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ファッキンガム殺人事件 RSSフィード

2006-03-12

blogger 狩り(2)

blogger 狩り(2) - ファッキンガム殺人事件 を含むブックマーク はてなブックマーク - blogger 狩り(2) - ファッキンガム殺人事件

食い物と彼氏と自分の体調のことしか書いていないオレンジ色の blog がトノマの PDA に表示されている。

写真とか多いですねえ。いいなあ」
「じゃイワキくんはこれから毎日コメント書き込むってことで」
「わかりました、頑張ります」
「え〜、ホントやめてください」

社交辞令満載のヌルい会話が続く。ニコニコしているが俺の怒りは爆発寸前だ。そこでコメントしてるのがホホエミの彼氏だなんて話はどうだっていいんだよ。違うだろ。そっちじゃない方の blog を出せよ。持ってんだろ? だが言えない。そんな切れ方をする奴が blogger でないはずがないのだ。

だが、ホホエミはまだ若い。身元を隠そうとするなら、どんなに僅かだろうと手がかりを与えてはいけない。表ブログを見せる時点で既に甘いのだ。文体、ネーミング、配色、タグの使い方、巡回先。 blogger のクセは随所に現れる。どんなに隠そうとしたって隠し切れるものじゃない。 blog はそいつのエゴとスーパーエゴが具現化したものだからだ。人は自分をやめることなんてできやしないのだ。

そうして俺が blog の名前を記憶に刻みつつ、 Google と Wayback と mixi を使って関連ページを洗う方法を検討していたところ、いつのまにかホホエミとトノマが言い争いを始めていたようだ。

「どうして怒るのさ。 mixi にも入ってるよね、って言っただけじゃない」
「怒ってないですよぉ。でも言い切られたのがイヤだし、あとその後にも言ったじゃないですか」
「『顔写真とかも載せてるんじゃないの』って?」
「その後ですよぉ」
「『補正しすぎは気をつけた方がいいよ、オフ会で印象悪くなるからね』」

トノマ、あれほど思いついたことを片っ端から口に出すなって言っただろうが。こいつは酒癖がいいように見えるが、顔と口調に出ないだけで実のところ最悪だ。喋る内容がことごとく常識を欠いている。ある意味イワキ以上空気を読んでいない。

「トノマさん、それはトノマさんが悪い」

サトナカがとりなす。

「トノマさんだって人のこと言えないじゃないですか。 blog の背景画像プラモデルにするの、やめた方がいいですよ」
「…え?」

斬った。サトナカがばっさりと斬った。俺もホホエミも、イワキさえも思わず目を逸らす。それは触れちゃいけなかったんじゃないか、サトナカ。何なんだ今日は。みんなどうしてこんなに攻撃的なんだ。

「…みんな知ってたの?」

トノマ。可哀想なトノマ。このご時世に本名で検索されないわけがないんだよ。大学SF 研のサイトからリンクされてたページのキャッシュを漁ったら、あっさり今の blog に辿り着くじゃないか。まあ、俺が最初に見つけて他の 3 人に教えたんだけどな。

飲み会の席に気まずい沈黙が降りる。全員がトノマの動きに注目している。奴は無表情のまま後ろを向き、店員に声をかけた。

「すいません、鳥飼ボトルで。お湯割セットもください」

トノマが焼酎を頼むのは俺が知る限り初めてだ。しかもボトルで。嫌な予感がした。

「…そうか。今日はそういう集まりなのか。じゃあ僕も知ってることを言わなきゃな」

目が据わっていた。

(続く)