さようなら

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2006-02-12

[]第七話

「この哀れなこじきにアクセスを恵んでくだせえ、この哀れなこじきにブクマをめぐんでくだせえ、おお、旦那様、ありがとうございやす、ああ、そこの旦那様、私にブクマを……」

ブログさん!何やってるんだよ」

「……」

「こんな、惨めなことはしないでよ!一緒に帰ろう!さあ、早く」

「似非原、いまさらこんな姿になって何処へ行くっていうんだ?」

ブログさん」

「いいか、俺は一連のエントリで俺の姿を誤魔化していた。俺の姿なんてそんなにカッコイイものじゃなかったんだ。胸を動かされたブックマーカもいただろう。だが俺の実際の格好はどうだ?他者の承認に飢えていたじゃないか!そして自分のイメージを、そして皆に称えてもらいたい、賞賛されたい、偉いといって欲しいという顕示欲に満ち溢れていたじゃないか!」

「……」

「黙って聞け。何度も言ったように、言葉では如何にだって取り繕えるんだ。いかにも反省しましたという素振り、そして恰も正しいという身振りなんていくらだって出来るんだよ。しかしな、その上っ面を一枚はがせば、こんな汚らしい乞食の姿が出て来るんだよ!俺は他人からのアクセスを求めていた!賞賛を求めていた!あれだけアクセスだとかブクマだとかを嘲笑っていた俺がだよ!?逆なんだよ!おれはただ強がっていたんだよ!」

「……」

「似非原、笑うだろ?俺の姿なんてこんなもんだ。前も言ったが、クチではいくらでも奇麗事をいえるんだ。しかし、クチでは奇麗事を言っても、身体は真っ黒なままなんだ。心は真っ黒なままなんだ。そして、タチが悪いことに、この身体の、心の醜さは、俺には誤魔化せないんだよ!誰かの尻馬にのって、誰かを叩いたり、叩かれているのをただ鑑賞して笑っている俺自身の醜さがな!」

「……」

「笑えよ、似非原。お前に偉そうに講釈をたれていた、ブログさんの末期というのをな…ははは」

「……」

「なんで、そんな悲しそうな顔をする」

「……ブログさん、教えてくれたじゃないか。ブログはどんなのも正解は無いんだ、ただ自分のことを大切にすればいいんだって。ブログさんは、そういうことを言うことによって、自分に正直になってたんでしょう?だったら、それでいいじゃないか。アクセス数を求めたり、ブクマを求めたりすることだって恥ずかしくないよ。それを隠すのが恥ずかしいんじゃないか。そして僕もそうだよ。ブログさんもそうでしょう?だったら、それでいいよ。それで恥ずかしくないよ」

「……」

「だからさ、帰ろう?ブログさん」

「しかしな、似非原、俺は前の俺には戻れないし、お前の場所には戻れない。俺は自分自身の醜さとの対決を忘れてしまっていたんだよ。俺が、お前のところに簡単に戻ったら、またお前に色々と講釈をたれるだろう。そして、結果として俺自身の醜さとの対決を忘れてしまうんだ」

「……」

「そして、似非原、忘れないで欲しいことがある。ブログを書いているときは気持ちがいいだろう、そういう対決を忘れることができるだろう。しかしな、それは先延ばしに過ぎないんだ。お前が対決するべきものを忘れてはいけない。そういうのを消し去ることを忘れてはいけない。俺は、そういうブロガーを沢山見てきた。お前もその泥沼に率先して足を入れることをしてはいけない。お前も、お前自身の醜さと対決するべきなんだ。そして、それと対峙することができるなら、きっとお前がブログを書いていたことも無駄ではないんだ。だが、足を引っ張るようだったら、ブログに、俺に頼ることをやめるべきだ」

「……」

「それが俺の、俺なりの、ケジメの付け方だ」

「…じゃあ、じゃあ、僕が自分の醜さを、そしてブログさんが、ブログさんの醜さを克服してくれたら、また戻ってきてくれる?」

「……ああ、戻ってきてやるさ」

「……ありがとう」

「じゃあ、またな」

「……」

「……」

「……」

「……」

「…ブログさん、きっと戻ってきてね!絶対忘れないからね!」

「……」

「……」

「…ったく、絶対って言葉をつけんじゃねえ、絶対忘れるってことは…あいつ、いっちまったか。最後まで世話のかかる奴だぜ、ったくもう」

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ブログさんは私に言いました

「お前、最近面白がられてるからっていい気になんじゃねえぞ」