるとわかっていたのかもしれない

彼女の瞳を結局見ることはできなかった

きっと美しいのだろう

私は水色のワンピースを着た女性を今日も深夜のSAで待つ

2007-09-04

[] 好きなもの 11:49  好きなもの - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  好きなもの - pour away

壁に映った月明り

深夜に目が覚めてのそのそとトイレへ向かう

ユニットバスの窓から月明かりが静かに入ってきている

壁に格子が掛かった窓の形に月の光が切り取られて貼り付けられている

この明りが好きだ

蛍光灯や豆球の明りなどの人工的な明りとは比べ物にならないほど安心する

眠気眼でぼ~っと歩く僕に

「こんな時間に起きたのか」

とか

「怖い夢でもみたの?」

とか聞いてくる

それは男性だったり女性だったり子供だったりお年寄りだったりする

深夜にしか会えないなんだか不思議で秘密めいた出会い



きみと寝る夜

呼吸するようにゆっくりと瞬きを繰り返すきみの瞳

感情をあまりださない夜の冷たさみたいなきみの表情

まばたきのタイミングが支配するシーツの上

互いに目を見ながらまばたきしかしないまま

穏やかそうなきみのまばたき

二人では大きすぎるベッド

朝になると大抵きみは遠くで背中を向けて眠りこけている

肌を合わせて寝ているきみをこっちへ向ける

眠ったまま腕を絡ませてくるきみ



バンクしたカーヴ

100kmから120km位で気持ちよく曲がれるカーヴ

タイヤから伝わる路面の感触

吸い付くようなタイヤ

走る喜びがタイヤから伝わる

膝の上にある右手でハンドルを僅かに動かす

車体に加重されフレームがぎしっと音をたてる

それは苦しげな音ではなくて

むしろこれ位が丁度良いと言わんばかり

そして車体と一体になった僕は思い描いたそのままの

速度で

ラインで

気持ちで

その大好きなカーヴを走り抜ける