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ファッキンガム殺人事件 RSSフィード

2006-12-24

しず心なく花の散るらむ

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地方競馬の雄として活躍したパインウインド号は、リノイエの救い主と云っても過言ではない。
小さな居酒屋経営が立ち行かず、首でも縊りかねなかったリノイエを助けたのは一枚の馬券である。
下馬評ではさんざんな書かれようだったパインウインド号は、その日に限って猛烈な追い足を発揮した。リノイエは身震いしながら TV に見入っていた。手の中の紙切れは四百万円に化けていた。

以来、リノイエパインウインド号に惚れた。命懸けで追いかけたと云っていい。リノイエが知らないパインウインド号のレースはない。パインウインド号の馬主や訓練師とも交流ができた。パインウインド号の活躍は正しく心の支えだった。
居酒屋の台所事情は日に日に持ち直し、今では支店を出すに至った。馬刺しは遠い昔にメニューから外された。

ある日、 TVパインウインド号のレースを見ていたリノイエは、ふと鈍い音を聴いて後ろを振り返った。
目を戻すとパインウインド号の姿は消えていた。
接触による転倒事故だった。騎手は一命を取りとめた。パインウインド号は前脚を骨折していた。その場で安楽死が決まった。静かな最期だったという。

桜鍋の宴を提案したのは訓練師のマエダである。聞いてリノイエは激怒した。
「この野郎!」
ノイエが渾身の力を籠めてマエダの頬げたを殴った。
マエダは一切逆らわない。躱そうともしなかった。黙って殴られるままにしていた。
ノイエの方が力尽きた。五発目でもう肩で息をしている。
「それだけか」
マエダが促すと、もう一発殴ったが、それが精一杯のところだった。ひっくり返って荒い息をついていた。
「くうか」
「くうとも」

競走馬の肉は美味くない。脂が少なすぎるためだ。食用にするには一定期間放牧して肥らせねばならない。パインウインド号の肉はさぞかし固かったことだろう。
下拵えはリノイエが手づから行った。マエダさえ厨房に立ち入らせなかった。

ノイエ宅の居間で、二人は鍋を囲んだ。
「煮えたよ」
云いながらおたまをとりあげてマエダの碗を満たした。手が震えていた。マエダは見ない顔をし汁がこぼれても拭かなかった。おたまを取り上げ、よそおうとした。
「いや、わしは……」
ノイエが手を上げてとめようとした。マエダが吼えた。
「情けないことをぬかすな」
「そうか。それもそうだな」
ノイエは碗をもち、満たされると一気にかきこんだ。
うまい。やっぱりうまいよ、おい」
「馬だけにな」
マエダは今度は自分で自分の碗を満たした。
部屋の外で馬主が立ちすくむようにして泣いているのを、二人は知らない。

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2006-02-23

虐水

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水は生きている。

この余りにも有名な一行を、全ての妄言の母と呼ばれる中国が内包していないはずがない。中国人が水 = 生命体説に辿り着いた時期は紀元前に遡るという。樂代の詩人・無慶夏が記した物語『夷夢書徳功』に以下の記述がある。(現代語訳・一条刺身)

水というものはデフォルト調子こいてるものだ。料理は傲慢。オレの中華は水の野郎に身の程を教えることから始まる。まずは甕に汲んだ水の中に「私は敗北主義者です」と書いた紙を浸して七日七晩さらしものにする。その間、水の野郎は屈辱に打ち震え、身の中の不純物を汗や涙と共に排出する。そうなってしまえばしめたもの、あとは仕上げに水を徹底的に罵るだけだ。

「この腰抜け野郎! おまえのようなチキンは見たことねえぜ! どんな生き物にも飲まれやがってこの敗北主義者! 二酸化水素! でも…おれはおまえがいないと生きてけねえんだ」

この罵倒と懐柔の二面攻撃を浴びて身をほどかぬ水などいない。まーさーにーツンとデレのエクスタシー料理の消力。こうして水は美味くなる。

"虐水"と呼ばれたこの技法は樂国に広く伝わる料理法であったが、国中の料理人が常時水に罵詈雑言を浴びせてる国がろくすっぽ存続できるわけないよねー、というわけで樂国は滅びた。それはもう完膚なきまでに滅びた。だからこんな下らない知識は忘れてしまって構わない。

qazarqazar2006/03/17 13:24一酸化二水素じゃないかな。いまさらだけど

xx-internetxx-internet2006/03/18 13:30解説を追加しました。自作解説かっこわるい。

qazarqazar2006/03/19 12:33・・・深い

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2006-02-12

片話

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メフィスト賞応募経験を持つ者のみが参加できるファック文芸部に不適格者が紛れ込んでいるとの噂が立ったのは 2 月中旬のことであった。ファック文芸部員による山狩りが 2 度行われたが、成果は猪 2 頭。下手人は人にあらざる妖魔と囁かれ始めた。そして文豪は激怒した。

「とぼけまいぞ。貴様らも資本主義の豚ならん! 口では何とでも申し開きできよう。ファック文芸部員ならば、片話(かたわ)にて身の証を立てい!」

片話とは
はてなキーワードが全く含まれない 1KB 以上の小説を書くこと。筒井康隆残像に口紅を』の変形。短文ならば可能であるが 意味のある記述を恐るべき速度で行った場合 その面倒臭さは真剣勝負以上の

「一言たりとも留もうてはならぬ! 言葉を狩られて片話となれい!」

かくして小説投稿経験のない g:neo:id:xx-internet が苦しむのは全くの自業自得であったが、

「ぬこ」を登録した奴殺す」

悔いる筈がない。ゆとり教徒の胸の内に逆切れが燃えていた。

2006-01-17

雷獣落とし

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怪異と深い仲にある一条抜身博士の仮説によれば、あらゆる怪異は全て狂人の仕業である。江戸中期に世を騒がせた雷獣墜落も当然その例外ではない。

雷獣落としは飛騨忍軍に伝わる成人の儀式である。忍猫と同時に育てられる彼らは、雷獣落としのイニシエーションを通じて人猫共に組織から一人前と認められる。儀式の様子を秘伝書『猫乃地球儀』より引用しよう。

忍びと猫は飛行具により最低三里先から町の上空に現れる。まず忍びは炸裂弾を投下し、人々の注目を引く。その後、おもむろに猫を投げ落とす。高度はそれほどないため、訓練を積んだ猫なら七割六分の確率で生き残る。仮に猫が着地に失敗し命を落とした場合、人も同罪として組織から抹殺される。

(現代語訳・一条刺身)

長く辛い訓練を経て一人前となる喜び、苦節を共にした愛猫を眼下に投げ落とす悲しみ、いずれもが屈強の忍者をして瞳を潤ませずにはおかぬ。雷獣落としは確かに彼らの青春であった。後の世に伝わる歌謡曲『空も飛べるはず』(スピッツ)は飛騨忍軍の血を引くメンバーがこの晴れがましき雷獣落としを歌ったものであるが、平成の世にその事実を知る者はごく僅かである。

君と出会った奇跡が
この胸にあふれてる
きっと今は自由に空も飛べるはず
ごみできらめく世界が
僕たちを拒んでも
ずっとそばで 笑っていてほしい
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