安寿土牢

2006-12-01

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腕の悪い植木職人がいる。

彼は植木を散髪のようなものだと考えている節がある。自由気ままに樹の望むように伸ばしておいて、あるとき唐突に刈り込み始める。不恰好だったり、全体のバランスを損なっている枝葉を容赦なく切り捨てていく。そのくせ気の弱いところがあって枝に小鳥が巣をかけていたりすると、植木の全体像を無視してそこだけぽつんと残したりする。そんなわけで彼の植木職人としての評判は最低である。

植木職人の評判は良くないので庭園の樹を一本しか任せてもらえていない。他の職人による樹はどれも統一性があって優れており、それゆえ彼の樹ひとつで調和を崩している。彼はそれがわかるのだけど、樹の生長をコントロールすることに思い至らないのでやはり腕が悪いままなのだった。

さて、そんな植木職人に刈られる樹のほうはというと、これは当然のことながら全体の見てくれなど気にしておらず、成長の為に一時的に栄養がほしいときは好き勝手に枝葉をつけ、用が足りれば切り捨てられても別に文句は言わない。いわないけれど、生長をコントロールしようとするなら立ち枯れてやるとプレッシャーをかける用意がある。そんな樹にとって彼は実に都合のいい管理者なのであった。

俯瞰視線を持っているくせに長期計画を持たないこの植木職人は、たまに先輩に揶揄されたりするが、上達のコツが、というより何を持って上達とするのかが理解できないので、庭園内にいつまでも不恰好な枝ぶりをさらしているのだった。