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ファッキンガム殺人事件 RSSフィード

2009-01-10

降臨賞 on Twitter

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「思いつきを淡々と記録するよ。」

素粒子少女(素案)

空から女の子が降ってきて、たいていは地球をすり抜ける。まれに地下に蓄えられた大量の水の原子と衝突して光る。

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885512

一人の女の子が飛行機から飛び降りる

一人の女の子が飛行機から飛び降りる。父の頭をかぶって。

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天の光はすべて女子

天の光はすべて女子

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885518

素粒子少女(Neutorino Girl)

素粒子生命体の彼女らは宙を飛ぶ。星をすり抜け銀河を渡る。旅は終わらない。

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885513

だが、ごく稀に、彼女たちは炭素系生命と衝突する。確率は天文学的に低いが、ゼロではない。

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885514

少女と"出会った"生命体はほんの僅かに光る。光るが、あまりにもささやかな輝きなので誰一人として気づくことはない。"少年"を含め、誰一人。

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885515

出会いは少年をすこしだけ変える。遺伝情報がわずかに書き換わり、次代に受け継がれる形質はほんのちょっぴりだけ変化する。多くの星ではその現象を進化と呼ぶ。世界のどこかで今日も奇跡は起きる。

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885516

大変や

つまり説明すると、空から女の子がたくさん降ってきて、

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885519

みんな死んでる……。

http://twitter.com/xx-internet/status/1108885520

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2009-01-06

空から降ってきた女の子

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女の子さえ、可愛い女の子さえ空から降ってくれば、この平凡な人生も一変するかもな。そんなふうに考えていた時期がおれにもありました。

どこにでもいる大学生であり一介のオタクであり平凡な日本人であるおれなので、正月といえば初詣であり、就職を控えるわけでもなく、だから、彼氏もいないこれまた平凡な妹を連れて日本人らしく神社へ出かけたわけですよ。

街の中心をやや外れた場所にあるこの神宮は、まあ定番の初詣スポットなわけで、元旦ともなれば人込みでごった返すことかくのごとしだ。妹とおれは人波にまぎれて月並みな文句を言いつつやがて賽銭箱まで流されて、百円を投げて拍手を打ち、さて神様に何を願うか一考したわけだ。

おれに大層な希望はなかった。だから、ほんの出来心だったんだ。「空から女の子が降ってきますように」、なんて。

もちろんおれは本当に空から女の子が降ってくるなんて信じるほど脳に木の芽が萌えたボンクラではない。なんというか、ネタだよネタ。あるだろ誰だってそんなことが。「初詣でなに祈ってんだおれは」みたいな下らない一人遊びをすることが。おれは若くして今の生活に満足しつつある平和ボケ日本の一オタクであり、大それた希望も不満も持ち合わせちゃいない。日々笑って暮らせりゃそれで幸せな小市民だ。それなりのインパクトがなきゃ一生停滞しながら植物のように暮らしたい腰抜けだ。だから「空から女の子が降ってきますように」ってのは、いうなれば「宝くじで三億円当たったら」程度のささやかな与太話だったんだ。

「なにお祈りしたの?」
「秘密だ」
「えろいこと?」
「秘密だつってんだろ」
「えろい」
「殺すぞ」

そんなハートフルでありきたりな会話を妹としばきつつ人込みでごった返す神社を後にさあて飯でも食うべえかと街中へ歩き出すおれたち。この凡庸な日常が続いていくと信じていた、あのころの平和なおれたちの前に。

突然、彼女は降ってきたわけだ。

ビルの屋上から。

ばあん、とパンクのような音がした。周囲の人がいっせいに注目する程度には轟音だったと思う。なにせ 50〜60kg の物体が地上 12 階から落ちてきたわけだからな。

目の前の彼女は、彼女だって分かったのは髪が長くてダッフルコートで女物のブーツを履いていたからなんだが、まあ、明らかに死んでいた。首が曲がってたからな。ありえない方向に。足も曲がってたな。こちらはまかり間違えばあるかな程度に。じわじわ血だまりが地面へ広がりはじめてから、ようやくおれは「へぁーっ」とかいう間抜けな悲鳴を上げた。ウルトラマンかよと今では思う。この自己ツッコミが死ぬほどつまらないことは自覚しているが人にはつまらないギャグを飛ばさざるを得ない事態というものが多かれ少なかれ存在するのだ。それが今のおれには身に染みて分かる。

さあそこからは正月早々上を下への大騒ぎ、平和な日常どこへやら。いつだって出会いの衝撃は人を本気にさせる。妹はわんわん泣くわ野次馬は集まるわ救急車は来るわ子供は吐くわ大人も吐くわ警察は来るわ立ち入り禁止の黄色帯は張られるわ妹はぎゃあぎゃあ泣くわ事情聴取に警察署まで行くわ刑事さんの質問にぼそぼそ答えるわ妹はえぐえぐ泣くわおれがキレて妹を怒鳴るわ妹は声を張り上げて泣くわ婦警さんはなだめるわ雪は降るわ電車は止まるわタクシーの中で妹がまた泣くわ、ひとことで言えば地獄ですよ。それから七日経った今もおれはおれの前に突然降ってきた女の子に心奪われて呼吸すら満足にできやしねえ上に彼女のことが忘れられなくて夜な夜な枕を抱いて嗚咽を漏らす日々ですよ。おれはこの世の理を知った。この世には神も仏もない。絶対にない。もしあるとしたらそれは邪神だ。ありがとう神様、おれの願いを叶えてくれて! おれは生涯をかけて全力で正々堂々神を呪うことをここに誓う。同時におれはおれ自身を呪うこともここに誓う。おれは本当にバカだった。浅はか極まりなかった。ノストラダムスの暦が実は現代のと違ってて真の 1999 年が今年だったりするのなら、いまこの瞬間にこそ世界は滅ぶべきだ。おれも含め。

彼女がそこそこ名の知れた女子大の二年生だったことは翌日 TV で初めて知った。卒業写真のあの人は優しい目をしてた。可愛かった。おれは目をそむけ妹はまた泣き出した。そんなおれたちに母親は言った。

「あんたたちの上に落ちてこなかったのが不幸中の幸いだねえ」

これほど手ひどく女親の愚かさというものを思い知らされたのは小学生のころ押入れに隠しておいた『ふたりエッチ』を目の前に置かれて二時間半説教されたとき以来だった。なぜだかおれは泣き出した。彼女と出遭って以来はじめての涙だった。

おれの行方は誰も知らない。

降臨賞開催のお知らせ

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「空から女の子が降ってくる話を読みたくなったので、降臨賞を開催します。 2009 年にもなって空から女の子が降ってくる話をのうのうと書くつはものどもを募集中です。」

「関係ないけどウルトラジャンプの『アキカン!』は、なんていうか、普通ですね。」

xx-internetxx-internet2009/01/08 00:34今年はもう少し小説を書こうと思い立った矢先からごらんの有様だよ!
【だって、思いついたから】

wonder88wonder882009/01/08 15:43 "振" → "降" 三箇所です。
自分の誤字は放置でも人の誤字は指摘する。
そういう優しさを持っていきたいと思います、今年は。

uraniouranio2009/01/08 15:49つ google[殺害現場]

wonder88wonder882009/01/08 19:35>uranioさん
やっほ^^
殺害現場は知っています。ただそこはもうほとんど死んでいるサイトなので私は書き込みたくないし、ブックマークで誤字を指摘、も私のブックマークの使い方に反するのでしませんし、そもそもコメント欄で指摘してはいけないということもないでしょう。と思ってコメント欄に書き込んでみました。誤字を指摘するのも人様のコメント欄でこんなに書くのも嫌なのだけどなんとなく書き込んでみました。そもそも xx さんが誤字をするのが悪いのでトップページで謝罪しろ!

あと、新年あけましておめでとうございます。

xx-internetxx-internet2009/01/08 21:50> wonder88 さん
ごめんね。「実は飛び降り自殺! 女の子を落としただけ! クーククククカカカカーッ!」って言いたかっただけでごめんね。あけましておめでとうございます。

2008-09-21

今聞き

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「これは盗作とは認められんでしょうな」
「そうなのですか」
「左様。難しいでしょう」

娘さんは無念そうにうつむく。わしは煙草をふかした。彼女はわしの旧知の作家の遺児である。わしと作家は日本 SF 黎明期に揃って馬鹿をやらかした仲であり、彼が鬼籍に入った今も、こうして家族の方々とは縁がある。その筋で相談を受けることもあり、今日も膝をつきあわせているというわけだ。他でもない、彼女の父の著作権に関することである。

「あの作品の出版社からもそう言われました。父の作品とは何の関連もないと。作者は父の本も読んでいないそうです。でも、わたしはどうにも納得が行かなくて」
「仮に読んでいても、そう言わざるを得んでしょうな」

彼女は、ある人気漫画作品が父上の小説に酷似している件で頭を悩ませているのである。近々その漫画が映画化されることもあり、オリジナルが曖昧になることを懸念しているのだ。しかし現実的にその作品を訴えるのは難しいだろう。わしは煙草をもみ消した。

「だが、アイディアが似ているからといって即盗作というものでもない。こうした類似は SF では日常茶飯事なのです。むしろ似たようなアイディアの本歌取りを繰り返すことでジャンルが発展してきた歴史もある」
「しかし、あの作品が収められた本は父の代表作なんです。本当に作者の方はご存じなかったんでしょうか」

こうなってしまっては話が堂々巡りだ。何しろ参考にしたしないは当事者しか預かり知らぬ問題であり、しらを切りとおせばそれまでだが、かといって潔白も証明できるものではない。そもそも彼女は父親の作品に敬意を払ってほしい思いが第一なのである。映画化を控え、何としても盗作のレッテルを貼られるわけにはゆかぬ出版社と話がかみ合うはずはない。

「よろしい。わしが一肌脱ぎましょう。お父さんの作品を、わしが本当に盗作して差し上げよう」
「えっ」

お嬢さんは慌てた。その答えは予想だにしなかったのであろう。当たり前だ。

「あのう、その、先生が盗作するといいますと」
「要は、盗作したともしないともつかぬ曖昧な作品が世にはばかっておるからいかんのです。中途半端に似ているから巷に盗作の噂も流れるし、いつまでも白黒つかずにぐだぐだと騒動になる。いっそ誰かが本当にぱくってしまえばよろしい。そうすればお父上の作品に対する敬意は明らかである。模倣というのはそれ即ちリスペクトなのです。アイディアなり手法なりを真似た時点で、相手が優れていることを公に認めたと言っても過言ではない。わしが公にお父さんの作品をぱく、あいや盗作、もといリスペクトすることで、先人の偉大さは世に知れ渡るでしょう。それに類似作品へのけん制にもなる。うまくすれば、そこから新たなジャンルが生まれるかもしれない。こういったことは堂々と、徹底的にやるべきなのです」
「わたしは創作のことは存じ上げないのですが、そういうものなのでしょうか」

そういうものなのである。

わしは心を込めて旧友の短編を盗作した。旧友の作品は高度に統制された全体主義社会の片隅で国家の手先となる役人の悲哀を描いた清冽な話である。だからわしは真逆の、どろどろとした下世話なドタバタを書くことにした。元の作品では、役人自身が社会から排除される側になったとき、簡単にそれを肯定してしまう。その冷静さこそが逆説的な皮肉の肝なのだが、人間そう簡単に今までの安穏な生活を捨てられるものではない。そこでおうと吼えて醜くあがいてくたばっていくのも面白いのではないか。わしは新たに徴兵された若者が一日だけ何をしても許される街の話を書いた。やけになった主人公が猫を散弾銃で撃ち、コーヒーストアの店員を強姦し、洋服チェーン店に放火し、激安量販店に放火し、人気店で注文したラーメンを匂いを嗅いだだけで床にぶちまけ、家電量販店にダンプカーを突っ込ませるのである。実はその街は電脳上の架空都市であり、狼藉の限りを尽くしてすっきりした若者は冷静な兵士として任務に就いてゆくという落ちにした。作中では固有名詞を多用し、実在の店名をこれでもかと出す。これは固有名詞を嫌った旧友のやり方をそっくり裏返したのだ。わしの短編は初めから醜悪なパロディでありオマージュでありパスティーシュであるし、またその描写が下劣で悲惨で言語道断であればあるほど手本の気高さが引き立つはずなのだ。

『生活以外全部維持省』と題した掌編をインターネットで無料公開してしばらくのち、わしの元に内容証明で抗議文が届いた。誰かと思えば盗作と噂された漫画の出版社である。内容はわしの『生活以外全部維持省』が漫画作品のアイディアと類似しているうんぬん、下品な描写で似たような小説を書くことが映画公開もされテレビドラマ化を控えた作品に対する営業妨害であるかんぬん。どうやら、一日だけ何をしてもよいという設定が盗作と見なされたらしい。わしは憤激のあまり三年ぶりに怒張した。わしの作品は旧友に対する尊敬から生まれた正真正銘の盗作であり、他の作品など知ったことではない。そもそもこの程度のアイディアの類似で著作権侵害と言われることこそ心外である。そも本朝における本歌取りの歴史からも知れるように創作とは模倣と類似の積み重ねであり反復の円環が下克上のモチベーションにほだらか。電話口で口角泡を飛ばして抗議とも講義ともつかぬ弁舌をぶちながら、わしは脳卒中で昏倒した。

入院中に口述した騒動の顛末は、そのとき仕事をしていた文芸誌上で連載となり、後になぜかアニメ化された。「コンテンツ不足なんですよ」編集者はにやにや笑っていた。キャラクターデザインはわしの作品のイラストも手がけた絵師のいとうのいぢ。わしを演ずるのは若本という人気声優であるらしい。

urza358urza3582008/09/29 05:32感動した

xx-internetxx-internet2009/01/08 00:39ここまで imagiki <-> ikigami の指摘なし。

2008-06-21

25人の白雪姫

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女王ほど白雪姫に恋焦がれた者はいない。白雪の純粋無垢な美しさが幼さとは無関係であると女王より理解していた者はいない。彼女生来の輝くような気品こそは余人が七度生まれ変わっても太刀打ちできぬ真の天才であると女王より知っていた者はいない。

だから憎んだのだ。自覚なき才能だからこそ許せなかったのだ。偽らぬ鏡が淡々と事実を告げたとき、その理由を完全に理解できた女王だからこそ、殺意を抑えることは不可能だったのだ。

「女王様、ここでは貴女が一番美しい。けれども、白雪姫は千倍も美しい」
「おのれ白雪。生かしておくものか」

殺害はつつがなく終了した、と狩人は告げた。その夜、女王は安らかに眠り、彼女の安心は辛うじて翌朝までは保たれた。

「女王様、ここでは貴女が一番美しい。けれども、いくつも山越した七人の小人の家にいる少女は、まだ千倍も美しい」

女王の総毛は燃えて逆立った。白雪か。白雪が生きていたのか。下賎な狩人めが、わらわを謀ったか。

「おのれ白雪。七度生き返っても、その息の根止めずにおくものか」

殺害はつつがなく終了した、とジプシー女は告げた。女王は一晩だけ安らかに眠った。

「女王様、ここでは貴女が一番美しい。けれども、いくつも山越した村にいる二人の少女は、まだ千倍も美しい」

増えた!? 白雪が二人だというのか!? 事ここに至って女王はようやく事態の異常性に気づいた。拷問にかけた狩人は、己の罪を遂に認めなかった。ならば確かに殺した二人の白雪に代わって、もう二人の白雪が現れたというのか。女王は戦慄した。山の向こうで一体何が起こっているのか。何らかの魔術の仕業か、それとも高貴な血がもたらす奇跡か。いずれにしろ生かしてなどおけぬ。

「おのれ白雪。神がおまえを守ろうとも、悪魔がおまえを愛そうとも、その身滅ぼさずにおくものか」

こうして村は焼き払われたが、もはや女王に安眠は訪れない。

「女王様、ここでは貴女が一番美しい。けれども、海辺の村の五人の少女は、まだ千倍も美しい」

鏡の言葉に嘘はない。鏡は事実しか語れぬのだ。女王は誰よりもそのことを知っているがゆえに、海辺の村を焼き、街道沿いの町の少女を狩り、城下町の少女たちを殺戮した。火あぶりにした少女たちは、白雪に似ていたようにも、似ていなかったようにも見えた。

「女王様、この部屋の中では貴女が一番美しい。けれども、城の中にいる二十五人の少女は、まだ千倍も美しい」

事ここに至り、ようやく王女は鏡をまじまじと見つめた。鏡よ鏡よ、わらわの鏡よ。おまえは本当に嘘をついていないのか? なぜ白雪姫は殺しても殺しても現れる? 鏡よ鏡よ、答えておくれ。
そうして鏡に手をかけた女王は、遂に気づいてしまった。おのれの顔が別人のように変化していることに。
嫉妬と怨嗟と不眠の日々は、女王の容貌をゆがめ、おとろえさせ、取り返しのつかぬほど変えてしまったのだ。

「おお、おお、なんという醜き顔か……!」

女王は苦悶した。天に憧れ、天に唾し、天を焼かんと試みた者の末路がこれか。わらわはなぜ、己が美しさを顧みなかったのか? 鏡の言葉に嘘はなかった。今では凡百の女官すら、女王の千倍も美しい。

ほどなく女王は熱した鉄靴の刑に処せられた。真っ赤な靴には彼女自ら足を差し込んだ、と史書は語る。どこにもないステップを踏みながら、狂ったように笑い踊るその姿は、地獄の悪鬼にも似た美しさがあったと伝えられる。

二十五人の"白雪"の墓には赤い靴が供えられたという。

2008-06-14

never

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まず死は克服されねばならない。死が不可逆であれば、それはすなわち取り返しのつかないことであり、ネガティブな印象をまぬがれえないからだ。物語は何らかの手段で死を乗り越えることになり、つまるところ必然的に超自然の要素を内包するだろう。

次に、主人公は死を選べる立場でなくてはならない。意志による明示的な選択が重要だ。あらがいえぬ運命に主人公が翻弄される姿、人それを悲劇または喜劇と呼ぶ。きびきびしたデウス・エクス・マキナの仕事は観客の口出しを阻んでしまう。物語は明確な分岐を持たねばならず、主人公は死を選んでもいいし、選ばなくてもいい。

同時に、主人公は死について迷わねばならない。死がたったひとつの冴えたやりかたであってはならない。克服されつつもなおリスクを孕んだ不確定の未来、死はそうしたものでなくてはならない。なおかつそのリスクは、適度に軽微でなくてはならない。死と背反である選択肢のデメリットを、死のリスクが上回ってはいけない。あくまで死は克服されねばならないのだ。

あるところに一人の聖人がおりました。彼の夢は人類を救うことでした。彼は人類に対して「おまえら何にもわかっちゃいねえ!」と思っておりました。せせこましい決まりに囚われ、真実の愛を知らず、唯一の神を信じない盲いた羊たち。おまえらに本物の神を教えてやる。神の愛さえあればいい! ゴートゥ天国! 覚悟は絶望を吹き飛ばす! 改心せよ改心せよ! 彼のディスは人々にチョップをくらったような衝撃を与え、その意志は野を打ちはらう風のようでした。

彼には奇跡の力がありました。彼は力をひけらかすことを好みませんでしたが、好むと好まざるとにかかわらず、奇跡は大衆に受け入れられました。

「うぉー、さすが○○○さんだ、水の上を歩いてるぜー!」
「○○○さんにとっては五つのパンと二匹の魚も五千人分の食糧なんだー!」

彼を信じ彼の神を信じる者たちは門前市をなし、やがて彼は未来について考えるようになりました。自分がいるうちは、人々は神の愛を疑わず、光り輝く道を信じて生きていける。だがそれは自分の死後も続くのだろうか? 自分の教えは風化しないだろうか? 自分は真に人類を救えるだろうか? 未来永劫続く尊敬を得られるのか? 世界人類を救うために、更なる奇跡は必要だろうか?

彼がいまだ試していない奇跡がひとつありました。そう、死からの復活です。それが可能であることを、彼は経験則から知っていました。聡明な彼は、その奇跡が人々に与える影響も十分に理解していました。死から蘇った彼を目の当たりにした人々は、その奇跡をほめ、称え、永遠に彼と彼の神を愛しつづけるでしょう。

しかしながら、死は彼にとっても大博打です。当時はまだ"神はサイコロを振らない"の警句が発明されておりませんでした。「んー、間違ったかな?」ではすみません。「あーっ! と、取り返しのつかないことを!」でもすみません。死は教団の結束を高める一大イベントですが、復活がならなくてはインパクト半減なのです。それでは尊敬が数千年に渡って持続するかわかったものではありません。

彼は悩みます。自分を信じて夢を追いつづけるべきか、はたまた現し世に留まって人々を導きつづけるべきか。 To be or not to be? 次号、蘇るや蘇らざるや。ニー、どしたもんだろ?

「……っていう話を書けば、きれいな[死ねばいいのに]タグの実例になると思ったんだけどどうだろう。敵意もなければ悪意もない、まさに死ねばいいのにとしか言いようのないエントリ」
「それ読んでないけど『ジーザス・クライスト・トリックスター』じゃないんですか」

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