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ファッキンガム殺人事件 RSSフィード

2006-03-19

xx-internet2006-03-19

blogger 狩り(3)

blogger 狩り(3) - ファッキンガム殺人事件 を含むブックマーク はてなブックマーク - blogger 狩り(3) - ファッキンガム殺人事件

ルールを最初に破ったのは誰だったろう。これは明らかにルール違反だ。誰にでも隠しておきたい裏の顔がある。俺たちはその裏を、ほんの少しネットに向けて開いただけだったのだ。その顔に正面きって向き合うのは、やはりルール違反なのだ。

「サトナカさんのストラップって、増田ジゴロウだったよね」

杯を傾けながらトノマが呟く。

「違います」
「どこかのアルファブロガー増田ジゴロウストラップ使ってたらしくてね、やたら多いんだ、 blogger には」
「違いますって」

テーブルに白い携帯が置かれる。ストラップは……銀色の立方体が角同士で 6 つばかり繋がったもの。

「トノマさん酔ってるでしょう。言ってることが無茶苦茶ですよ」

ストラップを手にとってまじまじと眺めるトノマにきつい言葉を浴びせるサトナカ。だがトノマは意に介さず話し続ける。

「最初はね、サトナカさんが家から送ってきたメールアドレスだったんだ。一度だけあったでしょ、どうしても緊急で連絡しなきゃいけなかったとき。焦ってたんだね、会社には携帯アドレスも家のアドレスも絶対見せなかったのにね」

ストラップを爪先で弄ぶ。

mixi に知り合いを誘うにはどうするか知ってる? メールアドレスを入力して「この友達を誘う」ってやるでしょ。あれさ、もう mixi に入会してる人を誘うとね、「 mixi にいます」って表示されるんだよ。アカウントへのリンクプロフィール画像つきで」

全員の顔がさっと青ざめた。

「もちろん探された側には一切分からない。その人のページを見に行って足あと残さない限りね。あ、でも僕は見たよ。捨てアカウント使ってるから。全然知らない人が見に来たことあったでしょ? サトナカさん」
「…最低」
「そうそう、これくらい最低限の知識だよね。あとはね、プロフィールに書いてある好きなものから、できるだけ関係ないものを 2 つか 3 つ選んで Google にかけるんだ。なるべくマイナーなもの。好きな小説なんてポイント高いね。みんな本読まないからね」

俺はトノマを最大限評価していたつもりだったが、まだ侮っていたということになる。 5 年の付き合いで性格の悪さは十分承知していたが、まさかこれほどとは。まさか、俺と同じことをしてやがったとは。

「みんな mixi と普通のネットを分けようとするけどさ、中途半端なんだよ。人格ごと変えなきゃ意味ないんだ。まあ、そこまでだったら「ものすごく趣味の似通った他人」って言い訳が通じたかもしれないけどね」

トノマはよほど気に入ったのか、まだ箱のストラップをいじっている。

「ショルダーハックって知ってる? 職場ってさあ、みんな良識的な顔してるから油断するかもしれないけどね、結構パスワードとかって見られてるんだよ。人が後ろに立ってるときに自分のサイト携帯で見るのは止めた方がいいなあ」

喋りながらトノマは PDA に一つのサイトを表示する。全員の注目が画面へ集まる。

白い blog だった。カウンタ数 312594 。一見して同人系と分かるデザイン。きっと PC で見たらカーソルは十字だろう。

「…それがわたしの blog だって証拠はあるんですか。そこ好きだから結構見てますけど、それだけじゃわたしがそこ書いてるって言い切れないじゃないですか」

サトナカは微笑んでいた。痛々しくて見ていられなかった。サトナカ、お前はもうとっくに読者への挑戦状を通り過ぎてるんだよ。トノマの余裕が分からないのか? もう反論すればするほど泥沼にはまっていくのに。

はてなダイアリーってさあ、コメントが書き込まれたらメールで教えてくれる機能があるでしょ。サトナカさんね、あんな書き込みの多い blog でそんな設定にしてちゃさ、そりゃ四六時中メールも来るよ。一度僕言ったよね、『SPAM メールが多いならアドレス変えたら?』って。でも全然メール減ってないよね。あれ、 SPAM じゃないんでしょ」

サトナカの笑顔が引きつった。

「名前は TNM にしとくよ。ミ・ツ・ケ・タ・ゾ…っと」

トノマがコメントを投稿した。何秒かの沈黙のあと、サトナカの携帯が震えた。

(続く)