安寿土牢

2008-08-11

[]持衰探偵 持衰探偵 - 安寿土牢 を含むブックマーク はてなブックマーク - 持衰探偵 - 安寿土牢

「すべて私がやりました」犯人はうなだれた。

八木業助は私立探偵である。旧弊と因習に雁字搦めにされた田舎をフィールドとし、そこで起こる複雑怪奇な事件を解決してきた。所謂名探偵であり警察上層部に知己も多いのだが、八木は驕ることなくただその悲しげな目でもって事件を見通してきた。

戦中は旧日本軍の人道に悖る研究に携わっていたという暗い噂もある。向き合うだけで人を悲しい気分にさせる八木業助の有様は、そのような過去に見てきたもの故なのかもしれない。

八木業助は事件にまつわる濃密な人間模様を解きほぐし、真実を白日の下にさらし、殺人の連鎖をとめ、被害者はおろか加害者まで救済する。そしてすべての終りに関係した人々を集め言うのだ。

「すべて私がやりました」と。

第十三代目八木業助の物語はそのような結末を迎えた。八木業助の手に銀色に光る手錠がかけられた。警官に連れられていく八木業助を見送り、真犯人はうなだれて刑事に尋ねた。

「あの方はこれからどうなるのでしょうか」

問いかけられた刑事は真っ赤な目を隠そうともせず答えた。

「それは本官の本分を越えますが、情状が酌量されるだろうと思います」

今現在、六人の八木業助が服役中で、七人は極刑に処された。二代目八木業助は服役後の重犯ということもあり出所することはないだろうといわれる。

第十四代目八木業助は人工羊水の中、目覚めのときを待っている。


http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/20080810

http://throw.g.hatena.ne.jp/keyword/%e6%8e%a2%e5%81%b5%e7%99%be%e5%82%91

完璧な涙 (ハヤカワ文庫JA)

完璧な涙 (ハヤカワ文庫JA)