安寿土牢

2007-04-07

[][][]「正統派小説好きになりたい」が意味するものの実態 「正統派小説好きになりたい」が意味するものの実態 - 安寿土牢 を含むブックマーク はてなブックマーク - 「正統派小説好きになりたい」が意味するものの実態 - 安寿土牢

「何故だ!」

「坊やだからさ」

「それは私に奢らせてもらおう、いいかね?」

親衛隊の者だな?」

「わかりますか」

「臭いだな。キシリアの手の者か?」

あるガノタの対話

『我輩』

トンネル』などとも呼ばれる。ファック文士が二人以上集まったときに行われる時間つぶしの競技のひとつ。下記の様に行われる。

「『それは薊でなければならなかった』」

山田正紀、神狩り。『ロックンロールアメリカで生まれたけれど、ロックンロールアメリカで憎まれた』」

「あー、古川日出男ロックンロール七部作」

「あたり」

「よし。じゃあ『ねえ、トーマス、もうこんな質問は百万回もされているでしょうけど、本当のところはどんなだったの? スティーブン・アビイの』」

ジョナサン・キャロル死者の書。先週読んだ。『そう、ほんとはかわいい顔しておとなしくしているべきだったのかもしれない。かわいい顔といっても、男の俺じゃ限度があるけれど』」

トンプソンのポップ1280。『地図にも載ってない辺鄙な宙い―」

ダグラス・アダムス銀河ヒッチハイクガイド。なめんな。『そう、君のことなら何でも知っている』」

「神林っぽい。言葉使い師?」

「そう」

「『お話と場所と時――』」

ノーストリリアコードウェイナー・スミス。これはどうだ『むかし、一日中つっ立って髪の毛からムシをふりはらってるやつがいた』」

スキャナーダークリーだな。PKD」

「惜しい。暗闇のスキャナー。浅倉久志じゃなくて山形浩生訳のほう」

「ざけんな」

この競技の大前提としてある程度の読書体験が共有されていなければならない。従って競技が成立する集団は現在では主にミステリホラーSFのコアファンあたりに限られていた。だがこれらのジャンルの出版点数の増加やジャンルの細分化、ファンを拡大強化するはずの大学サークルの(政治的配慮により削除)によって競技人口は減少の一途をたどっていた。

ファック文芸部ではこの競技を通して部員間の読書体験の強制拡張を目指した。その目的自己啓発ではけしてない。お前らは俺の知識基盤を理解しろというエゴ押し付け合いに過ぎない。

正統派小説好きになりたい人の為の50冊 (http://homepage3.nifty.com/u2kobo/collect/50.htm)とは競技『我輩』を自分たちにとって正しい形で復活せしめんとした文壇サイドの陰謀に他ならない。正統派小説好きにあらずんば『我輩』競技者にあらず。彼らは『我輩』の寡占を目指している。「なりたい人」とは、糸井メソッドによりそれが押し付けであることを隠蔽したものであり、「なりたいのは貴方であって、我々がさせたいわけではない」という逃げである。かつて2ちゃんねるSF板においてとある老人が「SFファンを名乗るなら最低1000冊読め」と檄を飛ばして総すかんをくったのを反面教師としたものと推測される。

そのような陰謀をよそにコアなジャンル愛好者にすら行われなくなりつつある『我輩』であったが、技術進歩によって復活の兆しを見せている。

「あなたがじっとしていれば、人はあなたに会いに来るだろう」

「ドアノの言葉だったかしら」

イエス

(略)

「たしかにあれは面白い現象だった。それにしても、これだけの事件を引き起こした最初の動機は何だったの?」

「あなたは世界中で起こる何もかもがインチキに見えてるんでしょうね」

「J.D.サリンジャー

イエス。でもまぁ僕自身電脳化の権化みたいな人間だから少なからず――

(略)

「私は私が見える世界を皆に見せるための機械だ」

「ジガ・ベルトフ。映画監督だったかしら」

イエス。僕は僕だけがたまたま知りえた情報の確認と伝播を自身の使命と錯覚し、奔走した」

「で見事に玉砕。無垢な媒介者は社会システムの醜悪さに落胆し口を噤んだ」

イエス。そして僕は消滅する媒介者となった。あたかも新作を発表しないことでその存在を誇張されてしまう作家のように。つまりそれは消滅することによって社会システムの動態を規定する媒体であり、最終的にはシステムの内側にも外側にもその存在の痕跡を留めない」

「フレデリックジェイムソン

イエス。でもノー。後者大澤真幸言葉では知っていても、実際に目の当たりするまでは信じられなかった。オリジナルの不在がオリジナル無きコピーを作り出してしまうなんてね。あなただったら、あの現象を何て名付けますか?」

「STAND ALONE COMPLEX

イエス。STAND ALONE COMPLEX

http://www.kokaku-s.com/

テクノロジー福音はすぐそこまで



「『わたしが思うにこの世でもっとも慈悲深いことは、人間が脳裡にあるものすべてを関連づけられずにいることだろう』 」

「ああ、その話好きなんですよ」

「そうですか、この話が好きだという貴方は相当恐ろしい経験をしたのですね」

「ええ」