霊長類賛歌 このページをアンテナに追加

2006-11-23

[]キーワードを作ってしまいました。 キーワードを作ってしまいました。 - 霊長類賛歌 を含むブックマーク

ファック文芸部さん!再販してほしい!g:neo再販希望キーワード

何の相談もせずに作ってしまい、すみません。

2006-10-04

[]地底衆 地底衆 - 霊長類賛歌 を含むブックマーク

 地底にいて地底の事情を考えるとやたらに腹立たしくなり、不快になり、それを癒すように思いついて車に乗り、免許がないことを思い出して舌打ちをして車を降りた。ダーメダメダメダメ人間ダーメ人間人間と歌を残したのはキノコを食べて頭がおかしくなりUFOをやめなさいと医者に言われて素直にやめてしまった大槻ケンヂだが、用もなしにただ思い立ったというだけで高円寺から歩いて中野坂上に向かい、野太いちんぽのような自己主張を続ける青梅街道を通って濁り汚れくすんだ日をあびた雑居ビルにみとれている私がふと思い出すのは、その大槻ケンヂの姿だった。地底の光を浴びた雑居ビルからはもう三月の初めから骸蝉が鳴き、雑居ビルというくらいだから住んでいる雑居人も殖民した黒々とした異国の民たちも確かに私が今ここに立って見つめているというのに現実感がなく、なお見つめていると何者かが現れてくる。そのうち私の頭に浮かんだ大槻ケンヂダメにしたUFOに乗った宇宙人がすぐそばにいる気がする。

 UFOに乗った宇宙人映画館の出口で二回すれ違ったことがあるだけの大槻ケンヂの丸く刈上げた坊主頭に乗せられたニット帽を思い描き溜息をついている。ここがエリア51なら立っている宇宙人の肌は灰色で目玉は大きく顔の三分の一を覆うのかもしれないが、私には金星人でもレティクル座星人でもかまわない。白昼に物の影がくっきりと立ち現れ雫のように光がひび割れからひび割れへつたわる雑居ビルを眼にしたまま骸蝉の鳴き声の間に間に、オイオイとヘドバンしている宇宙人が、ここにいて、私をモッシュに巻き込もうとする。ピットを作ろうとする腕が私の顔を叩いて肩を押しやりまた大きく叩く。

 そうやって人は死んだし、人はこうやって生きていると思い、しかし妙にやわな地底だと嫌悪をなだめる事ができぬまま地上に引き返す。

 地底で一年、できるならそれ以上暮らしてこようと思ったのは色々理由があるが、妻子を地上に置き去りにしたま高円寺路上ダンボールにいると、地上が破壊されるのを見たくないから仕方なく地底へ行き、不安でしょうがないから半年で戻ってきた気がするのだった。それで友人の元カノが住んでいた空き家に私一人、月の半分も泊り込んで、ビデオカメラ一台持って、人の家に上がりこみ、何でもいいから話を聞かせてくれと頼み込むのが仕事になった。民俗学神話学も、地底論も言ってみれば私の興味は無学な小説家の早とちりで、何ひとつ満足にわかっていない本としてあるという事だった。つまり私は本の中の登場人物に過ぎないのである。地底に発つ前に一枚、地底から戻ってきてから、帰上したのを聞きましたと文章をそえて一枚、御経のようなカヒミカリィアルバムが島渡隆三君から送られてきて普通プレイヤーで聞いたりmp3に変換してランダムで再生したり自前のCD-Jで適当にミックスしたが、この地底というアルバムもどこからでもどんなふうにでも聴くことができる。

 ビデオカメラという音も映像も記録し再生することのできる文明の利器一つ持って出かけるのはきまって地底に一人住む地底老人だが、私はそこで他の世間では生涯口を閉ざしたまま語らぬだろうと思われるような事実を話してもらう。男親がネズミ人間ハーフだったこともあって米の飯など口に入れようにも入れられず、指でぬぐっても濡れたパンくず一つ出て来ぬ薄いコーンポタージュに青白い顔を反射させては天井をながめて毎日毎日すすり泣き、あげくは十三の歳で色街に売られ、十四の歳で親のわからぬ子を孕み、またその子を食って生き延びた老地底嬢をして語らしめているのである。

 そうして地底人を撮影しながら襲い掛かる宇宙人との攻防に暇を潰されて私の処女作は産声を上げるまもなく私の手によって殺されたのであった。

 自分でケースから引き出しては丁寧に丸めたテープをあらためて見たときには驚愕したものだが、荒野に生きる男の常として昨晩泥酔したまま掌のなかで丸まっていくテープの黒くつやびかりしたさまに勃起した事や空っぽになったビデオテープの殻をハンマーで粉々にした事などが思い出されてくると笑うしかないのだった。ぐちゃぐちゃに絡み合ったテープの残骸をほどきながら、私は声をあげて泣いた。

 三十を過ぎたヒゲで顔の丸い男が野太い声で泣いていれば寄って来るのはハエかアブに違いなく、私はハエともアブともつかぬてらてらと脂で光った謎の蟲に全身たかられたまま泣き続けた。

 地底にいて地底の事ばかり考えていると、耳に飛び込んだアブかハエともつかぬ謎の蟲たちが繰り出す言葉の魔術にも惑わされるようになる、という私の理論を立証するかのように、地底の空洞をいっぱいに埋め尽くしたアブかハエは、いっせいのせとタイミングを合わせて私を崖から突き落とした。

 中野坂上の崖を落ちるとそこは山手通りと青梅街道交差点である。

 頬を刺す朝の山手通りとはよく言ったもので、山手通りには一面に棘が生えており、その棘は朝方になると朝露を光らせながらよく尖る。もちろん朝露に見えるものは前日から山手通りを横断する相撲取りの漏らした小便であって、棘が刺されば相撲取りの漏らした糖分たっぷりの小便が傷口から入り込み化膿し腐りやがて膿の中から大小色とりどりの相撲取りが発生する手順となっている。頬に刺さった山手通りの棘をプチプチと抜きながら、私は相撲取りの発生時期に合わせて市場へ行って、相撲取りといくばくかの金銭を交換しようと心に決めた。

2006-06-12

[]密室に死の痕跡あり。 密室に死の痕跡あり。 - 霊長類賛歌 を含むブックマーク

死体が消えた?それが何の解決になるんだ?!」

「おいおい、大声を出すなよ」

 探偵が手のひらをわたしの口に向けた、手のひらに書かれた円状の短縮言語がわたしに眩暈を起こさせる。

「君の推理から連想しただけだ、それとも君は、ぼくが真剣に推理している横から、適当な思い付きを囀ってみたとでも言うつもりかね?」

 嗜虐的な笑みが探偵の口元を覆った。わたしは戸惑いながら

適当に言ったわけじゃない、ただ……可能性として、そういうプログラムを彼は書いていたわけで、完成していたなら、そういうトリックも成り立つだろうと……」

 探偵は笑った。

「その通り、君の言う通りなら、彼はそのプログラムを完成させ、ここで殺され、そしてワープさせられた……犯人と一緒に……ははっ」

「笑い事じゃない!重大なルール違反だぞ。もし本当にそんなことが行われたなら、とっくにこの部屋は凍結されているはずだ」

「ふむ、確かに。ぼくも探偵の端くれとして常々、瞬間移動、空間転移の方法を探しているんだが、これが難しくてね」

「当たり前だよ……この世界にはルールがある、それが自由に改変可能なら、君たち探偵の出番はない」

 探偵は指先をライターのようにこすり、煙草に火をつけた。もやもやと広がる糸のように煙が煙草から伸びて部屋の隅々へ向かった。密室にある穴は三つ、ドアの鍵穴と天井の換気口、そして……壁の弾痕。

 部屋の中央から弾痕へ向けて、大量の血痕が残されている。それは一人の人間が失血死するのに充分な量で、しかも倒れたあとにも出血は続き、血のしみこんだカーペットは人の形にへこんでいた。

 壁の弾痕は奥に行くにつれ小さくなって、そのまま外へ。

 探偵が、通りの向かいにある壁に開いた小さな穴を見てこの部屋の大家を叩き起こさなければ、こんな事件に巻き込まれることもなかっただろう。わたしは、夜中に散歩する探偵趣味を、うとましく思った。

 探偵は、被害者とおぼしきこの部屋の住人が残したコンソールでネットワークに接続していた。使用状況でも調べているのだろうか?わたしは訊くと、探偵はいつになくさみしそうな顔で答えた。

メインフレームに残されていた日記を読んでいたんだ、謎は解けたよ」

「そんな、日記に全部書いてあったなんてそんな解決があるか!」

「偶然見つけたんだ、物事が全て理路整然と筋道立てて起こる必要はないさ。ねえ君、あの"偉大なる大移送"を覚えているかい?」

「えっ?ああ、歴史の授業で習ったよ、わたしたちの世界ができあがった年のことだね」

「そう。あの年、中国人口は四十億を突破した。国連に見放され、国境を封鎖されたぼくたちの国に残されたのは、ただひとつの方法だった。究極の大移送、中国人全てを、電子世界へとアップロードする」

 わたしは探偵物言いに不穏な空気を感じた。彼はいつでも反社会的だが、今日はいつもより冷笑の度合いが少ない。

「でも先進国じゃ普通に行われていたことだよ」

「もちろん、大富豪病気子供に対しては、普通にね」

「そのときの中国人は、大富豪であり、病気子供だったというわけさ」

「共食いを見かねた国連の援助という説もある。どのみち真相は闇の奥。ともあれ四十億の民はこの世界の住人へと生まれ変わった……本当に?四十億人がたったの一年で移送できるものかな」

「しかし、現にわたしたちはここにいるじゃないか」

「そう、ぼくたちはここにいる、そして消えていない」

 探偵は壁の弾痕へ近づき、床の血痕を手で示した。

「これは貫通力と破壊力の高い銃弾を使ったものだ。おそらく胸から入った弾丸は肋骨を粉砕し、背骨を砕き、内臓を撒き散らしながらこの壁を貫通した……弾はどこに?」

「通りの向かい側だ、君が見つけた」

「そう、ぼくが見つけた。この世界の物質は当局の監視のもと、二つのレイヤーで管理されている、一つは物質レイヤー、もう一つは個体レイヤー。弾丸は砕けて物質レイヤーに還元されたが、弾痕には個体レイヤー存在痕……IDの痕跡が残されている。このIDって奴は個体それぞれに割り振られていて、複製は不可能とされている」

「されている?42の42乗だよ、どうしたって不可能だ」

「もし複製されたら?」

 探偵がわたしを見た、その目はまるでガラス玉のように空虚だ。

「複製は、されない」

「可能性はゼロではない。法では定められているよ、複製物は発見され次第オリジナルと融合させられる」

「なあ、その話と、消えた死体と、何の関係があるんだい?」

「彼が作っていたのは、空間ポイントの検出と特定、そして移動するためのプログラムだと、君は言ったね」

「ああ、それが完成していたなら、瞬間移動も可能だ、だけど」

「だけど?」

「瞬間移動って言っても、別に異次元を通過するわけじゃない。単に移動したい場所へアクセスして自分の複製を生成し、こっちの残った身体を消去するだけのものだ、物質転送装置だよ、システムルールに違反してる、実現不可能だ」

「うん、彼はね、物質転送装置を作ろうとしていたわけではない」

「なんだって?」

「物質を転送するためには、物質の複製が必要だ、そうだね。ならばそのためには、個体IDも複製しないと」

「だからそれが不可能なんだって、個体IDは複製できない」

「なるほど」

 探偵は両手を合わせて顔の前に挙げた。

存在痕だけを残して、死体を消す方法、それは」

「それは?」

「複製物の偽装ID解除、オリジナルとの融合」

「……どういうことだ」

死体がそもそも複製物だったんだよ、彼が作ったのはその偽装を解除するプログラムだ」

「……ちょっと待てよ、偽装?何のことだ?」

「四十億の人民を移送する中途で、たった一人の狂ったエンジニアがあることを企んだ。自分の複製に偽装IDを生成するプログラムを持たせて、二人でこの世界へ移送されたんだ。彼は彼の複製物と物質レイヤーでのかけあわせを行い、産み、増えた……外界時間で一億年、この世界は彼の複製物で満たされたんだ」

「何を言ってるんだ?わたしも君も、ちっとも似ていないじゃないか!」

「だからそれが偽装IDの効力さ、全てのパラメーターは見かけのものでしかない、ぼくたちは狂ったエンジニアクローンなんだ、数百億人が、一人残らず」

 言い終わると同時に、探偵は手のひらから取り出した銃で自分の胸を撃った。弾丸は肋骨を粉砕し、背骨を砕き、背後の壁に開いた弾痕へ吸い込まれるように消えた。

 倒れた探偵は、やがて薄れて消えていった。消える寸前に見えた探偵の顔は、見たこともない人物のものへ変わっていた。それは、わたしの顔によく似ているようにも思えた。

 そこへ大家がやってきた。

「ちょっと、友達だって言うから入れたけどね、何だい今の音は、物騒なことをされちゃ困るんだよ!もうすぐ警察が来るんだからね!」

 ぼくは、両手を顔の前で合わせ、考えた。

「さて」と探偵が言った。

 

(了)

 

-----

ex::アンチノックス