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掴めそうで掴めない情景、淡く、うっすらと。

記憶の中にぼんやり灯る物語。

2008-04-01

[] 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んだ感想がうちもこんなんだったなぁ…以外何も浮かばなかった 14:59  「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んだ感想がうちもこんなんだったなぁ…以外何も浮かばなかった - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んだ感想がうちもこんなんだったなぁ…以外何も浮かばなかった - pour away

きみから借りた本だった

返すときにこんな事を言ったらきみは目を丸くして「へ?」と言った

間の抜けた顔が面白くて僕はくすりと笑った

たまにはフィクションを書くつもりで自分の事を書き殴るのもいいのかもしれない

書き出すとスッキリするときみは言った

脳には限りがあるからWebに記録して忘れるんだと

その通りにきみはWebに書いたことをすっぱり忘れるようになっていった

そもそもどうでもいいような事を書いてるだけなのかもしれない

幼い頃に家族が目の前で強盗にメッタ刺しにされて殺されてその後親戚の家をたらい回しにされて邪魔者扱いされて施設に入れられ中卒で働きだした職場のロッカーで財布がなくなって犯人にされて首になって世の中に絶望した!

って事はなかったけれど

家庭内は程よく壊れていた父は僕をサンドバックのように扱ったし母は僕を性の奴隷とした抗いようの無い暴力は常に自分に降りかかってきて程よく歪んだ心は自分より弱いものに自分の力を振るう事で解消しそのうち足りなくなって自分の恐怖の対象だった両親をかつての両親がそうしたように暴力で返してやがては殺してしまった直接的にせよ間接的にせよ…だ

家庭というのはそういうものだと思っていた彼らはある日から目を覚まさなくなっただけだったし葬儀や手続きは面倒だなとしか思わなかったああ面倒だな人が死ぬのにも手続きが要るのかと

彼らが死んで彼らが本当の夫婦じゃないという事がわかった

彼らは誕生日から名前まで嘘だった

僕は医者に促されてカルテのようなものを眺めてなんて簡単なんだろうと思った僕は彼らが死んだという事にサインをして彼らを殺した

それぞれにその時付き合っているか結婚しているかわからないけれど互いのパートナーを名乗る人達が病院へ来た

彼らはまるで何回も練習したかのように大袈裟な動きでもう動かない彼らに寄り泣き出した

ああ見たことあるよこのシーン…テレビで

人の感情ってなんて滑稽なんだろう

また色々面倒だったそれでももう誰とも一緒に暮らしたくはなかった僕は僕の玩具の弟さえいればよかった

彼らの死から僕の中の暴力というイメージがすっと憑き物が落ちたように消えた

過去というテキストを選択してDeleteキーを押せばいい

僕の体には火傷の痕や切り傷が無数に目立たない所にある

と或る内臓は機能を落としているし色の違う左目は何も見ることができないし右耳も聴こえない

けれども日常生活に不便は無いしそれを誰かに気付かれる事もない

目立たないように着飾ればいい

僕は正直誰かと付き合って行く事が怖い

生きる事に精一杯だった日々は狂っていたしいつまでも色が褪せる事も思い出になる事もない

僕は僕の愛しいものを壊してしまいたくなるんじゃないだろうか

僕はいままでも誰かの所有物であったしこれからもそうだろう

きみと幸せそうに微笑む僕も僕だけれど同時に僕には僕を所有する人が必要で僕が生きて行く為に僕に痛みを恐怖を愉悦を与えてくれる絶対的な主人が

もしきみのモノにしてくれるなら今までの何よりも深い傷を僕につけてマーキングみたいに

きみは僕の話をうんうんと聞いた後に冗談でしょう?と言った

うん冗談なんだだってエイプリルフールだし

左目から涙が流れた

目にゴミが入っただけで泣けるのに

2008-03-11

[] お祈りするカマキリ(2) 16:16  お祈りするカマキリ(2) - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  お祈りするカマキリ(2) - pour away

無重力感。孤独。無力。落下。

体中の細胞が目を覚ます。重厚な安心感の上から急に何も無い水の中に。

目を開いて上を見ると、大きな手が私の頭を押さえつけている。お風呂の中。水。冷たい。

息ができない、できないできないできないできないできないできないできないできないできないくるしい。もがく。足掻く。

「なんで外で寝てるんだ?起きてなきゃダメだろう?」

くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい。………。



気が付くと布団で寝ていた。もう夕方なのか赤い光が窓から入ってきている。

ようちえん休んじゃった…

その夜私はある事を実行した。標的が私から母親になった。

ある日、いつものように一方的な暴力を振るっている父親の腹部に包丁が刺さった。

気持ちの悪い呻き声を上げて倒れる。母親は私達を連れて実家へ逃げ帰った。

父親が居なくなった。新しい生活が始まった。

今度は母親が私を殴るようになった。今までと余り変わらないなと思った。

痛みはそんなに感じなかった。慣れたからなのかはわからない。私は演技する事を覚えた。彼らは苦しむ様を見ないと満足しないのだ。

しかし、高が知れていた。演技だとばれてしまった。それからは私の首を絞めるようになった。気を失うまで。



14歳になった。

私は、学校から帰ると押入れに入るようになった。母親を殴る私を見る為に。ドキドキしていた。もう家の中に怖いものは何にも無かった。

母親を殴っていた。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、殴った。私は笑っていた。それを私は押入れから見ていた。私が母親を殴る様を。ただひたすら。見ていた。

母親は蹲り、ごめんなさいと泣きながら何度も謝っていた。かっこ悪いと思った。ごめんなさいと言う度に拳を振り下ろした。手の皮がずるずる剥けた。

恐怖を克服する為には恐怖そのものになればいい。頭の中で誰かが言った。

次の日、学校からの帰り道。弟が私に殴りかかってきた。私は驚いた。

弟は喚きながらがむしゃらに殴りかかってきた。母親がどうとか言っていた。

正直つまらなかった。なんだその殴り方は?その受け方は?まるでなってない。弟か?本当に。

暫くすると弟は動かなくなっていた。私は家へ帰った。私は笑っていた。

家に帰っていつものように母の居る部屋を開けると母親が動かなくなっていた。

私は怖くなった。付き合っている彼女の部屋へ逃げた。

彼女はすぐに私の異変に気が付いた。

私は洗いざらい喋ってしまった。今までどういう生活だったのかを。私の体の傷の秘密を。

私が母親を殴っているのを見ている子事は言わなかった。頭がおかしいと思われるのが嫌だった。

私が話し終えて、泣き止むまで彼女は私を抱いてくれた。



「もっと早く話してくれればよかったのに。あたし我慢しなくてよかったんだね」

「…え?」



彼女は私の腹部をナイフで突き刺し、私の上に圧し掛かった。あやす様に私の首を絞めた。



………。

2008-03-10

[] お祈りするカマキリ 14:49  お祈りするカマキリ - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  お祈りするカマキリ - pour away

黄ばんだ電灯がチカチカしている。私は背中を丸めている。

皮膚の裂けた箇所が熱い。コンクリートの冷たさが優しい。頬を寄せてその確かな厚みに安心する。

口にはガムテープが巻かれている。泣くとうるさいから。腕と足も同じようにガムテープが巻かれている。勝手にどこかに行くと困るから。

さっきまで幼稚園の帰りに公園で遊んでいた。帰りが遅いという理由で殴られた。ごめんなさい。殴られた。ごめんなさい。口と鼻から血が出た。ごめんなさい。

殴られた勢いで下駄箱をひっくり返した。ごめんなさい。腹部を蹴飛ばされて食べ物を吐いた。ごめんなさい。縛られた。

玄関から突き飛ばされて階段から踊り場へ落ちた。せっかく食べさせたものを吐いたかららしい。歯が折れた。頬が削げた。

お前の為なんだからな。ドアの閉まる音。静かになった。

コンクリートは私の涙と鼻水と血を吸い、少し温かくなった。

気が付くと私は笑みを浮かべていた。


少し寒かった。近所のドアは壁に描かれている絵のように見えた。開いた所を見た事が無かった。

もしかしたらこの灰色の団地には私達の家族以外誰も住んで居ないんじゃないか。

毎朝聴こえる喧騒も毎夕聴こえる家族の音も誰かが流しているだけなんじゃないか。

そんな事を妄想しながら月を見遣る。コンクリートに頬を寄せたまま目だけ向ける。

ようちえんのお友達。私がこんな目にあっていると知っても友達でいてくれるかな。それともお友達じゃなくなっちゃうかな。お顔のケガどうやってかくせばいいかな。

友達が居なくなった気がして寂しさに包まれる。寒さは気にならなくなる。本当は友達なんて居ないんじゃないか。あ、でもそれなら先にパパに消えて欲しいなと思った。

あしたもわらえるかな。おつきさま、あんまり見ないで?はずかしいから。


月が近くにあった。小汚い私が笑みを浮かべながら寝ているのが見えた。

しっかりしろよお前。と声を掛けた。私が頷くのが見えた。私に耳打ちした。私は笑顔になって小さく頷いた。そのあどけない笑顔に安心して眠りについた。

2008-02-29

[] 忙しいとは心を亡くすと書く 13:54  忙しいとは心を亡くすと書く - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  忙しいとは心を亡くすと書く - pour away

誰かの台詞かこんな時に思い出す言葉。

何かの小説の人物の台詞だったか。何処で知ったかは思い出せない。思い出そうとはしない。言葉は道具に過ぎない。私を守る薄汚い私の言葉。自分を慰める。

多分私は今忙しい、そう忙しいのだ多分。そう、言い聞かせる。

それは言葉遊びかネガティブなスパイラルか。先に何があるのか。向かうは底なのか空なのか。

昨日はきみの事を考えなかった…と言うよりは忘れていた。事に驚いている。愕然と。

今は朝だ、目覚めは良い。昨日眠りについたのは3時過ぎだったと思う。

ケータイのメールを見て、きみからメールが着ていた事に気が付く。

あ、と思って返信しようとするがメールには返信済みのマークが付いている。

返信した?……記憶はない。メールを見ると確かに私の言葉遣いで。

返信された時間を見て思い返す。記憶を辿ると言うよりは、一定のポイントを選んで記憶を再生するイメージ。

ポイントごとの何も書かれてないラベルにはほんのりと色が付いている。たとえようのない。私の中だけの色。

自動販売機でジュースを買った瞬間。人混みを歩いていて人と肩がぶつかった瞬間。など。

その時間を表す四つの数字を思う。検索されたラベルから記憶が再生される。

腕時計が見える。11時45分。左腕の時計から私の視線が少しずつ離れる。

どうやら電車に乗っていたようだ。そういえば仕事場から自宅まで移動した記憶がなかった。いや記憶はされているのだから忘れていた。と言うべきか。

そう忘れていたのだ。私の体に緊張と恐怖がずるると降りてくる。瞬きする間に。気が付くと恐怖で染まっている。今、私の肌の色は何色に光を返しているのだろうか。と思う。私の瞳の色は何色にまどろんでいるだろう。と思う。

自分の中の悲壮が瞳や肌から外に漏れているんじゃないかという錯覚に囚われる。

体は反応し周囲に警戒を配り、辺りを見回す。誰も見ていないのに。誰も見ていなかった。私に誰かに見られるほどの価値は要らない。もとい無い。

メールは素っ気無い文面だった。満員電車に揺られて吊革に疲れた体を預ける人の表情に似ている。まるで何もかもに興味を持たない。違う。私はきみの事が好きで好きで仕方ない。そうはっきりと私の中にある。暖かく、今や体の深い部分に根付いた情動。

そういえば夢でもきみを暫く見ていない。私はよく夢を見る。大抵はその人の夢だ。その人の夢というよりは夢の中でその人と会う。

いや今朝、昨夜もきみを見た……そうだ。夢の中で。

夢の記憶を再生する。ぼやける。眠っているときの記憶を再生しようとすると、光が混ざって視界が滲む。これだけは慣れない。緩やかに訪れる既視感。スローなフラッシュバック。引き戻される自身。脳のどこかへ。

記憶の中のきみの表情が陰っている。暗みの掛かった部分はのっぺりとしている。

それは金属のようなそうでないような。ざらりとしたプラスチックみたいな手触り。

暖かみのない質感。きみはいつもの笑顔と瞳。その全ての風景に私は身震いする。恐ろしい…と。

もしかしたらきみは居ないんじゃないだろうか。現実のきみは。夢のきみと逢瀬を続けていた私。もうずっと前から頭がおかしくなっていたのではないのか?

何処かで見かけた夢のきみに似た人。その人に重ねていただけ。そうだ。

そもそも。私は今眠っている。夢の中では私は音を感知できない。聴こえない。何も。私は何も見えない暗闇よりも何も聴こえない暗闇の方が恐ろしい。何も見えないという事には親近感を覚える。暖かみさえもそこにはある。何も見えなければ夢を見ればいい。瞳ははっきり言って邪魔なのだ。目を瞑っても瞼を透かして入ってくる光。刺すような痛みと一緒に。瞼の裏に映る幾何学。微生物。

私は耳が聴こえない。小さい頃に事故にあったそうだ。それだけ。

私は自分の瞳を潰した事がある。もう夢だけでよかったから。今の私は暖かい液体を拭っている。瞳だったその液体。私は自分の瞳が嫌いだ。嫌いだった。これで永遠に眠る事ができるだろうか。醒めない夢は夢じゃないなんて。笑っちゃうほど素敵な台詞を夢のきみは言ってくれるだろうか。

この体の全てを潰してきみに持って行くから。全て捧げるから。どうか受け取って。心、を。

2008-02-08

[] 親友だった男 - 爛漫 15:28  親友だった男 - 爛漫 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  親友だった男 - 爛漫 - pour away

座席は自由だったので二人で端っこに席を取った。

ナオは頭も成績も良かった。授業で分からない事は常に聞いた。

一学期の中間試験結果が張り出される。


「頭いいよね」

「俺、この教科だけけなくに勝てなくて悔しいよ?」


ひとつだけ私の名前がナオより上にあった。


「これだけじゃんこれだってマグレだよ」

「一年の時からそうじゃんもうマグレとはいわねー(笑)」

「あれだよサイコロ振り続けてたまたま全部当たってるだけだ(笑)」

「今宝くじ買ったら当たるんじゃね?」

「いや多分もう運使い果たしてる(笑)」



休み時間は同じクラスの仲間とバイクの話を延々とした。たまに気になる女の子の話。


「なんか二人正反対そうなのに仲良いよね」

「ん?そう?」

「げー仲良くねーよ」

「付き合ってんの?」

「意味がわからない(笑)」

「まーでも二人とも話し掛け辛い雰囲気は似てるかもね」

「ふーん」「ふーん」


体育の時だけは違った。

進級直後の最初の体力測定ではほとんど二人とも同じ数値だった。

握力、背筋力、持久力、瞬発力。

どんな授業のときでも常に本気で競い合った。

私はバスケ部だった。ナオはテニス部。体育がバスケの時は、私がナオにバスケを教えた。テニスの時は、ナオが私にテニスを教えてくれた。

この頃ナオは自動二輪の免許を取ってバイクを買っていた。

最初はエンジンすら掛からなかった古びたバイク。ペンキ塗りだけ手伝った。私は触るものを動かなくする才能に恵まれていた。

二人分のバッシュとバスケットボール、ラケットとテニスボールを抱えて、ナオの後ろに乗った。

練習の成果を体育で試す。二人で体育の時間に着ける決着。見守るギャラリー。

テニスでは真剣勝負。長いラリー。バスケではチームメイト。息が合わない訳がない。


年に一度の球技大会。



私達は正直この大会が好きではなかった。

学年全てで勝ちあがり方式なのだ。

去年は二、三年生に完膚なきまでに叩きのめされた。

科目はバスケット。私達のクラスは強かった。

元バスケ部部員と私とナオ。学年で一番バスケが巧い人達が集まっていた。

負けるわけがない。順調に勝ち上がっていた。

今「元」と言ったのは理由がある。とある事が原因でバスケ部は廃部になってしまったのだ。そして多分その原因は私達にあると言っても過言ではなかった。

最終戦。3年生の元バスケ部部長率いるチーム。怒っている。固く結んだ口。威圧する視線。

ラフなプレーが多かった。審判も三年。多分買収済みなのだろう。一切ファウルを取らない。足を捻挫するメンバーも出た。32対18。負けた。


「けなくってバスケしてる時はかっこいいのね」


帰りにクラスの女子に言われた


「普段はかっこ悪くてごめんね(笑)」


バスケをしていた人達がチヤホヤされていた。居心地悪く、なぜか後ろめたく感じた。足早に帰った。苦手だ。



三年。

卒業の掛かった期末試験。私は普段の行いが祟り、まったく授業がわからなかった。

ナオにテストの山と解法を徹夜で教わった。要はテストをクリアする為の全てを。



寝過ごした。二人して。



なんとか卒業。できた。

バイク仲間も半分位は連絡を取らなくなった。

ナオとだけは変わらず遊んでいた。


「大学暇でさそっちは?」

「んープログラム面白いよ」


ナオは私にPCの組み立て方を教えてくれた。

私はプログラム言語を教えた。

二人で日本酒を呑みながら近況報告や馬鹿話をした。

ずっと変わらないと思った。



私はその後ゲームプログラマになった。

大学生のナオとは遊ぶ時間が極端に減った。遊ぶというよりは会うというように。

ナオはSEになった。

2008-02-07

[] 親友だった男 - 邂逅 17:03  親友だった男 - 邂逅 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  親友だった男 - 邂逅 - pour away

高校の生活というものに少しずつ慣れて来た。

朝が早く、練習の厳しい部活にも体が自然とついていくようになった。

午後の練習はでなかった。友達と遊びたかったから。

チャイムが鳴るとだらだらといつもの場所へ歩き出す。



高架下。



学校からは割と近いのだが入り組んでいて入ってきづらい場所。もちろん周りからは見えない。

私は幼稚園からこの近くに住んでいる為に知っていた秘密の場所。永遠に工事の終わらない場所。大人は入ってこれないKEEPOUTの魔除け。子供たちの聖域。

今日は一番乗りだった。同じクラスの仲間は女友達と遊びに行くようだった。

内ポケットから潰れ掛けたソフトケース。細く長い茶色。甘いチョコレートの匂い。JOKER

ズボンのポケットの中でお守りみたいに握り締めているZIPPO。貰い物。一度も磨いた事の無い朽ちた金属。カキンと乾いた音。心地よい響き。

肺の中に甘い香りを招く。体の中を磨くように。空を仰いで吐き出す。柔らかく浮かぶ私の作る雲。きえる。

一人来た。誰かを手招いている。二人になった。声を掛け合う。咥えタバコで。

彼は転校生だった。転校してきたばかりで友達少ないから一緒に遊ぼうぜ。と紹介された。

物静かそうな男だな、と思った。緊張しているのかもしれない。

その日は他には誰も来なかった。三人で他愛の無い話を繰り返して帰った。

校内で会うと挨拶を交わす相手が一人増えた。彼から話掛けてくる事はなかった。彼が一人で高架下に来る事もなかった。その日までは。


彼が一人。


「あれ…?どうした?」


びくっとこっちを向いて。


「……けなく…彼女いる?」

「なんだよいきなり。居ないよ。ふられたばっかり。なに…?恋の悩み?」


少し、口元が緩む。

彼は照れくさそうに答える。


「わからない…」

「よく…ショートで茶髪の子と歩いてなかったっけ?」

「付きまとわれているだけ。好きな人ができた訳じゃなくて」

「うん?」

「彼女が欲しい…というか」

「付き合ってみたいとか?」

「そうそれ」


この頃、仲間の集まりが悪いのは其々に彼女ができていたからだ。

彼女が居るという事がひとつのステータスになっていた。


「…ジンちゃんに…言えばセッティングしてくれるんじゃないかな」

「ほんとに?」

「どんなのが来るかわからないけど」

「けなくは行かないの?」

「やー苦手だし、あーゆーの。緊張するからいいや」

「オレだって行った事ないよ!」

「うわびっくりした大きな声出すなよ(笑)」


秋の終わりを告げるような風が私たちの足を家路へ向けた。


「そいや、今ゲンチャ欲しくてさ」

「あれナオも?僕も」

「お今どの辺?」

「本買って読んだだけ。もうどのバイク買おうとか思ってるトコ」

「同じ同じ(笑)」

「テスト終わったら行こうかなと思ってる」

「じゃあその辺で一緒に行こうぜ」

「おういいよ」


煉瓦の道に長く伸びる影ふたつ。黒と赤の空。はあっと吐き出す息白く。



朝早く見知らぬ駅で待ち合わせ。あまり眠れなかったが眠たくはなかった。

試験場はさらに緊張が圧し掛かった。学校の期末試験なんか比べ物にならない。

見知らぬ場所。見知らぬ教室のようで教室ではない部屋。冷たい床。知らない感触の椅子。

カリカリと答案用紙に書き込む音だけが聞こえる。先生のような人が前に立っている。誰。

加速する筆音。みんな正解を書き込んでいるんだろう。自信がない。怖い。タバコが吸いたい。

合格者発表。さらに緊張した。私の番号はなかった。ナオは受かった。


「次受ければ大丈夫だって、練習じゃオレより点数高かったんだし」

「うんまたすぐ受け行く。忘れないうちに」


ナオとはその後の講習のためにそこで別れた。

私は次の日に再度試験を受けに行った。免許を取った。


その次の週にバイクを買った。TZR。NS-1。

正直戸惑った。お店で教えられたやり方をいくら試してもうまく操れない。

冬休みの間、二人で練習した。一週間ほどで乗りこなせる様になった。

少し遠くへ行きたくなった。246。深夜。見知らぬ道。

怖かった。大きなトラックとタクシーが100kmを超えるスピードで走っている。

ゲンチャは30kmなんて教えられたが、既に60kmを超えていた。それでも246のペースについていけない。

信号で隣同士で止まる。フルフェイスのメット越しに大きな声を出す。次に見えたコンビニで。頷く。青。

すぐに見つかった。バイクを停めて、メットを脱ぐ。大きく深呼吸をする。肩の力が抜ける。足からも力が抜ける。


「あはは、こえー、足がガクガクしてるよ」

「深夜は無法地帯なのか早すぎる。スピード違反ばっかじゃねーか」


二人してコンビニの前で座り込む。立っていられなかった。

缶コーヒーを買った。ROOTS。バイクに座る。そのままべたっとバイクに張り付く。暖かい。潮の匂いが鼻をつく。


「海?」

「多分、海臭い」

「臭いって(笑)」

「この木の向こうじゃね?」

「行く?」

「いやいいや、ガソリンは?」

「んー多分半分くらい。」


車体を揺らして確かめる。ガソリンメーターは付いてない。


「じゃあこの辺から引き返すか」

「そだね。もう遅いし」

「このバイクでよかったな」

「普通のだったらここまで来れなかったかもね(笑)」


二人の乗っていたバイクはゲンチャの中では早い部類のものだった。


「このスピードで事故ったら死ねる」

「疲れてきてるし帰りはゆっくり帰ろうぜ」

「おっけえ」


メットを被る。首を回してハンドルを握る。自分のマシン。一体になれるこの感じ。深夜の闇と対照的に眩しい橙の道路。何もかもが新鮮だった。

路肩から道路へDROP。先行するNS-1。嘘つき。何がゆっくりだ。明らかに飛ばす意気。唸るエンジン。排気ガス。

ゲンチャの軽い音。今の私たちに似合う音。追いかける。見失わないように。信号ひとつすら逃せない。強めに回して。クラッチは遅く。

ギアが変わる前の泣き出すような音。長く。ダメージを与えるようなスピードの出し方。搾り出す。もっと。

すぐにナオと私の家への道を分ける交差点についた。互いに手を振りながら別れる。クラクションはなんとなくタブーだった。かっこ悪い。



ひとつずつ、ひとつずつパーツを変えていった。互いにここ変えたらこうなったぜ。等と報告しあった。冬休みが終わった。

自転車が停まっていた高架下にはバイクが2台停まるようになった。

仲間たちは羨ましがった。けれどバイクに乗ろうとはしなかった。其々が免許をとり始めた。一ヵ月後にはバイクが10台停まるようになった。

放課後はまだ繋がっていない道路でバイクの練習をした。

マニュアルのバイクは私たちのだけだった。馬鹿話をしながら。



学校にばれた。いつもどおり帰ろうとすると着信が。PHSに。カタカナだけのメール。ヤバイバレタ マチブセサレタ。

遠くから見ると確かに一人、先生が待ち伏せしている。

イヤな体育教師。上履きで体育館に入ったからという理由で動けなくなるまでぶん殴るアナーキーなヤツ。数年後に女子高生に関係を迫り、ニュース沙汰になる男。

その日は夜まで近くで遊んだ。夜バイクを取りに行った。


「…もうここだめかもな」

「…そうだな」

「どうする…?今日このまま…帰る?」

「うん?なんか…あったっけ??」

「いや…遊びこない?うち」

「おー?いいよ?時間あるし」


ナオの部屋は壁一面に漫画が並んでいた。


「すげ、なにこの量」

「ああそうだ。けなくに読ませたい漫画が」


そう言いながら私の前に大量の漫画を積み上げる。連番。始めから終わりまで。

二人でタバコを吸いながらコーヒーを飲んだ。煙が部屋に立ち込めたが、寒かったので窓は開けなかった。

喋りながら朝まで漫画を読んだ。面白かった。こんな面白い漫画があるのかと思った。夜が明けていた。カーテンの隙間から光。同時に落ちてゆく瞼。

漫画の中にナオを見つけた。ナオに雰囲気の似ている不思議な男。

少しナオの事がわかった気がした。達成感にも似た眠気。自分の中で何かが変わった気がした。

次に目が覚めたときはもう夕方だった。


「おい!ナオ!おきろ!朝だ!つか昼?いや夜!」

「んー……」


すぐに焦っても仕方がないことに気がつく。起きないナオをそのままに部屋を出て家へ帰る。親にこっぴどく怒られた。



進級。ナオと同じクラスになった。

2008-02-06

[] 親友だった男 13:34  親友だった男 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  親友だった男 - pour away

高校一年の最初の頃に同じクラスの仲の良い友達に紹介された

飄々として誘っても滅多に乗ってこない感じの悪いヤツだった

たまたま帰りが一緒になり駅まで10分の道をゆっくり歩いた

二人とも原付の免許の勉強をしているという共通点があった

二人で朝早くに待ち合わせて免許を取りにいった

彼は受かって僕は落ちた

学校のテストとは絶望感が違った

2回目に僕は受かった

原付を買った

彼はよく1人で色んなところへ行っていた

僕は自転車の延長線ただの足程度にしか考えてなかった

彼は原付を自分で整備していた

簡単にできるよと言われサービスマニュアルを買って真似をした

僕の原付はエンジンが掛からなくなった

二人で工場までバイクを押していった

バイクを改造する事が楽しいと思った

二人でたまに遠出をする事があった

海辺のコンビニで飲んだ缶コーヒーはとても美味しかった

同じ学年の数人も免許を取り始め自然に仲間が増えた

彼の家には漫画が壁一面に並んでいた

参考書もたくさんあって成績も良いようだった

頭良いんだねって言ったらちょっと怪訝そうな顔をされた

「俺この科目お前に勝てなくて悔しいよ?」

「それはまぐれだよ先生が面白いだけ」

他の科目は全部彼の方が上なのにとか思った

体育はほぼ同じだった瞬発力も体力も同じような数値

彼はテニス部で僕はバスケ部だった

彼は2輪を取ったそれからは後ろに乗るようになった

体育がバスケの時は学校が終わった後にバイクでコートへ行った

日が暮れるまでバスケをした

逆にテニスの時はテニスをした

互いにそれぞれ上手くなって行った

シャワーを浴びて飲むコーラが美味しかった

たまに正反対そうな二人なのに仲良いよねと言われる事があった

正反対?よくわからない

多分憧れだったのだろう

誰かに二人の事を言われるのは嫌じゃなかったむしろ誇らしかった

彼は漫画や本が好きだった

彼の一番好きな漫画といって渡された漫画を夢中で読んだ

彼の部屋で一晩で全て読みきった

漫画の中の主人公は彼に似ていた今考えると彼が似ていた

小鳥の囀りと朝の光が清清しかった

新しい朝が来たそんな気がした

他にも小説やエロゲを貸してくれた

どれも面白かった

二人で何かについて話し合うのが面白かった彼の哲学が好きだった

憧れはますます強くなった

学校からも遊び場からも近い彼の家にはよく出入りするようになった

高校を出て彼は大学に僕は専門学校へ行った

彼に出会えてよかった

一ヶ月に一回程度遊ぶようになった

2年後に僕は就職をした

半年に一度程度は会って酒を呑んだ

彼は日本酒が好きだった

しかしお酒にはあまり強くなかった

今なら酔拳できる気がすると叫び階段から落ちていった事もあった

更に2年後に彼も就職した

その半年後に彼は通販をやり始めた

もしかしたらもっと前からやっていたのかもしれない

彼に連れられセミナーへ行った

ねずみ講だと思った

セミナーの後に彼は何かに焦るように商品やそのねずみ講のシステムの良さについて話し始めた

そこに以前の彼の言葉はなかった

さっきのセミナーで聞いたことの繰り返しを聞きながらあの頃が懐かしいなと思った

また更に半年後

彼が引っ越すという事なので手伝った

そこで彼女を紹介された一緒に暮らすという事だった

夜はお酒を買い込んで呑んだ

程よく彼は酔い始め彼女をネタに笑い話をするようになった

僕は笑ったりそれは言いすぎだよとか言っていた

そうこうするうちに彼は言った

「お前の事やっぱり嫌いだ」

「え?そうだったの?」

「俺が勉強してる間にお前は色んな事を身に付けてくそんな風にはできない」

「僕は頭良くないから仕方ないよあんまり考えると眠くなるし」

「お前が好きだろうと思ってそういう話をしたあんまり面白くはなかった」

「そっかぁごめんよ」

「お前はあの漫画の主人公みたいなヤツだ好きになれない」

「なんだよそれw」

そんな事を言い合ってるうちに喧嘩になった

外で何回か殴りあったどうして殴り合ってるのかわからなかった

彼女は泣いていた

その夜はそのまま自宅に帰った

彼から電話で決別するような決定的な何かを言われた

僕はそれに怒りを覚えながらケータイを切った

口の中が痛かった鉄の味がした

次の日に彼女から電話が掛かってきた

あの人は本当はあなたの事を尊敬してるんですとか言ってたがよく聞こえなかった

彼はまだあの通販やっているの?と聞いたら沈んだ声で止めて貰いたいとは思っていますと返ってきたのを覚えている

僕は彼の自由奔放に色んなところへ行く彼の性質が好きだった

彼の言葉と彼の哲学が好きだった

彼のなんでも自分でやろうという方針と行動力が好きだった

彼とはそれから会っていない

僕の憧れていた人の背中はまだ遠くに見える

自分だけが友達だと思っていたんだろうか

最初から嫌われていたんだろうか

お酒の席だったから仕方ないのだろうか

今の僕は彼のコピーなのだろうか

それともあの漫画の主人公のコピーなのだろうか

僕が目指した彼は何だったのだろうか

彼は僕を目指したのだろうか

彼は僕が憧れていた事に気付いていただろうか

僕は彼が僕の事をどう思っていたか考えた事があっただろうか

積み重ねた十年なんてなんて脆いんだろうか

それぞれが倒錯してよくわからない気持ちになった

ああ絡まった

と思った

絡まった?なんだそりゃちょっと笑えた

あの漫画を買ってもう一度読み直してみた

涙が出た

2008-01-15

[] 初夢 14:44  初夢 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  初夢 - pour away

じっとりと空気が重たい

さっきまで感じていた冬の冷たく硬い軽い空気は何処へ行ったのか

どうやら横になっているようだ

寝ているのか倒れているのかはわからない

踵と腰と背中に硬い岩のような感触

僅かに温かみがある

目をゆっくりと開ける

ぎらりと太陽が覗く

「眩しい」

男は誰もいない空に向かって漏らした

目が乾く痒い

目と目の周りをゴシゴシと擦る

瞬きをした

目を開けたら暗い教室

男の姿勢は同じく横たわったままだ

隅に椅子を逆さに乗せられた机が寄せられている

男は気付く

「夢か」

立ち上がり伸びをする

朝起きたときにする癖だ

体の節々に血がいきわたるように筋肉を起こす

骨が軋みながらベキベキと声を上げる

男は何かおかしいと思う

「・・・何かいるな」

横目に窓の外を見る

一色の黒

それ以外なにもない

「手抜きやがって背景くらい入れろよ」

男は夢の出来に愚痴をこぼした

男は身を翻して廊下に飛び出る

今いた場所に鬼のような小男が突如現れた

教室の入り口で身を潜めて様子を伺う

教室の天井が壊されている

どうやら小男はそこから降りてきたらしい

しかし引っ掛かる

何かで気が付いたが音がしなかった

小男は鈍器のようなものを持っている

振り回した

寄せられていた机が砕けて辺りに散乱する

そして男は確信する音が聞こえないと

なにやら小男が鼻を動かしている匂いを嗅いでいる様だ

「こっちに気付くか・・・?」

男は教室の入り口から出口に向かってポケットの中のケータイを投げる

廊下に落ちるケータイ

音はやはり聞こえない

小男はその容姿からは想像できないスピードでケータイが落ちた場所へ飛びつく

「最悪、向こうは聞こえるのかよ」

男は反対方向へ走り出していた

小男がこちらに気付き追いかけてくる

なぜか先ほどの敏捷さはない

男は前を向いたまま猛然と走り続ける

男は前を向いたまま小男を観察した

数が増えている

1m進む事に鼠算式に増えているようだ

もう廊下の彼方まで小男で犇いている

「気持ちわりい」

それぞれ同じ顔ではなく微妙に異なっている

手に持っているものや身に付けているものなども違うようだ

黄土色の体毛に覆われている

目は黒色で見えてないようにも思える

耳が頭の上に小さく生えている

角のようではない

変色し溶けた歯が下卑た笑いを浮かべる口から見える

「こんなゴブリン見たことないな

 FFでもMTGでもLORでも・・・何がモデルなんだ?」

小男の一人が手にもった鈍器を男に目掛けて投げた

軽いモーションから物凄いスピードで鈍器が放たれる

「カタパルトかっつーの」

男は身を捻ってかわすがわき腹が抉られる

ゾリッと嫌な感覚

思わず咽返る

口から血が溢れる

手をやるとダラリと中身がぶら下がっているのが分かる

尖った骨に指先が当たる

突如目の前にガラスの壁が現れる

「行き止まり!?」

そのガラスの壁に鈍器が刺さる

破裂

ガラスの破片

画面にはGAMEOVERの血文字

誰もいない観客席の真ん中に座って足を投げ出している

スクリーンで見みながら呟く

「これで終わり?」

男はめんどくさそうに一人ごちる

「ああ、またか」

自分の匂いの染み付いたシャツを鏡の前で肌蹴ている

浮いた肋骨の何本目かの間に小さな痣があった

見ようによっては心の記号にも見える

男は痒そうにガリガリと痣とその周辺をかいた

白い肌に爪の痕が蚯蚓腫れのように赤く引かれる

この呪いを掛けた占い師・・・だったか今はもう顔すら思い出せないが

この痣が浮き上がるとそいつの言葉を思い出す

「あんたの体のどこかにあんたの運命が浮き上がる

 その事を覚えておきなさい」

もちろんそんな世迷い事を真に受けてる暇なんてない

ただこの痣が浮かぶと自分の身に何かが起こる事は確かだった

それはどれもこれもが難癖揃いだった

そして自分の力などでは何も出来ない類のものばかり

突然ストーカーに合うだとか

目の前で電車に飛び込む人が出るだとか

カレンダーを見る

「これが初夢・・・ね」

この夢を夢判断とかする人のとこに持っていったらなんて判定されるんだろうか

こんな夢が正夢になり得る訳がない

ケータイのアラームが鳴る

寝惚けながらアラームを止めてモソモソと布団から出る

寒い

もう一回ぬくもりに潜り込む

2008-01-06

[] 音楽と僕 14:01  音楽と僕 - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  音楽と僕 - pour away

もう10年以上前の曲を今でも聴いてる

あの頃聴いてたアーティストの何かのアルバムに入っていたバラード

流行りの音じゃないし普遍性のあるメロディでもない

歌詞が特別良い訳でもない

思い出なのかなやっぱり

同じようにミドルテンポの何かのC/Wの曲を擦り切れる程聴いてる

テープだったよなとか

今じゃ擦り切れる程なんて表現できないのか

劣化?わからん

年とったよなお互い

今日みたいに少し陽の射す雲の多い日

多分これも思い出の中の今日に似ているのかもしれない

iPodに入れてイヤフォンから染込むように流れ出すintro

ミソスープみたいにさ

2007-10-02

[] 揺れる蛍の幻 - inculturation 15:54  揺れる蛍の幻 - inculturation  - pour away を含むブックマーク はてなブックマーク -  揺れる蛍の幻 - inculturation  - pour away

「ここらならいいだろう」



見晴らしの良い緑の丘の上



私はスカートを落としシャツのボタンを外す

彼の体を愛撫し彼のものを舐め上げる

目を閉じていても少しのズレもなく行える互いの体

息を吸うように彼の上に跨る

やがて彼が達そうとするのが感じ取れる

それに呼応して私の下腹部も白く熱くなっていく

同時に訪れるオーガズム

彼の口に唾液を垂らして舌を差し込む

類稀な饒舌だった彼の舌を噛み切る

租借しながら彼の口に私が持ってきたワインを注ぐ

彼は何かを言おうとしているが金魚のようにしか見えない

ワインと血が入り混じった赤が経血みたいに彼の口から滴っている

生臭い彼の舌を飲み込む

彼が少し微笑んだような気がした

彼の舌が私の食道を胃を愛撫しながら流れ落ちていく

そのぬるぬるとした優しさに身震いする

私は彼の首を力一杯絞める

私の中で彼がまた射精した



「変態」



脈打つ彼のものを感じながら彼が絶えていくのを確認する



彼の死体を隠そうとは思わなかった

彼の望む幸せな最後を誰かにも見てもらいたかった

私が携わった作品

乾き始めた秋の風が彼をいつまでも称えている



「セックスしながら互いに互いの肉を食しあって死のう」

なんて馬鹿で陳腐な台詞

けれどもそれを世界に反映させてしまうのが彼

首を絞めたときに達した彼に愛しさよりも憎しみが沸いたのはなぜだろう

初めての彼への反発

私の中で彼は彼じゃない何かに変わっていった

愛しいもので貫かれている恍惚から気味の悪い異物を挿入されているような感覚へ

そしてその通りになった



私の体は無意識に彼の住んでいた部屋に来ていた

現実離れした出来事への疲れと後悔

最愛の人を失ってしまった私は何もかもが空しく思えてきた

神を食らった聖人が磔られたように彼は自身を磔たのだろうか

自己満足の購い

彼が言っていた言葉を思い出す

「受肉の方法がわかった・・・!」

くだらない妄想

もう居ない愛しの人

私は彼を彼の犯した世界を愛して愛してそして信じた

その時点で私は彼に食われていたのかもしれない

自己を食い尽くして世界を犯した男

その思い出

その残滓

流れる涙

彼が私を抱いたベッドで彼の残した匂いに眠る



三日目の朝に目を覚ました彼女

少しやつれたようにも見えるが以前とは違う精悍な顔

「さあ世界をファックしに行こうか」





食人賞
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