嫉妬する雑種犬 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-11-21

[]ファ文杯関連で思うこと2つ3つ ファ文杯関連で思うこと2つ3つ - 嫉妬する雑種犬 を含むブックマーク はてなブックマーク - ファ文杯関連で思うこと2つ3つ - 嫉妬する雑種犬 ファ文杯関連で思うこと2つ3つ - 嫉妬する雑種犬 のブックマークコメント

何か明日書くとか言ってて全然明日じゃなかった。

しかも連日仕事のし過ぎと飲み過ぎで脳細胞壊れてるから、結局何書きたかったのか忘れた。なのであまり気にしないで下さい。


●なぜ第二回ファ文杯に参加しなかったんですか?

特に理由はありません。


●匿名性について何か?

参加者全員がアノニマスなら天体図も存在しないわけで、そうなると反逆も下克上もあり得ないではないか。小学校の音楽祭のような内輪ものでもないし、八百長の存在するような草競馬でもないのだし。Webという場所自体バーチャルリアリティの体現なのだから(ひとつのリアリティではあるわけだが)、さらに内包された超匿名空間を利用する必要性は別にないのではないか。

いや増田のあのカオス具合は好きなんだけど、個人的には。


文芸に勝ち負けはあるのか?

ないと思う。

大衆受けするもの=勝ち だろうか?はてなで言うとブクマの数が多い=勝ち?結局そういうことになるわな。でもブクマの数が恒久的に価値を持つわけではない。ブログにうpした文章、というのはその時その時のテンポラリーなものだから、それに対する評価もテンポラリーなものであるはずだ。その評価の積み重ねで「読まれるブログ」「読まれないブログ」の差がつくのではないか。俺は統計学なんて興味ないけど、そこら辺を研究したりしたら面白そうだ。ある程度の数のブクマがついたら、雪だるま式に増えていくんだと思う。そうやって「読まれるブログ」と「読まれないブログ」の差がどんどん開いていってしまうのかもしれない。ブログって誰でも書けるというお手軽さの反面、そういう厳しさもあるんだな。

まあ、全然気にしないならそれでいいんだけど。ちなみに俺は(タイトルを見ればわかっていただけるだろうけど)ルサンチマンの塊のようなものだ。でも更新頻度が低いんだから仕方ないと思うところもあるし、ガチでxx-internetさんとかと戦って勝てる自信もない。だいたい戦うって何なんだ?それがピンと来ない。ブクマの数なんかで「オーソリティ」と「アンチオーソリティ」という階級制度ができてしまうのか。「ブクマの数などに私はだまされない!」という有名な警句もあるじゃないか。ファックオーソリティ!


●つまり何

ファ文杯って匿名でやる必要は別にないんじゃない?id晒せばそれが逆にハンディキャップになるし。オーソリティに対抗するアンチオーソリティたちにも自動的に目が行くんじゃないの。投票者にもオーソリティには逆に入れたくないという複雑な意思も働いたりしてカオス度も増すんじゃないか。

だめ?

カオス万歳!


●…

まあ、結局のところこれだけの反響があったということは第二回ファ文杯は成功ということで。

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2007-11-15

[][]8.エピローグ、スティーブ・アーウィンへのオマージュ 8.エピローグ、スティーブ・アーウィンへのオマージュ - 嫉妬する雑種犬 を含むブックマーク はてなブックマーク - 8.エピローグ、スティーブ・アーウィンへのオマージュ - 嫉妬する雑種犬 8.エピローグ、スティーブ・アーウィンへのオマージュ - 嫉妬する雑種犬 のブックマークコメント

私がダイバーとしての初めてのこの魅せられた旅に我を忘れているのとほぼ同じころ、すなわち2006年の9月4日、動物園経営者でもあるオーストラリアのテレビタレント、スティーブ・アーウィン氏が同じようにグレートバリアリーフでのダイビングの途中で亡くなった。死因はアカエイのトゲが胸に刺さったことによる心臓停止だった。

私は死んだのが彼ではなく私だったら良かったのにと思う。それなら誰も悲しまずにすんだ。私は、彼に助けられたワニたちとその親族たちとともに、心からの謝意を述べたい。彼は私に人間も動物なのだということを憶い出させてくれたし、私たちに共通の、自然そのものと触れ合いたいという好奇心のために、その純粋な好奇心のために、どのように自分自身を表現すれば良いかを教えてくれた。彼をごく部分的にしか知らなかったにせよ、他の何万人もの人々と同じく私は彼のささやかな弟子の一人である。

とはいえ私は読者諸氏にダイビングを薦めることはしないでおく。海は魅惑つきせぬ場所ではあるが、深く関わりすぎると、いずれあなたを連れ去るだろうから。

[][]文字を食べるという概念 文字を食べるという概念 - 嫉妬する雑種犬 を含むブックマーク はてなブックマーク - 文字を食べるという概念 - 嫉妬する雑種犬 文字を食べるという概念 - 嫉妬する雑種犬 のブックマークコメント

彼女には名前が無い - 森のキツネは嘘を吐く


を読んだのですが、俺は以前、

俺はところてんを食べるようにつるつるとサルトルを読む。

2006-09-12 - 妄想狂の午後

と書いた。

いや本当にのどごしがところてんだったんだもん>サルトル

しかも読んだのが「嘔吐」だったっていうのもアレだなあ。「文字を食べる」っていう感覚は何だろうな、食人的なんだろうな。著者をファックする感覚に近いものがあるかな。

文字って論理的に理解できるようにあらわされたものと思いがちだが、結局読み手の印象って感覚的なものなのかもしれない。

2007-11-07下がりすぎなのでage

[][]7.(最終章)ディープ・ダウン・ビロウ 7.(最終章)ディープ・ダウン・ビロウ - 嫉妬する雑種犬 を含むブックマーク はてなブックマーク - 7.(最終章)ディープ・ダウン・ビロウ - 嫉妬する雑種犬 7.(最終章)ディープ・ダウン・ビロウ - 嫉妬する雑種犬 のブックマークコメント

 朝起きると、今日でこのダイブクルーズも終わりなのだという切なさが私をとらえた。私はまたここに戻ってくるだろうが、それまでは陸に居なければならない。ボートは、コンクリートの道路を走るバスなんかよりもよっぽど快適に、海の上をすべるように走っている。

 私は魅惑的なスクランブルエッグとソーセージの朝食を片っ端から胃に詰め込んだ。食後にメロン3人前を平らげる。どうやら私は、クルーまでもが船酔いするほどに大揺れしているデッキでポテトチップをバリバリ食っているようなジャンクな日本人、ということになりそうだ。

 S……が、最後のダイビングについて私に説明しにやってきた。

 「これはあなたの希望次第なのですが」

 と彼は言った。「40メートルぐらいのところに、船……というか小さなボートですが……が沈んでいるレックポイントがあるんですが、どうです?行きますか?」

 「行きます。」

 と私は即答した。

 「OKです。」

 と、彼は黄色い歯を見せて笑った。「では器材の準備を始めてください。」

 私は沈船を実際に見たことはないが、その概念は好きだった。海の中で永遠に塩漬けになっているボート。人々は、沈船を引き上げることは無駄なことだという。なぜなら魚たちがそこに棲みついているし、莫大な費用がかかるからだ。沈んだボートは環境の一部になる。そんな概念。「鎮静した破壊」が沈んでいるという概念。

 私はすっかり慣れて目をつぶってでもできるようになった器材の準備をした。S……のあとからエントリーする。その瞬間の落下感に恐怖を感じることもなくなった。私はますます海に慣れ親しむようになった。まるで私の血管には海水が流れているようだ。そのうち皮膚までが緑色の鱗に覆われるかもしれない。私はどれほど鰓呼吸に憧れているだろうか!

 S……と潜降をはじめたとき、信じられないことが起こった。私たちは他のダイバーたちとは逆方向に潜降して行ったのだが、そのとき巨大な影がすぐそばを通り過ぎたのだ。威厳……静寂。私はまたもや息をするのを忘れ、レギュレーターの呼吸音もピタリと止んだ。そのときはそれが何かわからなかったのだが、後で聞いたところによると巨大なイーグル・レイで、この近辺で見られることはまれだという。5年来グレートバリアリーフでガイドをしているS……でさえ、初めて見たと言っていた。

 優に3メートルはあるそのエイは、私たちを見ると少し避けるように方向転換をしてから、ゆっくりと遠ざかって行った。尻尾が短くて、背に斑があったかもしれない。そのゆったりした動き、その存在そのものに……私は全身に鳥肌が立つのを感じた。恐怖が電流のように全身に走り、その存在に追いすがって尻尾につかまり、そのままどこまでも運ばれていきたいという衝動は抑えきれないまでになった。しかし残念なことに……人間の脚力では遠ざかっていくエイに追いつくのは無理だった。

 S……が私のフィンを掴み、注意を促した。呼吸音が戻ってくる。潜降しよう、という合図。

 我に返って、前方のドロップオフが深淵の「はてしなく黒に近いブルー」へと吸い込まれていくのを見やった。私たちは白いガレ場の上を滑っていく。

 ボートは、私の深度計によれば水深38メートルの砂地にさかさになって沈んでいた。近くの浅いサンゴ礁で座礁し、ここまで流されたのかもしれない。わたしたちは完璧な中世浮力を保って、ボートの横で並んでホバリングしていた。

 それはすばらしかった。それは一種の理想だった。自然と人工の融合、廃線になった線路のような。閉鎖された炭鉱のような。なぜそこに安らぎを見出すのか?わからない。なぜ?私はこのボートから、一つの街全体が海中に沈んでいる様を想像できる。茶色いぬめぬめした藻に覆われて、ウツボが崩れたコンクリートの穴から目を光らせ、シュモクザメの大群がそのまわりをまわっている廃墟……。私たちの住んだ家や私たちの歩いたオフィス街は、まるごとそのまま海中に没することになるだろう。私はなぜかそれが正しいことだという確信をどこかで感じている。それはヴィジョンとして多くの人の夢に出てきたものだが、私ももちろんその中の一人だ。

私は海に関する秘められた知識の一部を手にしたというぼんやりした罪悪感を感じた。

ボートはまるで写真のように沈黙していた。そのエンジン部分、心臓が近くに投げ出されていて、それが死の意識を、私に呼び起こす。魚たちは何事もなかったかのように、無表情にボートの死体から出たり入ったりしている。

そんな青ざめた風景の中をしばらく漂ってから、私たちは浅いところへと戻った。事実5分もいなかったに違いない。深いところではエアの消費が早いためだ。しかし、そこに「何かある」限りにおいて、私たちは潜ることをやめないだろう。

まるでフラッシュをたいて暗い青の世界を鮮やかに照らし出すかのように、私は自分自身をとてつもなく明るい光で照らして見ることができた。水中に沈んだ太陽。

魚たちがいる。見事にシンクロした動きを見せる銀色の鱗たち。飛び跳ねる小さな光。ゆっくりと深みを横切っていく大型魚。岩の陰で動かずに夜を待っている軟骨魚類。そして果てしなく遠くまで広がっているサンゴの原野。遥か彼方からザトウクジラが私を呼ぶ声を聞いた気がする。

思うに私は、自分の心について間違った考えを抱いてきたのかもしれない。私は南極の海に住むべきではなかったのだ。私の住処はサンゴ礁だった。私が自分を知っているなんてうそだった。私の心にはまだ誰も潜ったことのないポイントが無数に隠れているし、そこに潜ることで私は自分自身を知り、自分自身を忘れていく。私の心は徐々に海と同化して、最後には消えてしまうだろう。

最後の魅せられた一時間が過ぎ去り、全員が船に戻ると、"誘惑者"は陸へと戻るために再び動き出した。私の心を置き去りにして。

2007-04-11

[][]6.水中の美=醜とクマノミの生態について 6.水中の美=醜とクマノミの生態について - 嫉妬する雑種犬 を含むブックマーク はてなブックマーク - 6.水中の美=醜とクマノミの生態について - 嫉妬する雑種犬 6.水中の美=醜とクマノミの生態について - 嫉妬する雑種犬 のブックマークコメント

 ボートが別のポイントへ移動を終えると、私たちはまた器材をつけて順々に海に飛び込んだ。

イエローフィンバラクーダの群れが見られますよ。」

とS……が言った。

 実を言うと私は、黄色のフィンをつけて潜ればイエローフィンバラクーダの仲間になれると思い込んでいるような馬鹿ダイバーなので、それは聞き捨てならなかった。それから、クマノミもたくさん見られるという。グレートバリアリーフに生息しているクマノミ6種のうちの5種(クラウンレッドアンドブラックピンクバリアリーフスパインチーク)が生息しているらしい。ということはイソギンチャクもたくさんいるわけで、私はそれらに触れないように注意して小さなクマノミを見なければらず、かなり難しい浮力調節になりそうだった。

 風はほとんどなく、波は穏やかで凪いでいる。私たちは、相変わらずわいわいやっている観光客連中の横を音もなく通り抜けて、密かに潜降した。私にはようやく、潜降しながら辺りを見回す余裕が出てきた。50センチほどのハマフエフキが餌をくれないかと私たちにつきまとってくる。しかし私たちの方では、「空揚げにしたらうまそうな魚だ」などと思ってるので、お互いをもの欲しげに見ていることになる。これは奇妙関係だった。

 まず私たちは、水深25メートルのところから聳え立っている巨大なサンゴピラミッドの周囲をぐるぐるとらせんを描いてまわりながら見物する。これは私に、たとえば姫路城のような歴史的建造物を、空中で上に向かってらせん状にまわりながら見物する未来の人々の姿を想像させた。もしくは、水中に沈んだ姫路城を見物するダイバーたち。

若いイエローフィンバラクーダの群れがいる。彼らは潮流に逆らってひとところに留まるように泳ぎながら、みんなしてこちらを見ている。私は、もし自分があの群れの中の一匹だったとしても、何ら不自然なところはない、という感覚に襲われた。こんな浅いところで窒素酔いだろうか。いつか私は、異常に心を打つ光景を目撃してしまったとき、たとえばミンククジラが悠然と私たちのそばを泳ぎ過ぎる様を見たときなど、その背ビレにつかまったままどこかへ行ってしまうかもしれない。そう考えるとなぜか奇妙な安堵感が私の胸を満たした。

 サンゴピラミッドはいたるところぬるぬるした藻に覆われていて、わけのわからないひも状の物体や茶色の海藻を器材に引っ掛けてしまわないよう細心の注意を払いながら、私たちは進んだ。サンゴに穴を開けて棲み、ちょこんと顔だけのぞかせている小さなカエルウオ。そしてクリスマスツリーワームクリスマスツリーワームクリスマスツリーワーム。彼らの鰓冠は美しい青と黄色に彩られているが、その下にある体は想像したくない。ホワイトチップの黒い影が2体、近くを通り過ぎる。巨大で無貌の、高級品のバイカナマコ。つまり……私が言いたいのは、この世界はテレビで紹介されているようにただ美しいだけの世界ではないということだ。ここには触れたら皮膚に水ぶくれのできる刺胞動物や、つつくと紫色の汁を出す軟体動物がいる。砂底は這い回るゴカイだらけで、マンボウの鰓のまわりには無数の寄生虫がくっついている。10歳の少女が必ず欲しがるような美しいタカラガイの貝殻も、水中で生きているときにはナメクジ状の体から出た粘液に何重にも覆われて、サンゴポリプの間で眠っている。

 S……は、クマノミを次々と紹介した。やはり私はイソギンチャクをおそれて浮力調節に手間取ってしまう。クマノミは思っていたよりも小さく、イソギンチャクの奥に潜り込んでしまうので観察するのが難しい。

 あとでS……が教えてくれたことだが、クマノミは最初からイソギンチャクの毒への耐性を持っているわけではないらしい。彼らは幼い頃に意を決してイソギンチャク体当たりをし、痛みを賭けて耐性を得るというのだ。この事実は興味深く思われた。

 そんなことをするのがなぜクマノミだけなのか?他の魚がするようになってもよかったはずではなかったか。彼らはどんな神秘的な遺伝子の声によって、痛みに向かって駆り立てられるのか。一体どこの誰が、そんな代金を自分の家に支払うだろうか。痛みという代金。

 まるで私たちが、外部からの強制力によって労働へと駆り立てられるようである。私が今まで出会ってきた大部分人間は、何の疑問も抱かずに労働を受け入れていた。私たちが働くのも遺伝子の声によってなのだろうか。そうだとしたら、私は人間失格ということになる。なぜなら私がここへ来たのは、労働から逃れるためにほかならないからである。

 私は海が赤や黄色といった明るい色を吸収して青だけになった世界で、ただ一匹イソギンチャクから離れてはるかな深みへと潜っていく小さなクマノミを見た気がした。私は何かあるたび自分を鳥にたとえてきた。どこかのロックバンドの歌詞のように、傷ついた翼でどこまで高く飛べるかが私の人生のすべてだった。しかしいま、私はそれが完全に、決定的に間違っていたことを確信した。……私の人生は魚だったのだ。たったいま、この「いま」から、私の人生はどれだけ深く潜れるかがすべてになった。

 私はかごの鳥などではなかった。かごの鳥は、もしかごのふたが偶然にも開いていたならすぐにも逃げ出すことができる。しかし水槽の魚は。水槽の魚は、もしふたが開いていたとしても、逃げ出せるだろうか?私はそんな絶対的な絶望から、とうてい抜け出すことが不可能な絶望から、どうにか「いま」このサンゴ礁にやってくるだけの冒険をしたのだ。

 私たちがエキジットして、やがてグレートバリアリーフに夜が訪れたが、私はぽつんと一匹、深淵の真闇へと潜降していくクマノミの幻影をまだ見ていた。雲ひとつない空の下でボートゆれる

2007-04-05

[][]もしもラヴクラフトホテルカリフォルニアを自分語に翻訳したら もしもラヴクラフトがホテル・カリフォルニアを自分語に翻訳したら - 嫉妬する雑種犬 を含むブックマーク はてなブックマーク - もしもラヴクラフトがホテル・カリフォルニアを自分語に翻訳したら - 嫉妬する雑種犬 もしもラヴクラフトがホテル・カリフォルニアを自分語に翻訳したら - 嫉妬する雑種犬 のブックマークコメント

夕陽の最後の光も消え去った時刻、私は人気のない寂寞とした街道をあてもなく彷徨っていた。夜のひんやりとした風がまるで不可解な手のように私の髪をかき上げ、湿気を含んだ夏草の臭いが陽炎のように立ち昇って私の鼻をつく。

私はもう何時間も、暗い街道を足元に目を落として黙々と歩いていた。しかし、ふと何かの視線を浴びているように感じて目を上げ、数百フィートほど向こうに明滅するか細い明かりが見えることに気がついた。吸い寄せられるように近づくうち、頭に疲労がのしかかってくるように感じ、突如として視界が靄がかったようにぼやけ、突然の眩暈に襲われるかと思い、夜ごと無法者の行きかううらさびれた街道で意識を失えばどのようなことが起こるかを考えて私は恐怖にかられた。

泊まる場所を探さねばならないと私は思った。

幸いなことに近づくにつれ、先ほど私が見た光は、少なくとも100年以上も前に建てられたと思われる、今や蔦がいたるところに繁茂し白壁を半ば隠すように覆っている古ぶるしい正教派の教会を改築したホテルだということがわかった。往時は美しかったであろう聖母マリアの生涯を描いた一連のステンドグラスは歳月を閲してどす黒くにごっており、ちょうどその上の梁の部分に、いささか場違いな鮮やかさを放つネオンサインが煌々と輝いていた。

ホテルカリフォルニア

私はこみあげてくる不快感に圧倒されつつも、足は戸口に通じる重々しい石段を上っていた。

戸口には、高貴な家柄を思わせる洗練された顔立ちながらもどこか人工的な、仮面のような微笑を浮かべた女性が立っていた。その美しさと肢体の若々しさに相反して、彼女は落ちぶれた貴族を思わせる奇妙に落ち着いた雰囲気をそなえている。

彼女が私のためにドアを開け、私は来客を知らせるベルの乾いた音を聞いた。

彼女は蝋燭に火をつけ、その不気味な影をつくるゆらめく黄色い光で廊下を照らしたが、ランプひとつない真っ暗な廊下を奥まで照らせるはずもない。そしてその暗がりから、何かこの世のものではない、異界的な声を持つものたちの詠唱が湧き上がるかのように感じたのは、私の膨れ上がった想像力のなせる業だったのだろうか。

――われら汝を歓迎するものなり

――選ばれしもの集う甘美なる地にして

――汝眠るものに夢見る場所を与えたり


私は彼女について暗い廊下を進み、やがて無数の蝋燭で明るく照らされた中庭に行き着いた。私は急な明るさに目を細めた。

中庭の中央には1969年という銘の読める苔と地衣類に覆われた背の低い石碑が不可解にも横たわっており、それを中心にして儀式めいた正確さでテーブルが配置されている。テーブルの上には贅沢な飲み食いの饗宴を行ったとおぼしき跡が見受けられ、彼女はそこにいるたくさんの、どれも同じような薄い唇と浅黒い肌をした、どこか魚を思わせる容貌を持つ男たちを“仲間”だと私に紹介した。

男たちの何人かは浮かれて踊っており、その踊りは私がいままでに見たことも聞いたこともない、まこと奇怪でグロテスクな踊りだった。

私は居心地の悪さを感じながら壁際のテーブルに腰かけ、給仕係を呼んだ。

ワインをくれ。」

と私が言うと、他の男たちと同じ魚めいた容貌のこの給仕係は、

1969年以来、スピリッツは置いていないのです。」

と、薄い唇をゆがませてにやりと笑った。

私は再び頭痛と眩暈を感じ、部屋に案内してくれと頼んだ。彼女が私をまたあの暗い廊下へ導き、修道女たちが使っていたであろう質素な部屋に案内した。

私はすぐに硬い簡易ベッドに横になり不安な眠りについたが、何か怖ろしい、原初的恐怖を感じさせるような地獄めいた悪夢にうなされ、真夜中ごろ目を覚ましてしまう。私の目は恐怖によって見開かれ、不快な冷や汗を感じながらも身動きもままならず、その悪夢原因は何なのかと一心に耳を澄ました。するとあの、震えるような異界的な声で唱えられる詠唱が――

――われら汝を歓迎するものなり

――此は選ばれしもの集う甘美なる地

――夢見るもの逃れること能わざる歓喜を見出す地なり

私は飛び起きて彼女の部屋をノックしに行った。

ドアが開き、私は鏡張りの天井と、テーブルの上のシャンパングラスに入った赤い液体を見た。

「私たちは呪われているの。」

彼女が言った。

「中庭にあった墓を見たでしょう。私は……」

私はその先を聞く前に駆け出していた。彼女が何を言わんとしているのかがわかったのだ。私は彼女の部屋の本棚にただひとつ置かれている本が聖書などではないということを見てしまったのだ。ありえない事だが、私はその分厚い歳月を感じさせる禍々しい表紙に「ネクロノミコン」という文字を読んでしまったのだ。

私は暗い廊下へと方向もわからずに逃げ出し、別の部屋の扉を見つけてノックした。とにかく彼女以外の人間に助けを求めたかったのだ。

私のためにドアを開けたのは魚めいた容貌をした男たちの一人で、部屋は狭苦しい調理場だった。彼の背後では男たちが鋭い肉切り包丁で何か大きな肉塊を切り分けているのが見え、ドアを開けた男の白衣にははなはだ当惑させられる大量の血の染みがついていた。そして、調理場全体に漂っているむっとする不快な臭い……。


最後に憶えていることは、出口を目指してあの暗い廊下を、やみくもにひた走っていたことだ。私はとにかく、元の場所、あの平凡なハイウェイに戻りたかった。

するとひとりの夜警が私を呼びとめ、……その夜警も同じ魚めいた容貌をしていたが……こう言った。

「落ち着きな。それが運命なんだよ。チェックアウトはいつでもできる。だが絶対にここから出られないんだ。」

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きのう道端でホテルカリフォルニア弾き語りしてる男を見たので思いついた。ホテルカリフォルニアってはじめからおわりまでクトゥルフ的ではないか!と思って。

ホテルカリフォルニアってクトゥルフ風以外にも解釈は可能なので、これを機会に気が向いたらいろんなヴァージョン書いていこうと思う。

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