Hatena::Groupneo

終末思想

 | 

2012-03-05

消えた少女について ー序章(1)

01:53

 登校するのはだいたい朝のホームルームが始まる少し前だということもあって、学校中が騒がしい。『おはよう』と『おはよう』の挨拶が慣例になっていて、一体一度の朝で何回のおはようの応酬をするのか、数えてみたいような気がする。

 自分は決して人付き合いが悪い人間ではないと思っている。むしろどちらかと言えば友達も多い方だと思っているし、範囲は学外にも及ぶ。それはひとえに挨拶ができる人間であるからだと思っているし、そこまで間違った見解ではないと思っている。挨拶は人間の生活の基礎なのではないだろうか。気持ちの良い一日を過ごすには、気持ちの良い時間を過ごすには、朝からの、それからつきあいからのすべての始まりに挨拶がついて回るものなのだと思う。

 そんな挨拶大好き人間の僕でも、朝の喧噪にうんざりすることも少なくない。いや、少なくなくなった、とでも言えばいいのだろうか。

 『依頼』

と表されたA4のメモがきちんと折りたたまれて封筒状になって机の上に置かれている。病的なまでに美しくおられたルーズリーフの紙切れと、女子らしいかわいらしい文字をみるだけで、朝のさわやかな気分はどこかに飛んでいく。七月に入って、梅雨も終わって、テストもそろそろ終わって後は夏休みを待つだけだと思っていたところにこれがくるとはなかなか神様もどうして僕にお休みをくださらない。

 僕は鞄の中の教科書を机に詰めると、椅子を引いて、その手紙らしきものをひらひらとさせた。両手で持ち上げて、折りたたまれたまま夏の日差しに透かせてみたが、開いてみるまで内容はわからないようだった。どんなに可愛い文字で書かれていても、きっと内容は割と面倒なことに決まっている。

 心の中で一つため息をつくと、ホームルームのチャイムが鳴って担任が教室に入ってきた。

 |