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2008-05-28はっとりさんと僕3

「全部、演技なんだよね」とはっとりさんは言った。

僕がうまく返事をできないでいると「演技なの」と彼女は繰り返して言った。

その日僕らは付き合い始めてから2年になるのを祝って、新丸ビルの5階にある少し高めのフレンチを食べていた。僕は社会人になってから2回目のスーツを着込んでいて(エンジニアという職種は半ズボンで出社しても文句を言われない)、はっとりさんは白を基調としたビジネスカジュアルを着ていた。ミシュランの星が付くようなレストランで、僕らは明らかに浮いていた。

「私が酔っぱらうとすごくかわいい感じになったり、たまにだだをこねたりしたりするのは全部演技なの」と彼女は言った。

なんとなく演技と言う言葉の意味合いが分かって安堵していると、続けて「他にも例えば、わざと転んだりとか」などと言うので、僕は仰天した。

「根岸くんは私が初めてあなたのためにご飯作った時のこと覚えてる?」

「ハンバーグ?」

「そう。あのとき私ってなにしたっけ」

「シナモンを買い忘れて、指を切って、僕に殆ど作らせた」

「あれ、演技」

僕が呆れて、君は深慮遠謀の人だねと言うと、彼女はシンリョエンボって何、と言い、両手でワイングラスを包むように掴んで中身を飲んだ。僕がその所作を凝視していると、手をひらひらと振って、これもシンリョエンボだよ、と呟いた。はっとりさんは面白い。

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