鰐と雨量 このページをアンテナに追加

2007-12-07

フリーゲーム最萌トーナメント支援しそこね文

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「……お母さん? 何、してるの?」

 鏡台の前に座った母の背に、少女は戸惑ったような声を上げた。

 腰まで届く蒼い髪と信じがたいほど白い肌、それにふわりとした薄いクリーム色のワンピースが、青空を思わせる。母を見つめるどこか焦点の緩い瞳は、兎のように紅い。

 彼女の言葉に母と呼ばれた女は振り返り、虹の様に華やかに笑った。

「おめかし。今日は私が行くわ。あの人たちにも話は通してある」

 その声も、そして外見も、とても『母』と呼ばれる年には見えないほど若い。

 やはり腰まで届く長い灰色の髪と蒼い瞳、純白のワンピース

 何も知らない人間が見れば、十人が十人とも年の近い姉妹、と考えるだろう。

 もっとも、彼女たちを知らない者など世界に何人いるのか。

 世界を守る人造英雄、"Wars Like Singing"の二体を知らぬ者など。

「……どうして?」

 蒼髪の少女が戸惑ったように眉を寄せ尋ねる。

 『母』は腕を組み、少なくとも態度だけは母親然とした様子で答えた。

「あなた最近いきすぎよ、体が持たないわ」

「そんな……あたしは大丈夫――」

「それに、今日は母の日だもの」

 目を剥いた少女の反論を遮って、『母』は人差し指を立てる。

 指摘という言葉を体現するように、或いは天井の先にある空を示すように。

 彼女の型番、"WLS-01"を表しているのではないだろうが。

「あの子だってカーネーションを用意して待ってくれてるはずよ。だったら、私が行ってあげなきゃ悪いじゃない」

 蒼髪の小女は躊躇いながらも『母』に反論する。

余空ちゃんは……そういうのを気にする子じゃなかったの。だから――」

「母親が子供を迎えに行っちゃいけない?」

「…………」

 今までで一番穏かに発された言葉に、しかし少女は口を封じられた。

 何度か開いた唇からは吐息しか漏れず、腰元で拳を握る。

 その小さな拳も、『母』を睨もうとする瞳も、不安定に震えていた。

 言葉にはできず、しかし絶対に譲りたくない、そんな気持ちが溢れていた。

 彼女の様子をしばらく眺めてから、『母』はくすりと笑った。

「冗談よ、そんな目で見ないで。あの子にはあなたがいないとダメ、なんでしょ。一回話したっきりの母親なんかじゃなくって、ね」

「っ!」

 からかわれていたと気付き、蒼髪の少女は唇を引き結んだ。

 俯いて、目も合わせずに早足で『母』の隣を抜ける。

 『母』は優しげな微笑で彼女を見送る。

「行ってらっしゃい、真祐。暗くなったら帰ってくるのよ」

 蒼髪の少女――真祐は振り返らない。

 しかし、決然と顔を上げ、はっきりと返した。

「……じゃあ、行ってきます、お母さん」

 彼女の視線は、遥か遠い空へ向けられていた。

 『妹』の待つ、遥か遠い空へ向けられていた。


※この文章は犬 丼 帝 国 -circulate blue-様製作のSTG『RADIOZONDE』を下敷きにしているかもしれません。

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