安寿土牢

2006-11-29

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断片2

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貞吉二十七番の一番古い記憶はこの日のような夕暮れの光景だった。赤い光線に占められていただけで、朝焼けに照らされた光景だったのかもしれないし、単に血がぶちまけられたところにいただけなのかもしれない。あとから、自分は茂吉に襲われた村落のただ一人の生き残りであったことを知り、それはそのときの光景なのだと理解している。

記憶の中で貞吉二十七番はまだ貞吉ではなく、ひたすら泣きじゃくっていた。誰かの手が優しく頭に置かれていたのを覚えている。目を上げると恐ろしげな白い狐の面が居た。恐ろしくてまた目を伏せた。息を殺して居なくなってくれと願った。

「行くあてはあるか、わらし」

声が聞こえた。子供の世界はまだ狭く、家族が殺されたときに縋るものは全て失っていた。首を左右に振った。

「ならば一緒に来るか」

目を上げて狐の面を見る。心なしか狐の目が優しく感じた。あとでそれがまったくの勘違いであったことを悟るが、子供が次の一歩を踏むにはその錯覚で十分であった。

やがて童は戦い方と敵を学び狐の面を付け二十七番の番号を振られることになる。


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