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i was ningen sikkaku このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008年02月24日 日曜日

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 僕が知ってる範囲で世界で一番つぶらな瞳をしている生き物は2ついるんだ。

ひとつはヤモリで、もうひとつは高校3年間同じクラスでいつも出席番号が僕のひとつ前だった河田さんだ。

河田さんは小さくて可愛らしい女の子で背の高さは150センチしかない。そのことについて得に気にしている様子はなかった、彼女はありのままの自分でいつもいた。

僕が友達に「河田さんってかわいいよな」と言うと「そうだな、かわいいよなあ」というのと、「え?そうか、そうでもないぞ」と言う反応が大体五分五分ぐらいで返ってきて、要するに河田さんはそういう感じの女の子だった。

僕は彼女の控えめだけど、とても可愛らしい笑顔が大好きで、彼女は大体のときを笑顔で過ごしていて、僕にはそれがなにか春の始まりに咲く小さな花のように見えていた。

僕は彼女いつも同じクラスになりたいなと思っていて、笑えるくらいその望みどおりになっていたのに彼女と話したのは3年間で一度だけ、それは1年生の春だった。それは高校に入って2度目のテストの日で、その日の試験がすべて終わり僕がプリントなんかを片付けているときに彼女はすぐ隣にいた、僕らは出席番号が隣だったから。

「テストどうだった?」僕はなんとなく言った、「難しかったよお」と、彼女はいつもの笑顔で言うのだ。恋に落ちる音がどこかで聞こえた。

ああ、これは僕の中だけで聞こえる音だ、よかった、誰にも聞かれてはいないなあ。

僕らが話したのはさっきも言ったとおり3年間でその一度だけで、僕は彼女の笑顔が好きすぎて眺めるだけで幸せすぎたので、彼女と付き合おうなんて考えもしなかった。仲良くなりたいとは少しは思っていたけど。

そうしてるうちに僕らは高校を卒業し、河田さんは地元の大学に、僕は隣の町の専門学校に進学した。僕たちはそれぞれ違う学校に行ってしまったのでクラスがまた同じになることはないし、出席番号が隣になることもなかった。

だけれども僕は進展のなかった3年間を後悔することはなかった。彼女は花のようだったので、眺めているだけでよかったし、その花の種子は僕の心にすっかり根付いてて、そっくり同じ花を咲かせていた。卒業して彼女と再会することはなかったが、僕は彼女の笑顔を忘れずにいられた。

彼女はつまりそういう女の子で、僕はもし何年後に彼女と偶然再会することができることがあれば彼女に僕の心に咲いた花を返してあげようと思っているんだ。

そういうこと。